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2024年10月の読書メーターまとめ

syaori
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8
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感想・レビュー
8
ナイス
1520ナイス

2024年10月に読んだ本
8

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

syaori
物語は30年前の誘拐事件を巡って進みます。身代金は警察に届けられ、誘拐された4歳の男児は「きちんと躾られ」て3年後に戻ってきた「中途半端な」事件。時効後も事件を追った刑事や記者たちの現場へ行き、人に会いという地道で面倒な捜査や取材、男児の現在から炙り出されるのはネットなどで報道を消費するだけでは見えてこない部分で、本書では「わざわざ行ったり触ったり」しなければ得られないその「実在」の重みを、同時になぜ描くのか、書くのか、どう生きるのかといった根源的な問いを浮かび上がらせていてその面にはとても共感しました。
syaori
2024/10/01 17:07

お借りした本、ありがとうございます。しかし、祖父母の身になると、突然匿名で誘拐されて行方不明の孫の様子を知らせる手紙をもらっても、どこまで信じていいのか、遠回しの脅迫なのかとか思ってしまうのではないかと思い、個人的には結構アウト気味。あと「被害者も加害者も皆人間です」「人には事情がある」とか言われると、「(スターリンや、ベリヤ、マレンコフの子どもたちの回想録では)それぞれ父親を優しい父親、おもいやりのある指導者として描いた。」「ハンナ・アレントが正しく指摘したように、こうした人物は、崇高で→

syaori
2024/10/01 17:07

→バイロン的な悪魔的悪の擬人化ではない。彼らの個人的経験と彼らの行為のもつ恐ろしさとのあいだのギャップは、途方もなく大きい。」「われわれの内面生活からくる経験、自分のしていることを説明するためにわれわれが自分に向って語る自分自身の物語は、基本的には嘘である。真実は外側に、われわれのなすことのなかにあるのだ。」というジジェク(『暴力 6つの斜めからの省察』)の言葉を思い出してしまって最後まで座りの悪い椅子に座っているような気分で読んでしまい、もうちょっと違う切り口もあったのではないかと思わないでもない……。

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2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

syaori

ベンヤミン、バラード、リョサ、そしてタコの本が面白かったです。先日北海道に行った親戚が水ダコをくれてそれを食べながらこの本の話を妹にしていたら、彼女に「姉は本当にそういうところあるよね」と言われました。うん、そうなのよ……。今月もよろしくお願いします。2024年9月の読書メーター 読んだ本の数:8冊 読んだページ数:2703ページ ナイス数:1346ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/596110/summary/monthly/2024/9

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2024年10月の感想・レビュー一覧
8

syaori
ムイシュキン公爵、孤児で養父の囲い者にならざるを得なかったナスターシア、彼女に恋するラゴージンの3人を中心に物語が進みます。自分を「清い人間」と認めた公爵に惹かれつつも彼を自身のような「廃れ者」にしないため身を引くナスターシアや、病的な情欲と「なにかしらを信じ」たい思いの間で格闘するラゴージン、自身の中のデモン「陋劣な予感」に苦しむ公爵という恋模様の脇を、エパンチン家やそこに出入りするイヴォルギン家の人々など自尊心や虚栄心に満ちた「こっけいなほどお人よし」な人々が固め、恋愛劇も家庭劇も錯綜したまま下巻へ!
こぞのしおり(去年枝折)
2024/11/20 18:46

何年もかかって『カラマーゾフ』、『罪と罰』、『悪霊』と読んできましたが、毎回へとへとになってしまうので一つ読むと次まで間をかなりあけてしまいます。この『白痴』もずっと気になっていて「そろそろ読まなあかんな~」と思いつつ手が出せません。shayoriさんのレビューでまた興味が湧いてきましたが、こちらもやはり…なかなか手強そうですね。

syaori
2024/11/21 16:44

こぞのしおりさん、こんにちは。ドストエフスキーはあのテンションで引っ張りまわされると確かに疲れますし、手ごわいのは手ごわいのですが、なんだかんだいって(理解度はともかく)読んでいて楽しいのでぜひぜひ。本当に初回はドストの社交界が私が思っていた(プルースト的な)社交界じゃないと思って見込み違いを痛感しましたが(笑)、今回は大変楽しく読めました。

