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2023年8月の読書メーターまとめ

rinakko
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感想・レビュー
10
ナイス
100ナイス

2023年8月に読んだ本
17

2023年8月のお気に入り登録
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  • カフカ

2023年8月のお気に入られ登録
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  • カフカ

2023年8月にナイスが最も多かった感想・レビュー

rinakko
10年ぶりの再読(なので、初読時は『たけこのぞう』)。素晴らしかった。語り口の中に時折惚けたような風味のある「盂蘭盆会」と、タイル敷きの贅沢な浴室(なのに浴槽がない)の設定が秀逸な「浴室稀譚」が好き。グロテスクな遊びに嵌ったり、女同士で自転車で海を目指したり、そういう少女返りみたいなのがそこだけ妙にリアルだった。そして忘れがたい「たけこのぞう」は、身勝手で才能ある画家の母親松子とその娘猛子の話だが、所謂母娘の相克…とはならないところがあらためてよかった。
が「ナイス!」と言っています。

2023年8月の感想・レビュー一覧
10

rinakko
大好きなので再読(初読時は女性版)。事典という体裁の奇書。夢に住み夢を駆けめぐり、夢から夢へと渡り歩く〈夢の狩人〉という設定が先ず堪らない。幻夢と奇想が過剰に溢れ、溺れそうな私はそれが快感なのだから世話がない。時空を超えて張り巡らされた物語の糸たちは、綾で緻密な蜘蛛の巣の如き模様を成し…。今回も途中までは赤緑黄を行きつ戻りつ。最後の最後まで謎解きと驚きが待っていて堪能した。“王女は鳥たちに告げた──「行きて汝らの詩を仲間に教えよ、さもなくば早晩、詩はだれからも忘れられよう……」と。”
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rinakko
素晴らしかった。あまりにも文章が麗しく読んでいるだけで恍惚…なのだが、その内容は古事記をなぞる血腥い悲劇だった。稚い少年王の直ぐな願いと言葉たちが、そして大長谷王子の凄絶な孤独との哀しい比が、胸を衝く。目次の中に「異説ハムレツト」の文字を見たときは一瞬なるほど…と思ったけれど、ハムレットと称するには眉輪王の幼気さが際立ち過ぎて。王妃たちの愛と怨嗟の声もただ苦しく、韓媛の存在だけが灯のようだった。“「さよなら、可愛い子、この手で地軸を触つて御覧、この小さい手に、私は地球を載つけて上げよう。」”
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rinakko
散文詩風掌篇(コント)集。訳者の言葉によると、散文詩風幻像綺譚集。初期のエクリチュールでも、思いがけない夢想と幻視に眩暈する読み心地は流石だった。とりわけお気に入りは、レオノーラ・カリントン(「騎兵学校」)やレオノール・フィニ(「裁かれる快楽のパサージュ」、愛猫家のフィニを皮肉ったラストも好き)、ボナ・ティベルテッリ(「モーリアック嬢の入浴」)に捧げられた作品など。
rinakko
2023/08/23 10:54

“そのすべてを回避するのはとても簡単だっただろう。君の猫が暖炉の前でそっと唸りながら、ランプの火で金色に燦めく蝶が飛んでいくのを目の隅でじっとうかがっている。(略)しかし君は、いつも夜に外出し、ドナウ川沿いの大都市の半ば東の郊外をうろつくのが好きだった。” “私はハツカネズミと一緒に入浴している女性を知っている。確かに色の白いネズミたちで、当の女性はオペラ歌手だ。”

