フランキーの印籠の強さ!服装、言葉遣い、持ち物。英国ではそれで階級を判断する。そして上の階級に属する者は大体のことをパスできるし、身分を配慮してもらえ、意見も通りやすい。イギリスの身分制度が(おそらく現代も)こんなにがっつり社会に組み込まれているのかと、ちょっとこれは別の感想。
この本の結末(Hの手紙)のあと兄は自害してしまうんじゃなかろうか...だってなんとなく「こころ」の前日譚のような雰囲気だもんね。自分が生み出す悩みに潰されていく兄。それにそもそもHとかBとか登場人物の一部を頭文字をアルファベットにしているのってなんだろう。障りがあって名前は伏せます感がヤバくて「こころ」のKみたい。ドキュメンタリーではなく小説なのにH君とかBさんとか名前を伏せる意味って...これヤバい小説ですよっていうテクなのかな、漱石の。
タイトルはなんと読むのだろう。ぎょうにん? しかし一郎兄さん、気に入らないとすぐ暴力ってのはいけません。知識人なら言葉で返しましょう。てか本当に頭がいいのならご自身の感情くらいコントロールしてほしいものだ。まったくDV天国だな、この時代は。
それから人間とそうでないモノを区別するのが「共感力」というのがなかなか興味深い。共感力なさそうな生身の人間なんて、それこそいっぱいいるから検査に引っかかりそうだ。
「クオレ」のエンリコのように、主人公達はあくまで中流〜上流階級の娘達だ。懸命に貧しい子達の肩を持とうとしても、やることなすこと逆に貧しい少女らに矛先が向けられる。なかなかしんどい展開だ。授業計画書をカメの糞で汚した程度の復讐なんて、あんまり軽いんじゃないか。生徒が血を流すくらいの暴力の現場を見た校長も視察官も、そこはスルーしてしまうんだ。なぜ子どもが真剣に訴えるのか耳を貸さない大人達。それは物わかりの良さそうなレオポルトだってそうだ。物語に思いをぶつけるしかないプリスカが辛い。
物語全部に露骨な差別と暴力がまかり通っていて、家族が権力や地位を持っていない子は泣き寝入りしかないのかーと思った。エリザらも結局ルクレツィアおばあさまの権威やレオポルト叔父らにすがるしかない。貧しい子も障がい者も同じクラスで助け合ったあの本家「クオレ」の精神はどこへやら。プリスカらの明るさと可愛く漫画っぽい挿絵が一見楽しげな学園ものに見えるが、かなりリアル過ぎる学校生活物語では。
ただいきなり出だしの1ページ4行目「紫陽花はまだ散っていないのに」には引っかかった。紫陽花は散らない。その形のまま枯れるだけ。冒頭からこんな調べればわかる事を書かれちゃ、一時が万事で、適当に雰囲気で書いちゃったライトノベルではと危惧してしまった。
児童文学、ミステリー、歴史小説などを中心にいろいろ手を出し、財布より本を忘れる方が大慌てする活字中毒者。一時期書き込みをサボっていたのを2023年に復活。
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ただいきなり出だしの1ページ4行目「紫陽花はまだ散っていないのに」には引っかかった。紫陽花は散らない。その形のまま枯れるだけ。冒頭からこんな調べればわかる事を書かれちゃ、一時が万事で、適当に雰囲気で書いちゃったライトノベルではと危惧してしまった。