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syaori
バラードの半自伝的小説。語られるのは上海租界に暮らす裕福な英国人少年の目から見た太平洋戦争で、真珠湾攻撃に伴う日本軍の共同租界制圧で西洋人を頂点とする階層の崩壊を体験し、その中で父母とはぐれて「戦争の前に知っていた安全な世界」と決別した彼の壮絶な戦争・収容所体験が冷めた筆致で描かれます。最後彼は裕福な少年に戻るのですが、最後の一文から、彼が体験した生や戦争後の「不確実な世界」への不安や混乱、対する戦争の「安定と安全」への憧憬がおぞましくも慕わしいものとして彼(作者)に残り続けたのだろうなと感じました。
mitu
2024/10/27 08:41

⇔ロンドンで暮らし、両親は再度中国(多分上海へ戻っています)。軍事学校とか医学部で学んでも、あの上海の人体(遺体)は深く心に残ったようで、それ以後の小説に痕跡を残したようですが、私は伊藤計劃的な世界も読もうとしたまま、それきりでバラードのその後の作品も読んでいません。「上海租界」はとても刺激が強かったです。お子さんにも恵まれた幸せな結婚だったらしいので一安心した次第です。

syaori
2024/10/27 21:34

mituさん、今晩は。両親と別れ別れになりはしなかったというのはこの本の後書きにも書いてありました。本書には、狭い部屋や川など短編集や先日読んだ『結晶世界』で見たモチーフが様々にちりばめられていたので、上海の体験は本当に深く心に残ったのだろうなととても思いました。でもその後の人生が幸せならよかったです。情報ありがとうございます。

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syaori
スイス人写真家による写真、パレスチナ人であるサイードの記憶、パレスチナの歴史と現状から編まれた本。語られるのは、世界に分散したパレスチナ人の常に「部外者」である在り方、国を中心を持たない流動性と不安定性。また「今日の世界システム」の中では「私たち」は必ず「テロリスト」であるということ。そう語りながらサイードは今日の世界システム「合衆国/イスラエルの権力という果てしなく破綻のない物語」を揺さぶってゆくのですが、原著出版から約40年を経た今日の状況を鑑みるに、その道の遠さに気の遠くなるような思いがしました。
syaori
2024/10/22 17:12

「とどの詰まり、私の場合から単純に判断するならば、私たちにできるのは、他の民族のパターンに抗して私たち自身を読み取ることくらいのことなのだが、そのパターンが私たち自身のものではない以上(たとえ私たちがその御指名にあずかった敵であるにせよ)、私たちはその結果・正誤表・反物語として姿を現わすのである。私たちが自分自身を物語ろうと努める際には必ず、私たちは、彼らの言説の中の場違いな断層として登場するわけだ」「彼らが話しているのは、結局、権力の言語であり、彼らの声明が、とりわけ合衆国において、つまりイスラエルが→

syaori
2024/10/22 17:12

→他のいかなる国に対するよりも依存の度合いを深めている国において大量に流されるにつれて、あなたが認識する(略)のは、権力のある感覚(意味)が孕む並外れた危険性である」/「イスラエル人だけが悪いのではない。私たちは皆、罪を負っているのである。私自身にしてもそうだ。パレスチナ人の運命など忘れてしまおうと30年間も努めつづけていながら、その口実といえば、パレスチナの最も極端な急進派が行なう暴挙の数々は決して正当化され得るものではない、という程度のいい加減なものだったからである」(ジャン・モア=スイス人写真家)

