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2024年3月の読書メーターまとめ

ひるお
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感想・レビュー
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93ナイス

2024年3月に読んだ本
68

2024年3月のお気に入られ登録
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  • イトミン

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ひるお
『人新世の資本論』で人々の価値観を揺さぶった気鋭の思想家が、日本各地の“現場”を訪れ、事実を目の当たりにし、当事者と語り合い、ときには自ら体験して綴った毎日新聞連載コラム。五輪、ウーバーイーツ、コロナ禍の在宅勤務、昆虫食など、この2年ほどの日本社会を振り返ることのできる内容も多い。既存の仕組みは歪み限界を見せながらも、いまだ力を失わない。それにただ流されるのではなく、他者に出会い考えることで「想像力欠乏症」を乗り越える。余裕を切り詰められた人間にはもっとも難しく、しかしもっとも必要なことである。
ひるお
2024/03/23 17:21

竹田ダニエル氏の言葉。「Z世代というのは価値観だと私は思っています。それは未来に対して誰にとっても持続可能であるような最善の選択をとる努力ができるような価値観です。」(:132-133)

ひるお
2024/03/23 17:28

野宿者差別を扱った章では、野宿者やドヤ街の労働者は「汚い」「怖い」「怠惰」という偏見に向き合う方法について述べられるが、一方で、かれらは実は勤勉だ、と主張するのでは、結局既存の価値観を打破することはできないと思う。勤勉だから承認されていい、というのでは、既存の価値観に回収されるだけからだ。

が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
36

ひるお
生まれも育ちも関西(大阪は岸和田)、関西の大学で学び、関西のメディアで働いてきた編集者による大阪論。メディアにおける大阪イメージ、関西弁の表記、関西グルメの位相など、京都には数年住んだものの大阪経験の少ない者にはわかりそうで捉えきれず、新鮮な内容が並ぶ。タイトルの通り大阪について論じたものではあるが、メディアや政治、経済や文化などについての指摘には普遍性がある。街とはどういうことか、社会とはどういうことか。大阪という場を通して、人を、社会を、コミュニケーションを考える試みなのだと思う。
ひるお
2024/03/31 21:12

「街の現場では、そうした暴投、失投を互いに投げ合うことの方が、正しいキャッチボールよりも多いし、だから時には変化球を投げたり、いつまでも投げ合うことが楽しくて面白いからやめられない。」(:44)

ひるお
2024/03/31 21:15

「街で「知らない人なのに知っている人」に出会うこと。そういう機会がまだまだ多いのが大阪という街の特徴であり、そういうところをわたしたちは多分に感覚的な言い方で「街場」などと呼んだりしている。秋葉原はそういう「街場」な感じがしない。加えてものすごく多くの人が行き交うこの街には「一人ぼっち」の「みんな」が何かにシンクロしているような気配がして、その何かが不気味である。」(:79)

ひるお
土曜社、ミシマ社、サウダージ・ブックス、ゆめある舎、ミルブックス、タバブックス…出版不況と言われる中、“常識”から外れ、新たな世界を切り拓き続ける“ひとり出版社”。一人だからこそ、小規模だからこそ、地方発だからこそできることを探り、自分の信じる価値を追求する人びと。この本がここに存在しなければならない、という確信は無敵だ。そういう熱を私も確かに知っていて、だからこそ、書店や出版社の仕事では食べていけない、という状況を見過ごせない。こういう仕事こそが仕事なのであり、ブルシットジョブなんて仕事とは呼べない。
ひるお
ライターのパリッコ・スズキナオによるユニット「酒の穴」が、『デイリーポータルZ』に発表した対談・エッセイ集。表題作の「ご自由にお待ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日」や、それぞれ徒歩で北または南に5時間歩き続ける企画、「いつもの自分“じゃないほう”を選ぶご近所散歩」など、一見ただふざけているだけのようだが、どれも日常の複層性、見えなくなった可能性の多さを示してくれる良作。毎日は遊びに満ちている。小学生の夏休みのような感性。こういうゆとりと喜びを取り戻したい。
が「ナイス!」と言っています。
ひるお
女性攻め漫画、と、一言でくくれること自体が世の異性愛規範(“男らしい”男と“女らしい”女が番うべしとする規範)の強さを示しているわけだが、BL/やおいで男性2人が受け攻めについて話し合う(あるいは争う)ように、男女のカップルも受け攻めを話し合っていい。というか、話し合って然るべきではないか。性的同意には、セックスするかどうかだけでなく、もちろんこうした項目も含まれると思う。
ひるお
画力は高いのだが、情報(出し方、順序、コマのメリハリなど)が整理されていないからか、展開が唐突に感じられる。漫画って難しい。
ひるお
私たちは何のために、何をして、どうやって働くのか? 「つくる」「書く」「教える」の3つの仕事に携わる著者が、デザインに関わる人々のインタビューから、仕事について考える。「デザイナー」の「仕事論」というと、クリエイティビティ重視、ネオリベ礼賛、といったものなのではないかと警戒しながら手に取ったが、形式的である種フェティッシュとさえ言える日本の労働の現状への危機感・忌避感には強い共感を覚えた。“エシカル”や“アナーキー”の前提として、あるいは一つの抵抗として、職場のデスクの上に置いておきたい本。
ひるお
2024/03/30 09:14

