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2023年5月の読書メーターまとめ

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2023年5月に読んだ本
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2023年5月のお気に入られ登録
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2023年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

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本書は、量子力学の観測者問題を観測される側から記述する試みだが、登場人物はそれを知らずにその世界の奇妙さの解明にあたるという手順で進む。雷と共に現れる球電の謎を追う軍人と科学者3人は、ミステリ的探求に仮説と検証の科学的論理を上書きし、この世界がマクロであるとする通念を鮮やかに覆すと同時に、20世紀物理学が軍事と共同した核開発の歴史を21世紀の舞台で暴走させる。すると、この世界の生命は別の世界から観測されると消失して幽霊となって彷徨うシュレーディンガーの猫であり、世界は確率的な雲に満ちていたことがわかる。
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2023年5月にナイスが最も多かったつぶやき

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先月末岡本太郎三昧を終了、、その間『碧巖録』『臨済録』『無門関』をPCに打ち込んだので今月の読メはマインドフルネス関連から、、以前、テック企業のスタッフにマインドフルネスのことを聞いてようやく習慣化、、GWは毎日16時間のプチ断食も加えて心身整え中、、2023年4月の読書メーター 読んだ本の数:30冊 読んだページ数:8502ページ ナイス数:327ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/743402/summary/monthly/2023/4

先月末岡本太郎三昧を終了、、その間『碧巖録』『臨済録』『無門関』をPCに打ち込んだので今月の読メはマインドフルネス関連から、、以前、テック企業のスタッフにマインドフルネスのことを聞いてようやく習慣化、、GWは毎日16時間のプチ断食も加えて心身整え中、、2023年4月の読書メーター 読んだ本の数:30冊 読んだページ数:8502ページ ナイス数:327ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/743402/summary/monthly/2023/4
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2023年5月の感想・レビュー一覧
31

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現在が未来に向かうと過去は記憶されるが、記憶には想起しやすい記憶と想起しにくい記憶がある、とベルクソンなら言うだろう。作者はそこに想起したくない記憶を加え、マイノリティとして生きる現在の主人公の状況を過去に反映させる。物語は、想起したくない記憶を現在に突きつけ(「紙の動物園」「愛のアルゴリズム」)、想起しやすい記憶を思い起こさせ(「月へ」「太平洋横断海底トンネル」)、想起しにくい記憶を現在に甦らせる(「結縄」「心智五行」「文字占い師」)。3つの記憶は過去を懐かしく彩らず、主人公達の現在をほろ苦く映し出す。
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SFは現実と歴史を分離し、分岐する別の歴史と併存させ、現在と混交させ、または逆行させて、対局的には権力者がリセットしたり取り替える権力ゲームの面を見せつつ、個々の面では人間が真摯に向き合う現実としても描く。編者ケン・リュウが読むことを楽しんだ作品を選んだ14人16編の中国SFが収められた本書を読むと、焚書によって歴史を変える権力とそれに対して敗者側から歴史を記述した中国古代を思い起こし、歴史を対局から眺める教育を刷り込まれた記憶を重ねようとする。が、本書はそんな歴史観を喜劇的に笑い飛ばす作法も心得ている。
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誰もが天空に自分の星を持ち、病の時はその星を磨いたり軌道を直す医術を孤島に住む「火守」という老人が施す。そんなトーテミズム的信仰が生きる世界で、愛する少女の重篤な病を癒そうと孤島を訪れた少年が「火守」を継ぐ条件で老人と「ロケット」を作る。鯨の骨を燃やして火薬を作る等の工程の記述がプリコラージュ(つぎはぎ仕事)のように続き、その説明も「雪花石膏で作られた廃墟」に喩えられて、作品の幻想の度も重層化する。作者初の童話だそうだが、「アリとキリギリス」を思わせるような、寓話による現代の労働に対する注釈も垣間見える。