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syaori
「暴力批判論」を。暴力は「法関係を確定したり修正したり」できると作者は言う。戦争の講和「新たな関係が新たな「法」」の承認であるように。作者はこれをギリシア神話の神々の暴力になぞらえて「神話的暴力」と呼びます。それはつまり権力者の「特権」で、それを滅ぼす生活者のための純粋暴力として「神的暴力」が定義されます。本小論はドイツ革命の記憶も新しい頃に発表されたものですが、「依拠しあっている法と暴力を」「廃止するときにこそ、新しい歴史的時代が創出される」という言葉に、ヴァイマル体制への作者の期待が見えるようでした。
syaori
2024/10/17 16:37

「法の措定は権力の措定であり、そのかぎりで、暴力の直接的宣言の一幕にほかならない。正義が、あらゆる神的な目的設定の原理であり、権力が、あらゆる神話的な法措定の原理である」/ヴァイマル体制はご存じのとおりナチスの台頭で終わるわけなのですが。ちなみに入らなかったので省きましたが、(神話的)暴力の機能として、法の措定だけでなく法の維持も挙げられています。刑罰とかそういうものとして。とりあえず「ベルリンの幼年時代」はちゃんと読もうと思いました。

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syaori
婚活で出会った婚約者が行方不明になったことから物語が展開します。彼女を探して実家や同僚を訪ねる彼に突きつけられるのは、彼女や自身の自意識や傲慢さ。「無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は、”ピンとこない”」。彼は彼女を追いながら、彼女を自分を「いいと言ってくれる人」を蔑ろにした傲慢さや自尊心、自己愛と向き合うことになります。最後は、「只中で苦しい」本人たちの視点に、彼らと関係の薄い人の視点「大恋愛なんだな」を入れることで爽やかに結末にもっていっていて、作者の手際を感じました。
syaori
2024/10/11 16:32

「渦中さいる本人だちは大変なんだろうげっと、わたしがら見っと素晴らしいとしか思わね。大恋愛な」/お借りした本。ありがとうございます。カバーがかかっていたので知らなかったのですがこんな表紙だったのか……。どうでもいいのですが、架くんは真実ちゃんの立場や過去を見て彼女を選ぶわけですが、真実ちゃんの方は結局自分を反省はしても、結局架くんの新車の外車に乗ってるところとかおしゃな店に連れて行ってくれるところとかで選んだということくらいしか分からなかったので、結局金と顔なのか、という突っ込みは入れたくなりました。

が「ナイス!」と言っています。
syaori
短編集。母親や親友との死別、夫との離婚など様々な喪失を抱える人たちの物語が並びます。彼らの物語では、生きることは「耐えがたいこと」ばかりで、また人は「ほんとうはわかりあえない」し、そうして積み上げたものは死別や離別で崩れてしまう儚いものだということが示されます。しかし同時に、そのやりきれないもののなかに「美しくて軽いもの」があることも示され、最後にはその「羽みたいな」ものの優しい美しさが残るようになっていて、「重い」「きたない」世界からそれを汲み上げてみせるところに作者の本領あるのではないかと感じました。
syaori
2024/10/08 17:22

「どんなに他人と親しくなり、その人のことをわかったつもりになっても、結局その他人とは自分の中に生きているその人にすぎない。その人本人ではない。だから想像したそんな死の瞬間、落ちていく最後に想い描いたふたりの顔が、ほんとうに悲しんでいて心配している目が一瞬のうちに浮かんできたなら、私の案かの愛情こそがちゃんと機能していることになる。彼らではないのだ、実際は。この世はそんな幻影でできているのだ。幻影と幻影のあいだに、ほのかに温かい空間があって、人と人はそこでしか出会えないのだ。」

syaori
2024/10/08 17:22

「そして、本気で自分の死を、この風の中で、美しい景色の中で、こんもりした緑にダイブして人生の最後の瞬間を見るときを観想したときに、一瞬だけ見える彼らの顔の心配な表情が本物であれば、それがどんな占いよりも自分を確かに支えるということ。」/お借りした本。吉本ばなな経験値が上がりつつあります。ありがたい……!