「仮に茶番劇だと感じてはいて、しかしいい加減な仕事はできないし、したくもない性分の人々が集まっていたら、目的の合理性はともかく、制作物のクオリティにおいて責任を果たそうとするだろう。達成感や、自分の生命を使う意味を、そこで得ようとすると思う。結果としてその目的や内実はともかく、クオリティの高さが妙に突出した仕事が生み出される…という事態が、終戦間際の日本の話ではなく、現在の社会でいまくりかえされている気がする。[続]」

ひるお
2024/03/30 09:15

「こうした反復は「デザインのためのデザイン」「仕事のための仕事」「経済のための経済」といったタコつぼ的な状況を強化する。各職能領域は異様に洗練されたマニアックな同好会のようになって、自分たちが新たに獲得すべきトレンドを常に探しつづける。薪がないと火を維持できないので。」(:131)今の世の中のアホらしさを鋭く言い当てている。

ひるお
黒川博行、谷崎潤一郎、町田康、和田竜など、時代やジャンルを問わず、“大阪弁”を駆使して作品世界を作り上げた作家たちを取り上げる“ブンガク論”。大阪や京都出身者は(あるいは、大阪や京都では)、学校や職場や冠婚葬祭といったフォーマルでパブリックな場でも関西弁を使う(使われる)が、それは他の地域の方言も使っていい、ということではなく、関西では(関西人にとっては)関西弁こそがフォーマルでパブリックな“標準”語なのだ、というのは、関西居住歴のある私にはよくわかるリアルな事実だ。
ひるお
気鋭の臨床心理学者による、『週刊文春』連載コラム。ユーモアにあふれた文体を楽しみながら、心を掴むことの難しさ(あるいは不可能性)、それでもその事実と向き合い、“うまくやって”いこうとすることの重要性を実感できる。カウンセリングを元にした豊富なエピソードは、実際の転移がいかなるものかを示していて興味深い。喪の作業や(金銭の)支払いが心にどのように/どれほど作用するか。理論だけでは把握しきれない、心と関係の諸相。
ひるお
2024/03/27 21:15

「「[カウンセリングの]お金を払うとき、寂しかったんです。ああ他人なんだって思ってしまうから」」(:208) これこそが対価を払うことがもたらす意義である。 「自己肯定感が低いのは私たちの社会そのもので、今社会は未来を想像することも、手繰り寄せることもできなくなっているのではないか」(:237)

ひるお
2024/03/27 21:15

「私たちの心を最初に発見したのは、他者だったではないか。私たちが自分の心に気づく前に、周りの大人が「お腹減ったんだね」とか「気持ちいいのね」と気づいてくれた。私たちの心は誰かの心の中で発生する。そういう体験が積み重なって初めて、ようやく自分を振り返れるようになる。自分の心で自分の苦しみや喜びに気づけるようになる。」(:241)

が「ナイス!」と言っています。
ひるお
行事やレシピ、ハーブや手仕事。12ヵ月それぞれの風習、伝説、神話などを紹介しながら、“魔女”の知恵を授けてくれるガイド本。ハーブの効能に関してはいまやすっかり浸透したものも少なくなく、かつて魔女と呼ばれた女性たちの知恵の普遍性を実感できる。彼女らが迫害を受けたことの哀しさも。しかし、クリスマスローズに毒があったとは…!
ひるお
山梨の雑木林の中に土地を購入し、自力で小屋を建て、最小限の生活を送る著者。彼はどのようにしてそうした生き方にたどり着いたのか? 幼い頃から重要なテーマであり続けてきた“生と死”、大学や大学院での研究、頭を支配する思考と現実の生活とをどうやって接合していくか。苦しい思考の連なりの末に行き着いた小屋暮らしという選択肢は、誰もに開かれたものではないにせよ、ひとつの選択肢として提示されていいものだ。著者の悩みは、(ここまで言語化されているかどうかは別として)ある種普遍的なものであるようにも思える。
ひるお
2024/03/24 19:21