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地球を舞台とした5短編を収めた本書は、資本主義を徹底する地球を描き、宇宙を舞台とした『地球流浪』の笑いを悲哀に転じる。神文明が終わり耄碌した神々を預かる地球人(「老神介護」)、神文明後の資本主義の闇を共有する他文明と地球(「扶養人類」)、恐竜と蟻の徹底した格差(「白亜紀往時」)の物語は、読者の現実に触れて辛辣な笑いに誘うが、VR映像が届けられ女性の地下での孤独は甘美な物語の調子を悲哀へ変える(「彼女の目を連れて」)。が、彼女が参加した地下開発が時を経て評価されると、地下は希望の場に変わる(「地球大砲」)。
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英訳版短編集の地球外との関係の6編を収めた本書は、スケールを超える危機にスケールを変えて対処する人々が引き起こす伝統的な笑いの文学の設定が多数見られる。エンジンをつけて地球ごと脱出する計画(「流浪地球」)、地球を呑み込む宇宙船に乗る恐竜(「呑食者」)、生きるため10μmに縮んだ人間(「ミクロ紀元」)、海中に現れる巨大な山(「山」)はスケールが原因となり、極貧の農民の壮大な宇宙計画への参加(「中国太陽」)、ネット上でバージョンアップする呪いウィルス(「呪い5.0」)は結果となって、物語を驚異と笑いで満たす。
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山村の教室と銀河間の戦争は空間(「郷村教師」)、戦争とオリンピックは戦いの比喩(「栄光と夢」)等、物語は何かと何かを結びつけ、バタフライ効果(「カオスの蝶」)や巨大なシャボン玉(「円円のシャボン玉」)を作る技術で劇的に転換する終盤に読者を誘う。が、何かと何かは世界の部分に過ぎない。漢字をランダムに組み合わせて詩の創造を試み(「詩雲」)、三百万の兵士の手旗で円周率を計算する(「円」)荒唐無稽の物語が、デジタル技術で部分から世界全体を作りたがる人間思考をデフォルメすると、読者は自らの愚かさと強かさに思い至る。
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本書は、量子力学の観測者問題を観測される側から記述する試みだが、登場人物はそれを知らずにその世界の奇妙さの解明にあたるという手順で進む。雷と共に現れる球電の謎を追う軍人と科学者3人は、ミステリ的探求に仮説と検証の科学的論理を上書きし、この世界がマクロであるとする通念を鮮やかに覆すと同時に、20世紀物理学が軍事と共同した核開発の歴史を21世紀の舞台で暴走させる。すると、この世界の生命は別の世界から観測されると消失して幽霊となって彷徨うシュレーディンガーの猫であり、世界は確率的な雲に満ちていたことがわかる。
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暗黒森林攻撃を受けるごとに宇宙は次元を減らしてきた。今の宇宙は四次元の中の三次元にあり、ドーナツ状のトポロジカルな「魔法の指輪」の崩壊が四次元の崩壊を明らかにすると、一枚の小さな紙の到来から地球の二次元化が連鎖的に始まる。SFファンのために3巻目を書いたという作者の言葉を信じるなら、この紙は『2001年宇宙の旅』のモノリスさながら生命の進化も促すのだろう(魚が陸に上がったように)。宇宙が改変されると生命も改変されていく。ただ一つ、この改変から逃れるようにして、小宇宙に追放された新たなアダムとイブを除いて。
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冒頭のローマ帝国の滅亡の歴史記述は宇宙の滅亡を予告するかに思えるが、「死神永生」(死こそ永遠だ)という副題は人間側の解釈のようだ。群像劇的展開の中で本巻でのヒロインの登場は旧約聖書のイヴを思わせ、読者に楽園追放の物語を予想させる。前巻よりハードSF的になり、物理法則で捉えられる宇宙に彼女が据えられると、人間(地球人)が作る物語が多次元の宇宙を変える物語に見えてくる。三体人の裏切りや暗黒森林攻撃に対して様々な計画を立てる地球人を宇宙の大団円に駆り立てる作者が、この物語を歴史として終わらせるようには思えない。
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帰納推論を統計で強化する実証科学由来の現代のデータ主義的世界観は、データを集める企業や国家の権力を基盤とする。一方、生命の適応と変異による反脆弱な力の範囲を進化論的に知悉し、西洋的な人間中心主義を介入させる人類学調査の権力を注視する著者は、自己を固定する論理と権力を避け、帰謬法とアブダクションを駆使して環境の変異と共に動く考え方を試行錯誤する。生物学、人類学、精神医学、生態学へ自らシフトし、結果としての統計より確率過程自体に寄り添う著者の論理は、環境との関係次第で具象・抽象を生む精神(mind)を見出す。