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syaori
まず語られるのは、18~19世紀に欧米で成立した人種概念は差異化と序列化を伴う恣意的なものだということ。日本では白人を頂点とするそれを受容するに当たり「民族」概念を導入し、「大和民族」を頂点とした黄色人種内の序列化を目指す方向に進んだこと、それは戦後も「『甘え』の構造」などに見られるように日本人を独自な文化集団として脱政治化することで維持されたことなどが、欧米の人種主義の変遷等と重ねて示されます。様々な研究や事例から、日本のレイシズムの存在や自身の無自覚なマジョリティ性を意識でき、学ぶことの多い本でした。
syaori
2024/10/04 16:56

人種主義は最初の生物的・科学的な分類を基にしたもの(頭蓋の容量等)を第二次大戦後にユネスコがそれを否定したことから、言語、宗教、習慣によってあるグループを差異化・序列化する文化的人種主義や、アメリカの公民権運動を背景にした、「人種平等とはこれから実現する「人種は平等であるべき」という理念であるのに、人種主義に基づいて歴史的に作られてきた社会的制度や構造を根本的に変革せずに「人種は平等である」という現実と見なす」人種なき人種主義が登場したこと、この人種なき人種主義は日本では戦後に定着した「単一民族神話」が→

syaori
2024/10/04 16:56

→日本には「日本人しかいない」という方向で人種を見えにくくすることになっていて、さらに「日本人」の意味に民族概念が関わっているにもかかわらずそれを脱政治化したりすることなどでそれが不可視化されて民族がかかわる人種主義についても見えにくくなってしまっていることなどが指摘されていて、その部分もとても興味深かったです。あと、差別が起こるプロセスには差別者と被差別者、同調者の三者がかかわる、差別者とそれに同調する者がいることで被差別者が排除されるというのは覚えておきたいと思いました。同調は無意識にやってそう。

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syaori
物語は30年前の誘拐事件を巡って進みます。身代金は警察に届けられ、誘拐された4歳の男児は「きちんと躾られ」て3年後に戻ってきた「中途半端な」事件。時効後も事件を追った刑事や記者たちの現場へ行き、人に会いという地道で面倒な捜査や取材、男児の現在から炙り出されるのはネットなどで報道を消費するだけでは見えてこない部分で、本書では「わざわざ行ったり触ったり」しなければ得られないその「実在」の重みを、同時になぜ描くのか、書くのか、どう生きるのかといった根源的な問いを浮かび上がらせていてその面にはとても共感しました。
syaori
2024/10/01 17:07

お借りした本、ありがとうございます。しかし、祖父母の身になると、突然匿名で誘拐されて行方不明の孫の様子を知らせる手紙をもらっても、どこまで信じていいのか、遠回しの脅迫なのかとか思ってしまうのではないかと思い、個人的には結構アウト気味。あと「被害者も加害者も皆人間です」「人には事情がある」とか言われると、「(スターリンや、ベリヤ、マレンコフの子どもたちの回想録では)それぞれ父親を優しい父親、おもいやりのある指導者として描いた。」「ハンナ・アレントが正しく指摘したように、こうした人物は、崇高で→

syaori
2024/10/01 17:07

→バイロン的な悪魔的悪の擬人化ではない。彼らの個人的経験と彼らの行為のもつ恐ろしさとのあいだのギャップは、途方もなく大きい。」「われわれの内面生活からくる経験、自分のしていることを説明するためにわれわれが自分に向って語る自分自身の物語は、基本的には嘘である。真実は外側に、われわれのなすことのなかにあるのだ。」というジジェク(『暴力 6つの斜めからの省察』)の言葉を思い出してしまって最後まで座りの悪い椅子に座っているような気分で読んでしまい、もうちょっと違う切り口もあったのではないかと思わないでもない……。

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2015/07/31(3402日経過)
記録初日
2015/07/21(3412日経過)
読んだ本
1457冊(1日平均0.43冊)
読んだページ
508512ページ(1日平均149ページ)
感想・レビュー
1453件(投稿率99.7%)
本棚
8棚
性別
血液型
B型
自己紹介

読む本を選ぶときに、こちらの感想を参考にすることが多かったので、私の感想もだれかの本選びの一助になればと登録しました。多分外国文学が多いです。

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