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2024年3月の読書メーターまとめ

buchipanda3
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感想・レビュー
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1554ナイス

2024年3月に読んだ本
12

2024年3月のお気に入られ登録
1

  • 碓氷優佳💓

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

buchipanda3
表紙を飾る三人の女性。彼女らは同世代に見えるが実は…。昭和、平成、令和の三つの時代を通して、漱石の稀覯本が栞子、扉子、そして智恵子を繋ぐ。その三人が活躍した鎌倉文庫の謎を巡る物語を楽しめた。少し変わった形の親子競演。やはり親子だと思える場面もあった。特に栞子と智恵子の瞬時の優れた洞察力。ただ、栞子はじっくりと事実を積み上げ謎を解き、智恵子は即座に解決策を纏め上げる。継承する才能は同じでも活かし方が違う。智恵子と登の掛け合いから少し意外な面が見れたのも印象的だった。次はどんな本の魅力が三人から語られるのか。
が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
12

buchipanda3
心臓はずっと動いている。清廉なリズムを刻んで。ただその鼓動は生と死の境目を直に見せるかのようで、どこか心を落ち着かなくさせる。著者が描く物語は自分の身体という存在を鼓動と共に強く意識させるもので、読むうちに人生に伴う苦しさに包まれた。傷を負ったままならない身体(人生)への不安、後悔、自責、そして渇望と絶望。著者の言葉はそれらに繊細にゆっくりと寄り添う。苦痛を誤魔化すのではなく、苦痛を感じたことで自分の生き方に本当に向き合えることを伝えてくる。それこそが回復と再生。尊さと芯の強さを感じさせる想いが胸に響く。
buchipanda3
2024/03/29 20:52

最初の篇で「心臓」という言葉が出てきた時に、前に読んだ著者の詩集「引き出しに夕方をしまっておいた」を思い出した。詩集でも「心臓」という言葉が何度も出てきて印象に残っていたから。生を語る時に「心臓」という言葉は直接的だが、逃げも誤魔化しもない感じがする。心臓を真っ直ぐに見つめる、生を真っ直ぐに見つめる。そんな所に著者の魅力を感じた。詩集を再読したら本作の収録作と同じ題名の作品があることに気付いた。「青い石」。肝心な箇所が小説と同じで思わず合点。解説によるとこの短篇は長篇版もあるとのこと。いつか読んでみたい。