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世界は生きている。安定は言語で分節した世界の捉え方であり、人間なる語も西洋ローカルの考えである。生物学、人類学、精神医学、生態学を渡る著者の40年弱に渡る論文を集めた本書(全3冊)は娘との7編の対話(メタローグ)から始まる。冒頭の対話では人間の分析・総合的世界構成が効かない動的世界を、ごちゃ混ぜなものは復元できないと逆問題から考え、人類学調査では他文化に西洋語のラベルを貼る際の思考のプロンプト場面を自らの失敗例で示す。その仮止め思考はバリ島でプラトー状態を見出していく(本巻は人類学領域の第2編まで収録)。
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アメリカでラジオ放送した対談の再編集である本書だが、神話を神学から捉えるキリスト教や歴史として捉える近代以後の学問を批判し、精神的なものの喩えとする東洋の神話観が擁護される。著者は、ユングの自己(意識と無意識の関係)と、世界を言語でできた夢と捉えたジョイスの小説観を通して、言語化不能な心の不可思議を神話は比喩的に伝えるという。ここから著者は、ラジオ聴取者向けのテーマである結婚について、結婚は自我が他の自我に動かされる社会の問題とし、「愛ある結婚」は自我意識から無意識へ解放する冒険という精神の問題と捉える。
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神話学からは著者の神話解釈は恣意的とされ、アイルランド系アメリカ人のアメリカンドリームへの信頼が「英雄の旅」を神話から抽出したのだとする批判もある。が、著者は神話が過去ではなく常に今を生きる人々の行動規範となる元型として存在していると強調した点が重要に思える。人間の知の領域の限界(神)を垂直世界で示しつつ、直線上の時間に沿って水平的に物事の動きを記憶する人間の性質は、世俗化した神話としての物語に現存しているからだ。膨大な文献資料を列挙して進む本書の最後には「聖なるものの世俗化」という興味深い小論がある。
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著者が神話に興味を持つ契機となったアメリカ・インディアンの砂絵に描かれた神話の話に始まる本書は、神話が3つの調和への要請(個人のライフサイクルとの調和、個人の生きる環境との調和、個人の環境の中に組み込まれた社会との調和)を満たす情報を含むと捉える。各テーマとなるエジプト、仏教、クンダリーニ・ヨーガ、チベット死者の書、古代ギリシャ、アーサー王伝説、トリスタンとイゾルデ、パルツィヴァル等は3者の調和の度合いのバージョン(狩猟採集から農耕、遊牧への重心移動)とされ、東洋/西洋の区分は後代のイデオロギーとされる。
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女神は生み、男神は殺すという対比で進む本書は、新石器時代の狩猟採集の人々の、男性が狩猟をし、女性が採集する役割からこの区別が始まると推測する。青銅器時代以後この役割は農耕民族の大地母神と遊牧民族の超越的男性神に分かれたが、「このパンは私の肉であり、この葡萄酒は私の血である」というイエスの言葉にも男性神を頂点とするキリスト教の中に大地母神の痕跡が認められるという。著者は、世界中の女性神を渉猟し、女性神が死んで埋められた大地から植物穀物が生じる豊穣の神話や性的快楽の男女差の言い伝えから豊穣との関係を取り出す。
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今目覚めて知覚している世界を夢と見なすと、世界は隠喩と象徴に満ち、個々人の経験や感覚を超えた様々なパターンの集合体と捉えられる。ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』の解釈で知られ、ユングやエリアーデが参加したエラノス会議のメンバーでもあった著者は、本書で世界各地の宗教神話に見られるイメージの共通性を、400以上も収録された図版から読み解く。本書はユングの集合的無意識をベースに夢解釈するかのように西洋と東洋の枠を超えた元型として世界の神話の共通要素(神、宇宙、花、内なる光、供犠、覚醒)を取り出す。
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西洋神話を中心テーマとする本書は西洋神話の連続性ではなく、その断絶と解体による構造変容を追う。大地母神神話から英雄神話へ、さらに一神教による超越性の一元化の段階に向かうローマ帝国の広大なネットワークとキリスト教の国教化政策を経て、大地や動物を通して捉えられた超越性の多様さが不可知の神に一元化されると、神話の英雄も多と一の断絶を飛び越え、冒険は通過儀礼から戦いへ、異界からの帰還は敵地からの凱旋へと変容する。が、そのような一元化した神話の中にも、多を通して超越性を捉えた先史以来の諸宗教の神話の元型は潜在する。