「それから、正確に言えば、僕が興味があるのは哲学ではなく、自分だった。自分自身の問題にしか興味がなかった。哲学に関する興味もわ自分に関わる限りでのことだった。自分以外の一切のこも、他人の学説とか、研究室の人間関係とか、外国語を操ることも論文を読むことも書くことも、それを学会で発表することも、業績を作るために、つまり生きてゆくために仕方がなくやるのであって、まったく楽しくなかった。わかることは一人でわかるし、一人でわからないことは誰に尋ねてもわからないと、そんなふうに思っていた。」(:93)わかりすぎる!!

ひるお
2024/03/25 21:17

もちろんわたしも雑木林の中での小屋暮らしがしたいのだが、こういう世捨てサバイバル生活ができるのは結局男性なのだよな、という気持ちもある。女性の場合、金やプライドや人間関係や安定とは位相の違う困難さに直面してしまうからだ。

ひるお
『人新世の資本論』で人々の価値観を揺さぶった気鋭の思想家が、日本各地の“現場”を訪れ、事実を目の当たりにし、当事者と語り合い、ときには自ら体験して綴った毎日新聞連載コラム。五輪、ウーバーイーツ、コロナ禍の在宅勤務、昆虫食など、この2年ほどの日本社会を振り返ることのできる内容も多い。既存の仕組みは歪み限界を見せながらも、いまだ力を失わない。それにただ流されるのではなく、他者に出会い考えることで「想像力欠乏症」を乗り越える。余裕を切り詰められた人間にはもっとも難しく、しかしもっとも必要なことである。
ひるお
2024/03/23 17:21

竹田ダニエル氏の言葉。「Z世代というのは価値観だと私は思っています。それは未来に対して誰にとっても持続可能であるような最善の選択をとる努力ができるような価値観です。」(:132-133)

ひるお
2024/03/23 17:28

野宿者差別を扱った章では、野宿者やドヤ街の労働者は「汚い」「怖い」「怠惰」という偏見に向き合う方法について述べられるが、一方で、かれらは実は勤勉だ、と主張するのでは、結局既存の価値観を打破することはできないと思う。勤勉だから承認されていい、というのでは、既存の価値観に回収されるだけからだ。

