現代日本を象徴する設定に頷くばかり。発想がとても面白いと感じる一方、多分な皮肉は私自身にも向けられているものなのだろうと、ヒリヒリするような心の痛みも感じる。言葉狩りの本質は何か、平等とは何か、そんなことを考えながら読むが、正しいと思うような答えは見つからない。ただ、シンパシータワートーキョーではなく東京都同情塔なのだという一点については、考える余地もなく納得した。まさにそういうことなのだと頷くばかりである。これはありえない未来なのか、近い未来に起こりえるリアルなのか。私には後者に思えて仕方がない。

半導体工場の建設が大々的に報じられ、最先端の半導体開発にも多額の国費が投じられている。果たしてその実態はどうなっているのかを知りたくて本書を手にしたが、まさに知りたかったことが網羅されていて沢山の学びがあった。いまや社会は石油以上に半導体に依存している。そして、その開発・製造はごく一部の企業に独占されている。わたしたちの生活基盤は、相当に脆弱な基盤の上に築かれているのだと理解した。人類の未来を考えるうえで知っておくべき知識だと思う。

人間が愚かな生き物なのか、それとも考える葦と言うべき存在なのか、それは自分次第なのだろう。自分の幸せが、誰かの不幸の上に成り立っているとして、それを知らないまま生きることに罪はないと言えるだろうか。世界を俯瞰して捉えるための基本的な考え方が、実に分かりやすく書かれている。そして、最後の問いを考えさせるという展開ですべてが腑に落ちる。しかし、読み終えてすべて分かったつもりになることが間違いだと自分に言い聞かせる。自分に見えているのは目先のことだけなのだと認識して、客観的な目を養う努力を怠らずに継続したい。

映画PERFECTDAYSを観終えて、余韻の中ですぐに購入。木の命を感じられる随筆は心を豊かにしてくれる。この本を読んでから外を歩くと、大小様々な植物があることに気づく。いままで通り過ぎていた木の肌が気になり、まじまじと観察して調べてしまう。あるいは、家の柱や天井を見て、これはまだ生きている気がだろうかと考えてみる。そうなのだ、大切なものはすぐそこにあったのだ。著者が足を運ぶ場所には特別な木があるが、彼らが教えてくれることは日常の豊かさだと思う。幸田文さんの作品を他にも読んでみよう。

著者の作品はいつでも安心して読める。時代エンタメ小説の王道で、わかっちゃいるけどやめられないという感じでスラスラ没頭して一気読みだった。主人公の菜々はもちろん、出てくる人が素晴らしい人物ばかり。もちろん悪役もまたしっかり悪役で期待を裏切らない。最後の一文字まで読み終えたときの晴れやかな気持ちがなんとも言えず爽快である。螢草というタイトルもまた憎たらしいほど絶妙なので、さっそく検索してみると、過去にNHKでテレビドラマ化されていた。そちらも見るかどうか悩ましいところだ。

現代日本を象徴する設定に頷くばかり。発想がとても面白いと感じる一方、多分な皮肉は私自身にも向けられているものなのだろうと、ヒリヒリするような心の痛みも感じる。言葉狩りの本質は何か、平等とは何か、そんなことを考えながら読むが、正しいと思うような答えは見つからない。ただ、シンパシータワートーキョーではなく東京都同情塔なのだという一点については、考える余地もなく納得した。まさにそういうことなのだと頷くばかりである。これはありえない未来なのか、近い未来に起こりえるリアルなのか。私には後者に思えて仕方がない。