第171回・直木賞受賞作。『スモールワールズ』以来の一穂さんですが、新聞でネタを拾っていると仰っているのがよく分かる社会派の作品です。6編の短編中、前半3編は後味悪く、後半3編は少し人の情けも絡めた作品です。読みながら『自粛、自粛』で繭の中にいたようなあの頃のことを思い出し、コロナと共存している今の生活をも考えました。それにしても、お仕事の傍に書いてこられたというのが大変驚きです。素晴らしいですね。

第171回・直木賞受賞作。『スモールワールズ』以来の一穂さんですが、新聞でネタを拾っていると仰っているのがよく分かる社会派の作品です。6編の短編中、前半3編は後味悪く、後半3編は少し人の情けも絡めた作品です。読みながら『自粛、自粛』で繭の中にいたようなあの頃のことを思い出し、コロナと共存している今の生活をも考えました。それにしても、お仕事の傍に書いてこられたというのが大変驚きです。素晴らしいですね。

とても面白かったです。読みながら、クスクスとたくさん笑い、一気読みでした。難しいと思っていた東洋哲学も、しんめいPさんにかかると軽くて分かりやすくて興味をそそられます。さすが東大のご出身！面白おかしく書いていらっしゃいますが、頭脳明晰さと執筆に3年半もかけたというのがよくわかります。『雨も雲も川も山も自分』『言葉は幻』『人間関係はフィクション』等々。なかなかに深淵でした。

桐野夏生さんが書くディストピア小説なので、恐怖という言葉では足りないくらいの小説でした。ナチの収容所のような施設で人間を精神的にも身体的にも蹂躙していく様子は、本当に息苦しく辛い。けれど、迫力があり最後まで読者を一気読みさせるのが流石です。桐野夏生さんの思想がよく伝わる作品だと思いました。

NHKのドラマを見て手に取ったのですが、原作はとても良い作品でした。テンポの良い伝法口調がリズムを作り、安藤重右衛門（歌川広重）の江戸っ子らしさが際立ちます。江戸を愛し、江戸を描き、ベロ藍に魅せられた絵師・歌川広重。ラストの旅立ちも広重らしくカラッとしています。広重が描いた東海道五十三次も江戸百景もじっくり見てみたくなりました。

先日読んだ『枕草子』がとても面白かったので、『紫式部日記』にも手を出しました。NHKの大河ドラマも見ていますが、紫式部という人は生真面目で気が強く、正しさを武器にバサッバサッと切り込んでいくタイプなのだなぁと思いました。また、解説にあった『紫式部は憂さを抱えつつ、やがてそれを受け入れ、憂さと共に生きる境地に達したのである』との一文には深く首肯しました。源氏物語はとても華やかで雅な世界ですが、根底に流れる『憂さ』は紫式部の心情を表していたのですね。

今回の感想は、今村さんへの期待値が高いが故の辛口です。どうぞ、ご容赦を。元寇もの、知らなかった河野家のお話なので、期待値が高かったためか半ばからずっと『星3だなぁ』と思いつつ読了しました。異国から来た玲奈と繁との友情とグローバリズムをテーマにしているのか元寇に挑む河野通有のリーダーシップと志をテーマにしているのかが分かり辛かったからかもしれません。そして、『ここで読者を泣かせてやろう』『ここで胸を熱くしてやろう』という意図が透けて見えて、スッと一歩引いて読んでしまいました。次作に期待です。