が「ナイス!」と言っています。
ひるお
数度目の再読。生前最後に刊行された書ということもあり、死の気配が強く漂う。何人もの人の病や死が描かれる。同時に、正月の騒々しさやけばけばしさ、娘と食べたまずいもの、映画の秀作・駄作など、細やかに世界をまなざしいとおしむ眼の瑞々しさは鋭さ敏さを増すばかり。まずいものつまらないものを書いてこんなに面白く、不愉快さや下品さのない書き手はそういない。
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ひるお
ネタバレ知人に薦められて。疲れた現代人にとって理想的な解像度の、いわゆる“優しい世界”かと思いきや、労働や怪物(?)の存在、謎のカメラなどには、現実との奇妙な連続性や皮肉な批評性も感じられる…とここまで書いて、誰が何と言おうと本作のキャラみたいに生きればいいのだとふと思った。ちいかわやハチワレより、うさぎや鎧さんくらいの強さで生きたい。
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ひるお
ネタバレ宇宙旅行中に発生した事故、酸素は残り50時間分、コールドスリープ装置に入れるのは一人だけーー生き残りを賭けたバトルロワイヤルが始まる。宇宙空間という究極の密室の中、子供たちの間で生存闘争が始まるという展開は、海外製ホラーゲームでありそうな印象。最終巻まで読了したが、オチ(というか、起承転結の転的な種明かし部分)も、まさにそうしたゲームにありがちな感じだった。
ひるお
アルゼンチン・ブエノスアイレス出身の作家による短編集。どことなくアリ・アスター監督作品を思わせる(一見するとおしゃれでかわいらしい装幀にも共通点がある)、自分の認識がどろどろと融けて崩れていくような、不穏な物語が並ぶ。世界は実は不定形である。ただ、その事実を直視しないで生きているだけで。本書はそういうことを提示しているのかもしれない。ただ、小説としてはあまり好みではなかった。
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ひるお
ノルウェーで大工として働く著者によるエッセイ。ある集合住宅の屋根裏をリフォームし、一つ下の階の住居と接続する工事の、入札から作業完了までを綴る。見積もりをとる、作業を依頼するーー専門外の者だとそんな抽象的かつ雑駁な把握で終わってしまう物事も、豊かな経験と緻密な計算に基づいているのだと実感する。専門用語が多く、イメージが難しい箇所も少なくないが、それは大工という仕事についての無知によるものだ。家のつくりがわからなくても、家で暮らすことはできる。ただ、本書を読んだ後は、建物の些細な部分に目が行くようになる。
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ひるお
『non-no』『ESSE』『婦人公論』『ku:nel』『美的』ーー読んだことはなくとも名前くらいは知っていて、なんとなくイメージもつく、そんな雑誌たちとその読者の“人格”を独断と偏見で想像する本。ここまで想像できる著者の観察眼・分析力におののく(知人だったら怖くて近寄れない)と同時に、雑誌がこれほどまでに細分化されている(いた)ことにも驚く。(出産後のギャル向け雑誌、とか、アウトロー系ギャル向け雑誌、とか、要するにギャルの多様性がすごい。あんまり敵対もしなさそうだ…)続編もあるようなので、是非読みたい。
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ひるお
ネタバレ暴力団によって売春島に変えられた石婚島。その背後には製薬企業による謎のプロジェクトがあった。石婚島出身の忍は、ひょんなことから暴力団同士の争いに巻き込まれていく。流石は沙村広明、絵が抜群に上手い。暴力に容赦がなく、それでいて、シリアスな中に間の抜けたギャグが混じる。戦う(そしていずれも最強クラスの)女性たちのタイプもさまざま、『ブラックラグーン』をさらにエグくしてクールさを引いたらこうなる、という感じ。
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ひるお
たなとデビュー作。著者の作品は初読だが、個人的にはふたりの馴れ初めや関係の進展など説明不足だと感じた(デビュー作なので当然かもしれないが)。やおい/BLは関係性をこそ描くものなので馴れ初めが大事、さらっと描くなら後から遡っての説明が必要だと思う。ただし、漫画である以上、文章で状況・設定説明するのは避けた方がよいのでは。もちろん、上記は私個人の嗜好にすぎない。溝口彰子も指摘するように、BLとは嗜好が細分化されたジャンルであり、それゆえに、読むたびに自分自身の嗜好を考えさせられるものなのだ。
ひるお
オハイオ州ワインズバーグ。エリー湖の南に位置するこの小さな町に暮らす人々を描き、住人を通して町を描く“町もの”の嚆矢となった連作短編集。個人的には好みではなかった。が、だれもが“自分は普通でない”“ここには馴染めない”と感じ、ときに突飛で極端な行動に出うる、という、本書を貫くテーマには普遍性があると思う。そこに住む人々を追うことで町を描いた作品としては、ほかにジョイス『ダブリナーズ』、佐藤泰志『海炭市叙景』などがある。こちらも読んでみたい。
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ひるお
