すなわち弓術の基をなしている精神的修練は、これを正しく解するならば、神秘的修練であり、したがって弓術は、弓と矢をもって外的に何事かを行おうとするのではなく、自分自身を相手にして内的に何事かを果たそうとする意味をもっている。それゆえ、弓と矢は、かならずしも弓と矢を必要としないある事の、いわば仮託に過ぎない。目的に至る道であって、目的そのものではない。この道の通じるべき目的そのものは、簡単に言ってしまえば、神秘的合一、神性との一致、仏陀の発現である(pp.15-16)。

私は先生のお誉めの言葉を期待した。すると先生はいかにもそっけなく「どうかもう一度」と言われた。二度目の矢は、最初の矢にもまさっているようにさえ、私には思われた。私は昂然として先生の顔を見た。しかし先生は一言もなく歩み寄って、私の手から静かに弓を取り、それを片隅に置いた。先生は無言のまま座布団に座り、周りにだれもいないように、ぼんやりと前方を見ていた。私はそれがどんな意味であるかが分かって、立ち去った。翌日私は、自分が先生の裏をかこうとして深く先生を傷つけたのだということを聞いた(pp39-40)。

そこで私は、「無になってしまわなければならないと言われるが、それではだれが射るのですか」と尋ねた。すると先生の答はこうである。ー「あなたの代りにだれが射るかが分かるようになったなら、あなたにはもう師匠が要らなくなる。経験してからでなければ理解のできないことを、言葉でどのように説明すべきであろうか。仏陀が射るのだと言おうか。この場合、どんな知識や口真似も、あなたにとって何の役に立とう。それよりむしろ精神を集中して、自分をまず外から内へ向け、その内をも次第に視野から失うことをお習いなさい(p.34)」

すなわち弓術の基をなしている精神的修練は、これを正しく解するならば、神秘的修練であり、したがって弓術は、弓と矢をもって外的に何事かを行おうとするのではなく、自分自身を相手にして内的に何事かを果たそうとする意味をもっている。それゆえ、弓と矢は、かならずしも弓と矢を必要としないある事の、いわば仮託に過ぎない。目的に至る道であって、目的そのものではない。この道の通じるべき目的そのものは、簡単に言ってしまえば、神秘的合一、神性との一致、仏陀の発現である(pp.15-16)。

せっかく素晴らしい本を見つけても、精神分析的にいって前の持ち主が肛門期を抜けきれない低脳だったために、半端な値打ちしかなくなっていた、という例を彼女は話した。私は吹き出した。同好の士なら、よくわかる。私も同じことに腹をたててきた。たとえば、ロス・マクドナルドの初期の長編の、見事な美本を見つけたとする。ところが、開いてみると、まるで刷りたてのような美しい本に、どこかの馬鹿がぎっしり書き込みをしているのがわかる。これでは値打ちも半減する(p.176)。