「キミの知らない恋の物語ーセツナイ〜なみだの恋ー」所収「先を生くる人」を読了して

「キミの知らない恋の物語ーセツナイ〜なみだの恋ー」所収「先を生くる人」を読了して

「勇気とは何か」若松英輔　岩崎航(わたる) (3歳で筋ジストロフィー発症、詩人) 勇気とは、語り得る何かではなく、試練を生きる者の生涯によって体現されるものなのかもしれない。(「悲しみの秘義」文春文庫) 巻末エッセイ「からむしの声に耳を澄ませて」和合亮一　「見ぬ世の人を友とする」(徒然草一三段)

風が強い日も、地面がぬかるんでる日も、汗がしたたる暑い日も、陽が落ちるのが早い寒い冬の日も、晴男(祖父)は一緒に練習をしてくれた。ゴールキーパーとしてゴールの前に立ち、シュートしたボールを拾い集め、ときには声をかけ、暗くなれば軽トラックのヘッドライトで雑草だらけのピッチを照らしてくれた。そんなことを週に三日続けるのは、歳をとった晴男にとって、楽なことではないはずだ。残り少なくなっていく晴男の時間を、人生を、ぼくのために費やしてくれているのだ。

ラス・カサス

カズオ・イシグロ

1938年11月9日〜10日、水晶の夜(クリスタルナハト) 『キンダートランスポート』

堪能