今までなぜか読まなかった近藤史恵さんの代表作。小さな家庭的なフランス料理の店パ・マルに来た客達のちょっとした謎をシェフ三舟が見事に解いていく連作短編集。フランス料理の知識がほとんどない私でもストーリーに出てくる料理が想像できて楽しかったし、美味しそうだった！三舟を始め、スーシェフ志村、ソムリエ金子、そして語り手のギャルソン高築のキャラクターもよく描けている。客達の恋愛や家族関係などの人生模様にほろっとさせられて、ハートウォーミングなオチなのも良い。今では珍しくないスタイルだが、その元祖ともいえる小説だ。

戦後まもないフランスで、5か月後の引退を指折り数えながら診療を続ける老精神科医のもとに希死念慮や自傷衝動に苦しむ新患の女性アガッツがやってくる。彼女の出現、そして長年の秘書マダム・シューリューグの長期欠勤（死の病の夫の看病のため）が彼を変えていく。最初はアガッツがそれほど魅力的な存在には思えなかったが、終盤、彼女の彼に対する鋭い観察眼や彼女の発病の原因の吐露で少し納得がいった。自身、長年の孤独と近年の老いや死に対する不安に苦しむ彼が自己を見つめ直し、周囲に対してポジティブになっていく様子が微笑ましかった。

岩井圭也さん初読。お気に入りさんのレビューに惹かれて。圧倒的な「数覚」に恵まれ、「見えている」天才的な数学者三ツ矢瞭司の短くも鮮烈な人生が描かれていた。高校までの孤独な生活、大学で同じ世界の住人に出会えた喜び、そして考え方の違う教官の出現により再び孤独に…誰が悪かったわけでもないのだろうが、その人生に数学しかなく、人一倍孤独に弱い瞭司がアルコールに頼らざるを得なかった日々に涙を禁じ得ない。しかし彼が遺したノートの周りにかつての仲間達が再び集まり、彼が世界に影響を与えていく明るいラストに救われた。

今までなぜか読まなかった近藤史恵さんの代表作。小さな家庭的なフランス料理の店パ・マルに来た客達のちょっとした謎をシェフ三舟が見事に解いていく連作短編集。フランス料理の知識がほとんどない私でもストーリーに出てくる料理が想像できて楽しかったし、美味しそうだった！三舟を始め、スーシェフ志村、ソムリエ金子、そして語り手のギャルソン高築のキャラクターもよく描けている。客達の恋愛や家族関係などの人生模様にほろっとさせられて、ハートウォーミングなオチなのも良い。今では珍しくないスタイルだが、その元祖ともいえる小説だ。