ピンク映画制作会社、音楽雑誌編集者などを経て故郷の富山に戻り、実家の薬局で働きながら奔走するライターの地元愛憎エッセイ。再開発による画一化は、おそらく日本中のあちこちで起こっていることだ。古くからの映画館や百貨店の閉業と商店街の再開発は、私の故郷でもまさに現在進行形で進んでいる。ではどうしたらよいのか。その地の魅力とは、おしゃれさと素朴さロハスさの二択なのか。どちらもとらず、故郷でありのままにやりたいことをやり、作りたいものを作り、生きたいように生きる人々。大事なのは場所でなく人、という言葉が胸に残る。
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ひるお
いじめもの、タイムリープ/パラレルワールドもの、宇宙人(ドラえもん?)ものをひとつに合わせた意欲作と言えるのだろうが、個人的にはおもしろさがわからなかった。
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ひるお
片岡義男による、コーヒーについてのエッセイ集。コーヒーについてのエッセイ、といっても、コーヒーそのものを扱ったものに限らず、映画、音楽、漫画、小説など、コーヒーや喫茶店が登場するものなら何でも取り上げ、題材は多岐にわたる。よく見知った場所・店が登場することもあり、まるで一緒になってそこを歩くような気持ちで読んだ(片岡はスマート珈琲店派なのか)。高田馬場にあった名曲喫茶らんぶるの、そのうらぶれた様子。こういううらぶれ具合は、東京ならではという気がする。
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ひるお
沖縄県国頭郡本部町に属する離島・水納島。みんなしま、という柔らかな音とクロワッサン型の土地をもつこの島の過去と今を、気鋭の書き手が滞在者の視点から書き留める。沖縄戦や海洋博、次々に立ち現れる、国や企業の意思。そのはざまで、ライフラインや教育や文化を守ろうとした人々。もの言いたげな、馴染みのない自然。失われそうな故郷は、失われる前に、こんなふうに書き留められていい。それがきっと失わせないことだ。自分のものとして島を語る人々の言葉に、筆者の姿勢に、そう思わされた。
ひるお
『ブックデザイン365』とは異なり、こちらは特殊加工や特殊製本がメイン。ハンドメイドのもの、テクノロジーを駆使したカッティング、金属を使ったブックケースなど、“本”という媒体がどこまで化けられるか、あるいはいったいどこまでが本なのか、という問題に果敢に挑戦しているような印象を受ける。
ひるお
2周目。最新巻まで読んでから戻ってくると、新たな感慨がある。達海の強さとは、言葉のセンスと目配りの細やかさからくるものが大きい。
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ひるお
シンガポール在住7年のライターによるシンガポール案内。マーライオンとマリーナ・ベイ・サンズ、ホーカーセンターくらいしか知らなかったが、都市の中の緑が色濃く、さまざまな文化が混ざり合う独特の雰囲気を「世界ふれあい街歩き」的に楽しめた。ビビッドなカラー、突き抜けたスケールは、どこか近未来を描いたSF作品の世界にも見える。2014年刊行ということで、10年経っているわけだが、今はどうなっているのだろう。
ひるお
ネタバレ面白いことは間違いないのだが、ヘテロセクシズムだけはどうにかしてほしい(ある意味オーソドックスな作風とも言える)
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ひるお
デザインの勉強の一環として読んだが、読書案内としても優れた一冊だった。巻末の「書店とブックデザイン」でも述べられているが、「よい本」の条件には「デザインがよいこと」も含まれているのだ。コントラストが低いことを「眠い」と言う、といった印刷業界の用語や、判型、紙、特殊加工など、ディテールにも心が踊る。本は読むもので、メディアで、情報だが、同時にモノである。
ひるお
ネタバレ桓騎の死。視野の広さ、頭の良さ、忍耐強さ、秀でたところは種々あったのだろうが、何より突出していたのは、納得しないこと、怒り続けられることだったのではないか。国や民などクソだと言い切れる強さ。時間稼ぎや逃走を厭わず、相手が大王だろうと自分の流儀を貫く。アナーキーな男だった。そのうち栗原康の著書に出てきそうだ。
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ひるお
那覇市第一牧志公設市場の人々の姿を丹念に追った『市場界隈』続編。市場の建て替えにより、仮設市場への移転を余儀なくされた人々。客の流れが変わり、アーケード撤去で風雨にも翻弄されていたそのさなか、コロナ禍がやってくる。予想だにしなかった変化に直面しながらも、生活は続く。「法律に合わせて生活があるよりも、生活に合わせて法律があるべきだ。」(:54)これまでとこれから、常にその間にある市場の日々。衣食住のすべてを、そしてその三文字に回収できない何かをも担う市場を歩き、その空気を吸いたくなる。
ひるお
彗星のように現れ、貴重な名作の復刊や夢の共演を次々に実現してきた夏葉社。実直かつ端正な仕事で老舗の風格を漂わせるその正体は、当時30代の著者が一人で立ち上げた出版社だった。従兄の死、友人やバイト先の同僚とのかかわり。含羞を覚えるほどのまっすぐさ。著者はきっと、誰よりも本と人とを愛し、誰よりも本と人とに愛されたい人なのだと思う。熱意をもって憧れのあの人にぶつかり、それが受け入れられたときのきらめき。本という作品、物理的かつ象徴的存在なしに生きられないすべての人の心に、愚直ゆえの鋭さと強さで刺さる本。
ひるお
2024/03/06 21:07