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buchipanda3
混沌と暴虐、そして崇高で悲壮な物語。それは象徴性に満ちた叙事詩のようで、目の前で繰り返される悪逆非道な人間性に茫然となりながらも、それが意味する本質を探し藻掻く心持ちで読み耽った。無垢な眼を持つ少年、著者に名を与えられない彼は"明白な運命"の如く西へ向かう。そこで異形な存在の判事と出会う。ただ生存のために殺める少年。敵を求め死を判定する遊戯を好むのが人間と問う判事。二人は相容れない存在だが、表裏一体にも見え、内在する暴力性の果てに懊悩するかのよう。著者は人間を在るがままに描き、その超越した姿を露わにした。
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buchipanda3
表紙を飾る三人の女性。彼女らは同世代に見えるが実は…。昭和、平成、令和の三つの時代を通して、漱石の稀覯本が栞子、扉子、そして智恵子を繋ぐ。その三人が活躍した鎌倉文庫の謎を巡る物語を楽しめた。少し変わった形の親子競演。やはり親子だと思える場面もあった。特に栞子と智恵子の瞬時の優れた洞察力。ただ、栞子はじっくりと事実を積み上げ謎を解き、智恵子は即座に解決策を纏め上げる。継承する才能は同じでも活かし方が違う。智恵子と登の掛け合いから少し意外な面が見れたのも印象的だった。次はどんな本の魅力が三人から語られるのか。
が「ナイス!」と言っています。
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著者最初の小説。冒頭から挑発的に明け透けな物言いをするところが著者らしいが、それは根底にある悲観主義から来るこじらせっぷりの反動にも見える。ただ、その苦しい思いを曝け出すことは必要なものとも思えた。語り手は徹底した客観的な観察者となり、彼自身、同僚、そして社会を率直に見据える。自由競争(闘争)と合理主義が強く結束した現代は、価値観を単純化して安易な社会階級システムを構築する。それは経済だけでなく性愛にも及ぶと彼は言う。闘争の果てがもたらした人間の姿とその矛盾。自由と成熟の意味を問われているかのようだった。
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「えぇくりぃ、えぇくらぁ」。フランスの海外県マルティニークが舞台の小説。喋り言葉を混ぜた文章で、文字が奏でる地域文化の色を体感するような面白さを堪能した。話の軸はソリボという語り部の謎の死。彼は皆の前で語る途中に倒れ、その意味が探求されていく。展開が破茶滅茶で、哀しき話だがキャラ達(みんなあだ名付き)のはっちゃけ振りが何とも可笑しい。ただその中には現地の欧州的思考の侵食と伝承的な人間味の喪失の関係が垣間見える。語りの文字化は難問。だが彼の口上には生気があり、身振りや口調を伴う口承に人間本来の言霊を感じた。
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一人の男の赤裸々な姿を神の如き目線で追ったドキュメンタリーであるかのようで、息を詰めながら読んだ。その男が野卑で非道な罪に塗れていく人生が描かれる。彼の所業はエグい。しかし感情的なものを排し、目の前の剥き出しな行動(彼の周囲のも)を淡々と写し撮る語りが読み手に冷静な視点を与える。そして時折挿まれる天上の声のようなものと人が入り込んだ自然が見せる無垢な光景が人間の在り様を気付かせる。彼はあなたに似た神の子、人はずっと不変の憐れむべき存在だと。著者は現代的な背景に留まらず、より奥深い目で人間にレンズを向けた。
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「俺はささめきにやられたんだ。そこでは命はささめきのように風になびいている」。簡潔かつ真っ正直に素の姿を描き出す著者の筆致が良いなと。加えて時系列を揃えずに交錯する幾つもの断片的な語りの浮遊感に酔い痴れた。その構成に初めは戸惑ったが、むしろその曖昧さこそが生と死の狭間を彷徨う人生の不確かさや不条理、虚無をこの上なくリアルに描写していると思えた。そんな中、無法と暴虐の男が見せる一途の念に人間なる者の妙味を捉える。読了後、改めて読み返した際、男の幼き原点となる太陽と風と露の光景にはただ哀切のみが広がっていた。
buchipanda3
2024/03/14 20:18

コマラ、そこは死者たちが囁き合う町。生者のように話し掛けてくる死者の姿は不気味なようで、本作ではどこかユーモラスというか親しみを感じさせるものがあった。生きていた頃の愚痴をつい口にしてしまうかのような。いや生きていた頃はそれを上手く言えなかったのだ。何も背負わなくなった身となり、ただ正直な言葉が出てくる。あの時代はさ、ほんとにとんでもなかったよ、みたいな。著者の出自のメキシコには死者の日なるお祭りがあるだけに、死者は生者にとってより特別な存在で、死に対する考えも独特な感性を持ち合わせているのかもしれない。