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『千の顔をもつ英雄』で著者は東西の神話に共通する英雄の旅(出発-冒険-帰還)の構造を抽出したが、本書は、英雄神話の成立からシャーマニズムと融合して神の概念が一元化されて国家神話へ向かう系譜を辿る。本巻は、大地母神を崇めていた先史時代の動物との関係を表す神話が、神のような超越性を動物や森の妖精に見出していた無文字(壁画や陶器に記される)時代の多神教的神話が、文字を用いる戦士集団の活躍が主となる英雄神話にシフトし、ローマ帝国の出現に備えるヘレニズムまでを神話的な象徴の変容の過程として東西神話を縦横に渉猟する。
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源氏物語と比較され、戦時中その絢爛な物語世界が理由で発禁となった本書だが、その下に亡命ロシア人やドイツ人との交流や台湾を巡る時勢に言葉を慎む様子も明記される等、戦後GHQの検閲も潜り抜けた物語の生き残り戦略が垣間見える。光源氏に関わる女性達を引き立たせる源氏物語の中空構造(河合隼雄)を念頭におくと、受動的主人公雪子は他の人物達への橋渡し役に見え、物語も作者の言葉を分散させて不穏な「今」を示唆する群像劇としても読める。大音量で「さざめく」大本営発表のラジオの標準語に小声で「ささめく」船場弁の対比も興味深い。
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対称性の破れが国家を生み出すという仮説の下、インディオ、ネイティブ・アメリカン、イヌイット、アイヌ、そして東アジアに渡る環太平洋の習俗に国家に抗する先史社会のミッシングリンクを想定して対称性社会と名づけた本書は、その破れが起こる場面を構造人類学や精神医学が用いたトポロジーで説明を試みる。現生人類の知性の流動化が超越性を生み出す際、高次元に止まらず一元化へ進むと対称性は崩れるとする本書は、一方で考古学、人類学、経済学、宗教学、脳科学を横断しつつ、一元化する国家に抗する高次元が現代人の脳に残存することを示す。
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白川静は「辞」は耳で聞く文学であり、文字を目で見るそれと区別した。後世、屈原作なる伝承が疑われ、様々な説が林立した本書だが、冒頭の「離騒」に始まる四句ごとに変わる脚韻の規則性には、この韻文が歌として伝えられたことが書き下し文にも垣間見える。訳者によれば天地開闢に始まる「天問」が巫覡集団内の教理問答の相伝を思わせることから、紀元前の春秋戦国期の中国南方の神下ろしの儀式が背景にあることも想像できる。読みながら、人間同士の水平的コミュニケーション空間に屹立する神に通じるシャーマニズムの垂直の時空を思い浮かべる。
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医療行為としてのマインドフルネスはジョン・カバット・ジンのストレス軽減法に遡るが、そのモデルは道元由来だという。この流れを汲む本書は、仏教のベースと森田療法がすでにある日本での医療面でのマインドフルネス研究について、2010年代の医療技術と脳科学、認知科学を通した17人の専門家の27の論考を収録する。医療面や認知面から知識として読むか、実践者の経験に照らして読むかで各論文の受け止め方も変わってくるが、視覚野に入らない内臓感覚や心拍への注意のデータ化が将来的な教育実践に向けたビジョンに繋がる点が興味深い。
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本書は宏智正覚の本則と頌に万松行秀の示衆、評唱・著語を付した現代の曹洞禅の公案100則を収録する。構成は『碧巖録』に準ずるが、冒頭の本則の配列は、世尊(ブッダ)、達磨大師、般若多羅、再び世尊と来て、曹洞宗の始まりに位置する青原へ連なるインドから中国に至った曹洞禅の系譜を表すという。後に道元は「黙照禅」と揶揄されたが、本書の第2則の梁の武帝と達磨の対話(『碧巖録』ば第1則)からすでにその特徴がある。仏法の根本義を問う武帝に達磨が「不識」と答えて面壁9年座禅する所で終わる本書は、言葉の傲慢を避けるかに見える。
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「仏に逢うては仏を殺せ」という言葉や大声の一喝、さらに痛棒や素手の力で問答や講話を締めくくる唐の僧臨済義玄の峻厳な禅は、一方で禅が分別知として退ける言葉や意識を無分別知に向ける要素として重視したという。確かに本書に収録された「示衆」(講義録)には、自らの言葉と「祖仏とは君たちだ」と語りかける面前の僧たちへの信頼が窺える。無分別知を体現する「真人」を語る臨済は、禅を非人間化せず、人間の心の内に問いを見出したように思える。宋代に編まれた本書だが、逸話から教えを引き出す他の禅語録よりその教えはダイレクトに響く。
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禅師に「どこから来たか?」と問われたら僧は具体的に答えてはならず、僧に「禅の究極とは?」と問われた禅師が抽象的な答えを返さないような一瞬の問答に、本書は因縁からの解放に向けた厳密なルールを読者に示す。その際伝える言葉自体が分別を作るゆえに、因縁と分別で作られた日常の中で本来の無分別智に出合わせようとする禅は、矛盾を作り、「である」と「でない」を同一と見做す(即非の論理)。自他を作る分別を流動化する試みは、僧が禅師を打つと禅師が褒めたり、頌での批判が称賛と解される場面にも示される(第71-100則を収録)。