「ひとり、夜道を歩いていると、突然、咆哮したくなるときがある。」(:204)栗原康の本を読んだ直後だから、めちゃくちゃ笑えた。

ひるお
2024/03/06 21:09

「ぼくは、泣いてこそいないものの、泣いているのと同じような気持ちで、本屋さんの店内に足を踏み入れる。そして、あれはダメだ、これもダメだ、全部くだらない、馬鹿みたいだ、とシニカルな目でいろんなものを眺める。/ぼくみたいな、なにもすることがない若者は、「みんなダメだ」と苛立ちながは、社会と接する。そうして、目に入った本のなかから、自分が認めてもいいと思うものを一冊手にとり、それを脇に抱えて、急かされるように帰路を急ぐのである。」(:205)

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ひるお
革命とは何か? どのようなものなのか? どうあってはいけないのか? バクーニン、ルイズ・ミシェル、ネストル・マフノ、ランダウアー。世界に納得せず、どこからともなくあふれ出る衝動に突き動かされるまま、ひとつの銃弾となって弾けた人々。ある方向性というよりは運動性と熱量をもって、支配に抗しぶつかっていった“ひとり”たち。道具から武器を取り出し、何度でも自分でないモノへ化けていく。アナーキーを生きる姿が躍動する、熱く疾く強いアジテーションの書。
ひるお
2024/03/09 20:08

「革命の大業に、あらかじめやっちゃいけないことなんてない。というか、なんにもしばられずに、生きられるようにしていくのが革命なんだ。だからもし、あれもダメ、これもダメって、主人づらしていってくる連中がいるならば、どんな手をつかってでも、ぶちのめさなくちゃいけない。」(:274)

ひるお
2024/03/09 20:08

不可視委員会『われわれの友へ』より孫引き。「選挙が民主主義的であるのは、人々に統治への参加を保証するからではなく、ささやかながら選出にたずさわったという幻想をもたせて、統治へのある種の同意をとりつけるからである。[中略]民主主義とはありとあらゆる統治形態にとっての真理なのである。」(:281)

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ひるお
東京に存在する、明治期から戦前までに作られた“レトロ建築”。その数々を、窓やドア、床やステンドグラスなどのディテールにも注目しつつ紹介する一冊。現存せず、と書かれた建築物も複数あり、建築を保存することの難しさ、古いものを簡単に壊すことの愚かさを思う。個人的には、部分をクローズアップするのではなく、もっと空間全体を見たかった。そしてやっぱり日当たりが大事。
が「ナイス!」と言っています。
ひるお
『きょうの料理』に連載された、エッセイスト・酒井順子による食べ物エッセイ。酒井順子の著書を読むのは初めてだが、筆者ならではのエピソードを楽しむというより、あるあるネタが多いように感じた。買うだけ見るだけで使われない料理本、一回使っただけの各種スパイス、家を掃除するために開かれるホームパーティー。安野モヨコ『くいいじ』と同じテーマで書かれたものもあるのだが(例えば「蕎麦」「バーベキュー」)、安野の方が出色に思える。それはきっと、安野の「くいいじ」が突き抜けているからだ。
が「ナイス!」と言っています。
ひるお
漫画家・安野モヨコによる食べ物エッセイ。くいいじ、というタイトル通り、質・量ともに、そして広く深く食べ物を買い求め料理し取り入れる姿に表れているのは、まさしく愛というほかない。漫画家ならではの“修羅場”食も登場、イラストも絶品。そして、有る、無い、居る、など、思いのほか古風な文体(というか、表記)。春の山や夕陽、高速道路のつめたい光さえ味わいたいと思い、味や食感をはてなく想像するその感性。庵野秀明が何度もさりげなく登場するので、ファンにはたまらないかも。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/06/12(2876日経過)
記録初日
2016/01/13(3027日経過)
読んだ本
3643冊(1日平均1.20冊)
読んだページ
829153ページ(1日平均273ページ)
感想・レビュー
1287件(投稿率35.3%)
本棚
8棚
自己紹介

割と何でも読む。お気に入りの本を「365冊」本棚に入れています(自分にとって大切な本、すごく面白かった本などを、蠱毒みたいに365冊集めようという計画)。「参考文献」は研究関係(ジェンダー、セクシュアリティ、BL、ファンダム、精神分析、現代思想などなど)。感想・レビューはコメント欄に続きを書くことがあります。

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