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エッセイ集。あの震災後、著者は小学生の息子と石垣島へ移住したのだそうだ(現在は島を出ている)。最初は避難のつもり、つまり旅の人の立場だったが、思いのほか馴染んで住むことに。まだ島の人というほど長くはない丁度あいだ位の感覚で日々を綴っている。ホタルを見る時に島の人のあるがままにそっと見せてもらうという言葉が印象的。そこで生活する者の自然への想いを感じた。その言葉の通りに自然と同化する息子の姿への著者の緩やかな眼差し。避難時の彼のノートを経て、島の人となりつつある時に歌われた海の青あおの短歌と写真が心に残る。
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buchipanda3
On Reading、という名の写真集。人が本や紙面を読む姿を撮影した作品。ただそれだけ。でもなぜか惹かれる。読書する者の共感か、没頭する姿が魅力的なのか。みんなで、独りで、猫や牛と、地べたでも高い所でも電車内(京都)でも。様々な構図のモノクロームからそこで読む理由の物語が浮かんでくる。読む姿は文化の違いがあっても世界どこでも同じ。みな思い思いの格好。読む時は格好なんて気にしない。心は文字の世界へ、体は無防備に。スキがある。それが可愛いのかも。最も印象に残ったのはしわくちゃの手で頁を捲ろうとしている写真。
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「おれたちは追いはぎじゃないといったんだ。するとあんたらはなんだね?」。見渡す限りモノクロの荒廃した世界、終末を迎えた父親と息子が生きながらえるべく歩き続ける物語。それはただ人間の根源に立ち還ろうとする神話のような味わい深いものだった。他の生き物がいない、人間のみが存在することの怖さ。生きるためには遺物の保存食を漁るか、それとも。極限の場で露わになる人間の本質。人は生まれながらにして善か悪か。導く父親に対し、気が付けば息子が導く。自然を生きる意味、善き者でいる意味を。魂に宿る火、善の意を絶やさないことを。
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buchipanda3
「私は帝国が安泰なときに自らついた嘘であり、彼は厳しい風が吹くときに語る真実である」。支配と抑圧という人間の暴力性の本質を見極めようとその姿を赤裸々に凝視した物語。語り役である老境の民政官の心情が徐々に大きく揺らいでいく描写が印象的だった。非道な暴力を揮う帝国の官憲と自分は違うと思っていたのが崩れ去った時、彼は人間としての根源を見失う。他者の秘密の肉体の中を開化できると思い込むことの過ち。彼が官憲に叫び問うた言葉は人間を取り戻すためのもの。彼の語りはいずれ発掘されるのか。繰り返される歴史の気付きとして。
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buchipanda3
コンラッドの「闇の奥」を様々な観点で精読することで、読書による解釈・批評の意味、加えて日常の中での読書という行為を考察した文芸論。これは読んでいて興味が尽きなかった。「闇の奥」は寓意的な要素もあり多くの解釈がなされ、また批判の対象ともなった。中でも女性や現地目線による議論が印象的。著者は作者の背景や作品、世の文学理論、アチェベやサイードの言及などを通して客観的な捉え方でそれが示す意味を探求する。そして著者はそれら批評の歴史を含めて古典となると言う。読書は過去の失われた日常に触れ、今の日常に気付きを与える。
buchipanda3
2024/03/02 16:03

「闇の奥」の文学的な影響作品として語られるナイポールの「暗い河」とグルナの「楽園」(先日読んだばかり)の繋がりへの言及も興味深かった。関連作をアフリカ文学の系譜を意識しながら読んでみたい。後書きによると、著者はこれまでの文学理論の研鑽の際に女性や非英語母語話者という立場から起因する安易な否定のされ方を経験し、精読による理論武装に励んだそうだ。ただ、精読するばかりが読書ではないとも語る。自らの経験や感性に基づく読書も批評を持つ読書も合わせて日常の喧噪の中での自由な読書として味わうべきと言われていると感じた。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2013/11/25(3807日経過)
記録初日
2012/08/16(4273日経過)
読んだ本
2237冊(1日平均0.52冊)
読んだページ
621228ページ(1日平均145ページ)
感想・レビュー
2151件(投稿率96.2%)
本棚
62棚
性別
自己紹介

アイコン付けました(^^)。
一応ブチなパンダです。(2018.11.1)

ミステリや歴史ものが好みです。
最近は初読みの作家さんを増やすことと
読みたいジャンルを開拓することが
楽しみになっています(^^)。

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