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rinakko
ネタバレ再読。素晴らしかった。“狂える者”たちへ注がれたタニス・リーの眼差しは、静かで優しくて胸を衝く。三つの並行世界(パラディ・パラダイス・パラディス)に、狂気の街で狂気を免れ(故に正常ではない)徒に殺人を繰り返す双子の兄妹、いとこに陥れられ監禁状態にある酒飲みで美貌の画家、そして可哀そうなマーマレード色の髪の少女がいた。主人公たちの運命は苛酷だったけれど、各々の魂が行き着いた先に微かな光を思う。(オレンジ、ジン、ペンギン…の不思議な組み合わせも大好き)
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rinakko
〈わが師みな男なりけりあかねさす紫式部に史記習ひたし〉〈葉牡丹にしんじつを問ふ生まれ來て良かりしか汝不機嫌の極み〉〈フェードルゆ源氏物語に通ふ道ほの明かりしてプルーストも見ゆ〉〈白木蓮森閑と咲き戰爭の絕ゆることなき星を抱かずも〉〈立枯れの紫陽花獨り筆折りしうたびとのごとくきよらけきかな〉〈愛されず愛さず生くる天體のきららかさもて海越えむかな〉〈聖母まとふ靑さびしもよ王權にあらがふラピス・ラズリあらむか〉〈妄執を愛とよびたる千年の歷史ほろびむ小面老ゆる〉
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rinakko
少しずつ読んでいた。2020年からの時間をたどり直すようで、この先どうなっていくのか…辛くて不安が募る内容だった(そして不安はこの先も続いていくが)。そんな中、取り上げられた作品は意外と既読のものが多かった(特に新しい作品)。私は再読が好きなので、読み返したい本が増えてしまった。例えば『方形の円 偽説・都市生成論』や『孤児』『洪水』『エルサレム』『暴君』『書物の破壊の世界史』『きらめく共和国』などなど。短篇「焚書類聚」を読んで、どうかこんなことにはならないように…と
rinakko
2023/08/16 15:56

“幻想を創造の資とするものは、現実から目を背けているのか。逆だと思います。現実の苛酷さ、不条理を、熟知するからこそ幻想は飛躍する。”

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rinakko
再読。大好きな〈パラディスの秘録〉、2の『幻獣の書』まで読み返したので、3から再開した。タイトル通りに死をテーマにした短篇集で、とりわけ好きだったのは『美しき淑女』と『世界の内にて失われ』、『硝子の短剣』、『月は仮面』。狂気の先の死へと向かう者たちが、愛おしくなった。“恋人は貴人や資産家や美男子でなくともよいが、透明で情けを知らず、測り得ぬ輝かしい謎、唐突な死の道具、神秘の存在でなくてはならぬというのだろうか。”
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rinakko
素晴らしかった。人がかつて失ったものを再び備えるという奇病、ある者は角を、翼を、鉤爪を、鱗を…突如生やしだす。奇病は種類に富み、それが死因になる者、危険視される者、搾取される者、忌み嫌われる者、自由を得て何処かへ消え去る者…などなど。そんな禍に陥った世界は、さぞや恐ろしくおぞましいものへと変わり果てるだろう…と思いきや、むしろ驚くべきイメージはますます豊かに目眩いていくし、その中にある異形のものたちの姿は美しい(そして少女と異形は似合う)。幾つかの物語の糸が絡み合い結ぼれていく様も、見事だった。
rinakko
2023/08/08 10:22

“彼女は〈彼女〉ではないし、少女は〈少女〉ではない。だからほんとうは、この物語は何の意味もない言葉で、何の意味も持ったことのない言葉で、綴られるべきなのだ。ほんとうは。”

rinakko
2023/08/21 12:54

めも)『夢の棲む街』オマージュ

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rinakko
ネタバレ再読。幾度目かの。この作品における『アンネの日記』の役割が印象深くて、そのことはずっと覚えていた。冒頭で、語り手の数少ない持ち物の中に『アンネの日記』の本そのものが出てくる。思えば『アンネの日記』とは、まず他の誰でもないアンネ・フランク自身の形見であり、だから二重の意味での“形見”を大事にし続けてきた彼は、老婆に(そして博物館に)選ばれるべくして選ばれた人物だった。“博物館は増殖し続ける。拡大することはあっても、縮小することはありえない。まあ、永遠を義務づけられた、気の毒な存在とも言えよう。
が「ナイス!」と言っています。
rinakko
10年ぶりの再読(なので、初読時は『たけこのぞう』)。素晴らしかった。語り口の中に時折惚けたような風味のある「盂蘭盆会」と、タイル敷きの贅沢な浴室(なのに浴槽がない)の設定が秀逸な「浴室稀譚」が好き。グロテスクな遊びに嵌ったり、女同士で自転車で海を目指したり、そういう少女返りみたいなのがそこだけ妙にリアルだった。そして忘れがたい「たけこのぞう」は、身勝手で才能ある画家の母親松子とその娘猛子の話だが、所謂母娘の相克…とはならないところがあらためてよかった。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2008/07/22(5988日経過)
記録初日
2008/02/17(6144日経過)
読んだ本
3468冊(1日平均0.56冊)
読んだページ
1043223ページ(1日平均169ページ)
感想・レビュー
1752件(投稿率50.5%)
本棚
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性別
外部サイト
URL/ブログ
http://blog.goo.ne.jp/rinakko_may
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