七瀬や物語の中で強大な力を振るう「意志」さえも読者である私達から見たら「筒井康隆が創り出した登場人物」にすぎないというのもなんとも皮肉めいていますし、読者も何か知らない意志によって日々を過ごしているのかと思うと、とても哲学的で恐ろしい問いを突きつけられる小説です。完結にふさわしいと思います。
お気に入りは百合小説の持つ甘美な雰囲気とゾンビものを融合させた「徒花物語」でしょうか。作品全体として、格好つけた語彙に凝りすぎている感はありますが幻想物が好きな方にはいい作品集だと感じます。
悪い能力者を許さないと燃える一方で、能力で相手を引っ掻き回すことに対して少なからず七瀬自身も快感を抱いているように感じます。また、同じ能力者というマイノリティな立場で同胞に出会えた嬉しさがある一方、その中でも差別がある。七瀬が積極的に関わるようになったことで、被害者にもなるし加害者にもなるという人間特有の心の矛盾が鮮明に描かれていると感じました。
病院事務パート勤務。「面白そうならなんでも」をモットーに、ジャンルは何でも読みます。読書メーターでお気に入りに登録させていただく方は、自分と趣味嗜好が似ているというよりも、感想の素晴らしさや、自分の読書の幅を広げてくれるということを大事にしています。日々読みたい本が尽きません。よろしくお願いします。
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他のお気に入りとしては、「犬小屋」、「花の名前」、「耳」、「酸っぱい家族」です。