最初の篇で「心臓」という言葉が出てきた時に、前に読んだ著者の詩集「引き出しに夕方をしまっておいた」を思い出した。詩集でも「心臓」という言葉が何度も出てきて印象に残っていたから。生を語る時に「心臓」という言葉は直接的だが、逃げも誤魔化しもない感じがする。心臓を真っ直ぐに見つめる、生を真っ直ぐに見つめる。そんな所に著者の魅力を感じた。詩集を再読したら本作の収録作と同じ題名の作品があることに気付いた。「青い石」。肝心な箇所が小説と同じで思わず合点。解説によるとこの短篇は長篇版もあるとのこと。いつか読んでみたい。
コマラ、そこは死者たちが囁き合う町。生者のように話し掛けてくる死者の姿は不気味なようで、本作ではどこかユーモラスというか親しみを感じさせるものがあった。生きていた頃の愚痴をつい口にしてしまうかのような。いや生きていた頃はそれを上手く言えなかったのだ。何も背負わなくなった身となり、ただ正直な言葉が出てくる。あの時代はさ、ほんとにとんでもなかったよ、みたいな。著者の出自のメキシコには死者の日なるお祭りがあるだけに、死者は生者にとってより特別な存在で、死に対する考えも独特な感性を持ち合わせているのかもしれない。
「闇の奥」の文学的な影響作品として語られるナイポールの「暗い河」とグルナの「楽園」(先日読んだばかり)の繋がりへの言及も興味深かった。関連作をアフリカ文学の系譜を意識しながら読んでみたい。後書きによると、著者はこれまでの文学理論の研鑽の際に女性や非英語母語話者という立場から起因する安易な否定のされ方を経験し、精読による理論武装に励んだそうだ。ただ、精読するばかりが読書ではないとも語る。自らの経験や感性に基づく読書も批評を持つ読書も合わせて日常の喧噪の中での自由な読書として味わうべきと言われていると感じた。
アイコン付けました(^^)。
一応ブチなパンダです。(2018.11.1)
ミステリや歴史ものが好みです。
最近は初読みの作家さんを増やすことと
読みたいジャンルを開拓することが
楽しみになっています(^^)。
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