「そして、どうしてだろう。ぼくは、今の方が、ずっと、せつない気持を胸に抱え込んでいる。それは多分、ぼくがいなければ、きみも生きて行くことが困難になることを知っているからだ。そのことを考えると、ぼくは、どうしようもなくなって来る。ぼくは、きみのために、自分を大切にしなくてはいけない使命を背負ってしまったのだ。きみが、ぼくなしで、途方に暮れるようなことがあってはならない。」ここが好き。
恋を自覚した少年の心理描写が瑞々しい。光をはらみ眩しく色彩を増す世界、恋の相手をめぐる全てが自分の生み出すものと分かちがたく結びつく様、有無を言わさず視線が引き寄せられる生々しさ……彼が知覚したものが感覚としてこちらへ流れ込んでくるような描写だった。 桂視点で描写される「タヒチの女」の説明も圧巻。眼前に浮かぶようとはまさにこのこと。こういう文章を書けるようになりたい。細部まで描写が行き届いており、しかし説明臭さやしつこさはなく……すごい文章だ。
◆「ゆきやのせみ」雪哉が蝉を食べる話。水戸黄門システムで大笑いした。こんなストーリーをたくさん見たかったなあと思う。◆「わらうひと」本書の締めくくりに相応しい一編。「しのぶひと」の終着点。「俺が何をしても、あんたが損なわれることはない。そう悟って、安心した」真赭にとってこれ以上の愛の言葉はあるだろうか。思わず涙ぐんでしまった。
ジャンルは雑多ですが作家読みが多いです。
古典、近代文学も好き。歌集も好き。
好きな作家さんは以下の通りです。書きもらしもあるかも。
▼現代作家
桜庭一樹/長野まゆみ/島本理生/綿矢りさ/森絵都/千早茜/皆川博子/中山可穂/恒川光太郎/津原泰水/壁井ユカコ/三木笙子/阿部智里/梓崎優/近藤史恵/辻村深月/佐々木丸美/北山猛邦/柴村仁/乾石智子/赤江瀑/朝井リョウ/ジュール・ジュペルヴィエル/フランチェスカ・リア・ブロック/アレックス・シアラー(敬称略)
▼研究
近藤富枝/嵐山光三郎/杉浦日向子(敬称略)
▼歌人
穂村弘/笹井宏之/東直子/木下龍也/石井辰彦/栗木京子(敬称略)
▼近代作家
芥川龍之介/有島武郎/泉鏡花/岡本かの子/尾崎翠/川端康成/白洲正子/坂口安吾/太宰治/萩原朔太郎/福永武彦/堀辰雄/武者小路実篤(敬称略)
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