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どこから来たのか?と禅師に問われたら、来た場所を言ってはならない。問いと答えの「因縁」から解放されているか否かが問われている。借事問は既に挨拶から禅問答が始まっていることを緊張感と共に伝える。知覚世界は世界自体ではなく人の妄想であると断ずる大乗の考えを言語や仕草にまで徹底する禅は、意識的な思考習慣の外に出ようとする。南泉が円相を道に描くと帰宗が円内に坐り麻谷が拝むのは、円内や中心に注意が向く人の性向を封じ、円外を指し示すからだ。南泉はそれを見て慧忠国師に教えを請いに行く3人旅をやめる(31-70則収録)。
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11-12世紀の北宋の時代に雪竇が100則をまとめて頌を書き、圜悟が垂示、著語、評唱を加えて現在の形になった本書は、漢文と古典的書き下し文から成り、書き下し文には括弧内に補足された訳も挟まれてある。現代語訳はないが問答や頌や評唱のリズムを体感できる。むしろ現代語訳よりも雪竇の解釈の流れや圜悟の本題から外れたり、反対のことをあえて記すような諧謔が伝わり、禅の教科書として編まれながら解釈のズラしによって言外を示す言葉のジレンマに読者を誘うかに見える。本巻は第30則までを収録。じっくり何度も読む、忘れるために。
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roughfractus02
12-13世紀に生きた無門慧開が古人の公案48則をまとめた本書は、日本では江戸期に読まれるようになったという。問いと答えからなる本則、批評(評唱)、讃歌(頌)のシンプルな構成の中で命をかける戦いの修辞が多用され、問答の熾烈さと時折挟まれるユーモアが、読者の意識や自我の訳知り顔を言外から張り飛ばす。この戦いに勝利はない。もしあるなら勝者は勝ったという意識を放棄して悟りに達しているか、悟りの境地を掴んだという意識のさらなる放棄を迫られるからだ。分別する意識の罠に陥れば命はない。纔渉有無/喪身失命(第1則評唱)
singoito2
2023/05/04 06:24

「張り飛ばす」・・・その時は「くそかきべら」の出番ですね(^_^)v

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ブッダの教えの概要を瞑想実践から解説する前著に比して、本書はその中の実践項目である八正道(正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定)に限定して瞑想実践から概説する。輪廻からの解放である「涅槃」が最後に置かれるが、それを目標とするより八正道の瞑想実践の結果と考えつつ読んだ。瞑想は八正道中の7番目の「正念」に相当するので、マインドフルネスをある程度経験すれば、そこで得た気づきと集中(ヴィパッサナー瞑想とサマタ瞑想)による制御の仕方を日常生活で応用実践するための事例として、他の7つの正道が参照可能だ。
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他の世界宗教が文字化された原典を重視するのに対し、待機説法によって語るブッダの考えは、原始仏典を通しても復元が難しいとされる。それゆえ仏教では、ブッダが行った瞑想を追体験し、その考えに迫ろうとする実践的継承の流れができたという。気づきから集中へ、マインドフルネスから禅定へとステップアップする本書にも、著者独自の手続きによるブッダの考えへの接近法が記されている。気づきと智慧の個人面を概説した前著に続き、本書は集中と慈悲に重点を置いて、瞑想から導出されたブッダの社会に対する考えを追体験する諸段階が概説される。
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意識側から無意識を区別した西洋的区分と違い、意識の表層と深層という区分は瞑想実践を必須とした東洋的区分である。小乗仏教由来のマインドフルネスは後者を採る。意識による無意識の制御という西洋的偏見を退け、マインドフルネスを「気づき」と捉える本書は、意識の表層と深層を行き来するヴィパッサーナー瞑想に対する心構えから、実践上での心身に生じる様々な事態への対処法の説明を通して、ブッダが瞑想で得たという智慧と慈愛の「気づき」に向けた実践を平易に概説する。言語中心の表層意識でできたIT社会を再考する一冊としても読める。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2017/02/06(2799日経過)
記録初日
2017/02/06(2799日経過)
読んだ本
3432冊(1日平均1.23冊)
読んだページ
1316452ページ(1日平均470ページ)
感想・レビュー
3432件(投稿率100.0%)
本棚
13棚
自己紹介

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