「街の現場では、そうした暴投、失投を互いに投げ合うことの方が、正しいキャッチボールよりも多いし、だから時には変化球を投げたり、いつまでも投げ合うことが楽しくて面白いからやめられない。」(:44)
「街で「知らない人なのに知っている人」に出会うこと。そういう機会がまだまだ多いのが大阪という街の特徴であり、そういうところをわたしたちは多分に感覚的な言い方で「街場」などと呼んだりしている。秋葉原はそういう「街場」な感じがしない。加えてものすごく多くの人が行き交うこの街には「一人ぼっち」の「みんな」が何かにシンクロしているような気配がして、その何かが不気味である。」(:79)
「仮に茶番劇だと感じてはいて、しかしいい加減な仕事はできないし、したくもない性分の人々が集まっていたら、目的の合理性はともかく、制作物のクオリティにおいて責任を果たそうとするだろう。達成感や、自分の生命を使う意味を、そこで得ようとすると思う。結果としてその目的や内実はともかく、クオリティの高さが妙に突出した仕事が生み出される…という事態が、終戦間際の日本の話ではなく、現在の社会でいまくりかえされている気がする。[続]」
「こうした反復は「デザインのためのデザイン」「仕事のための仕事」「経済のための経済」といったタコつぼ的な状況を強化する。各職能領域は異様に洗練されたマニアックな同好会のようになって、自分たちが新たに獲得すべきトレンドを常に探しつづける。薪がないと火を維持できないので。」(:131)今の世の中のアホらしさを鋭く言い当てている。
「「[カウンセリングの]お金を払うとき、寂しかったんです。ああ他人なんだって思ってしまうから」」(:208) これこそが対価を払うことがもたらす意義である。 「自己肯定感が低いのは私たちの社会そのもので、今社会は未来を想像することも、手繰り寄せることもできなくなっているのではないか」(:237)
「私たちの心を最初に発見したのは、他者だったではないか。私たちが自分の心に気づく前に、周りの大人が「お腹減ったんだね」とか「気持ちいいのね」と気づいてくれた。私たちの心は誰かの心の中で発生する。そういう体験が積み重なって初めて、ようやく自分を振り返れるようになる。自分の心で自分の苦しみや喜びに気づけるようになる。」(:241)
「それから、正確に言えば、僕が興味があるのは哲学ではなく、自分だった。自分自身の問題にしか興味がなかった。哲学に関する興味もわ自分に関わる限りでのことだった。自分以外の一切のこも、他人の学説とか、研究室の人間関係とか、外国語を操ることも論文を読むことも書くことも、それを学会で発表することも、業績を作るために、つまり生きてゆくために仕方がなくやるのであって、まったく楽しくなかった。わかることは一人でわかるし、一人でわからないことは誰に尋ねてもわからないと、そんなふうに思っていた。」(:93)わかりすぎる!!
もちろんわたしも雑木林の中での小屋暮らしがしたいのだが、こういう世捨てサバイバル生活ができるのは結局男性なのだよな、という気持ちもある。女性の場合、金やプライドや人間関係や安定とは位相の違う困難さに直面してしまうからだ。
竹田ダニエル氏の言葉。「Z世代というのは価値観だと私は思っています。それは未来に対して誰にとっても持続可能であるような最善の選択をとる努力ができるような価値観です。」(:132-133)
野宿者差別を扱った章では、野宿者やドヤ街の労働者は「汚い」「怖い」「怠惰」という偏見に向き合う方法について述べられるが、一方で、かれらは実は勤勉だ、と主張するのでは、結局既存の価値観を打破することはできないと思う。勤勉だから承認されていい、というのでは、既存の価値観に回収されるだけからだ。
「ぼくは、泣いてこそいないものの、泣いているのと同じような気持ちで、本屋さんの店内に足を踏み入れる。そして、あれはダメだ、これもダメだ、全部くだらない、馬鹿みたいだ、とシニカルな目でいろんなものを眺める。/ぼくみたいな、なにもすることがない若者は、「みんなダメだ」と苛立ちながは、社会と接する。そうして、目に入った本のなかから、自分が認めてもいいと思うものを一冊手にとり、それを脇に抱えて、急かされるように帰路を急ぐのである。」(:205)
「革命の大業に、あらかじめやっちゃいけないことなんてない。というか、なんにもしばられずに、生きられるようにしていくのが革命なんだ。だからもし、あれもダメ、これもダメって、主人づらしていってくる連中がいるならば、どんな手をつかってでも、ぶちのめさなくちゃいけない。」(:274)
不可視委員会『われわれの友へ』より孫引き。「選挙が民主主義的であるのは、人々に統治への参加を保証するからではなく、ささやかながら選出にたずさわったという幻想をもたせて、統治へのある種の同意をとりつけるからである。[中略]民主主義とはありとあらゆる統治形態にとっての真理なのである。」(:281)
割と何でも読む。お気に入りの本を「365冊」本棚に入れています(自分にとって大切な本、すごく面白かった本などを、蠱毒みたいに365冊集めようという計画)。「参考文献」は研究関係(ジェンダー、セクシュアリティ、BL、ファンダム、精神分析、現代思想などなど)。感想・レビューはコメント欄に続きを書くことがあります。
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竹田ダニエル氏の言葉。「Z世代というのは価値観だと私は思っています。それは未来に対して誰にとっても持続可能であるような最善の選択をとる努力ができるような価値観です。」(:132-133)
野宿者差別を扱った章では、野宿者やドヤ街の労働者は「汚い」「怖い」「怠惰」という偏見に向き合う方法について述べられるが、一方で、かれらは実は勤勉だ、と主張するのでは、結局既存の価値観を打破することはできないと思う。勤勉だから承認されていい、というのでは、既存の価値観に回収されるだけからだ。