後で思った事だが瑠衣さんは4歳の子供を置いて芸術家肌の男と家を出るが男はすぐに亡くなったって瀬戸内晴美じゃん、と気がついた。『あちらにいる鬼』を書くに当たって随分寂聴さんに随分インタビューしたと書いていたのでこの話も詳しく聞いた事だろう。
登録冊数が素数の1223冊になりました。読んだのは平野啓一郎『本心』です。近未来的装いを被せてAIにより゙母親のアバターを作りVRで見たり会話すると言う物語。母子家庭で母親は懸命に働いて息子を大学に行かせようとするが件の息子が高校時代に妙な正義感から高校を中退してしまう。母親は「自由死」したいと言う。格差社会が行き着く所はこんな場所かと読者は落ち込む。そういえば作者の代表作『決壊』『ドーン』『ある男』は暗い話だった。『マチネの終わりに』が明るめなだけかも。次の素数は1229。ちょっと密です。
仙台に赴任した父親の元を離れてこの祖父母の家に住んだ筈。今回読んで最も作者の本質が出ていると思ったのが「手袋を探す」。戦後直ぐの物が無い時代に気に入った手袋がなかったので手袋無しで冬を過ごした、と言う話から自分自身に物凄いこだわり、上昇指向について赤裸々に書いている。何かの弾みで「徹子の部屋」に出演した時の作者をチラと見た事があるが眉間に縦皺のよった険しい顔つきだった。最後の対談集で相撲の某親方が奇しくも「勝負師」の目付きだと言ったのを思い出した。事ほどさように真剣勝負でなければあんな名文は書けないのだ。
ツマの方がずっと強いと感じているが。さて一方の瑠衣さんはシャンソン歌手。2度の結婚を経て子供は小さい頃に別れたまま。今は独り身。たまたま宝くじが当たったのでそのお金で老人ホームに入ったが住民の派閥争いに巻き込まれてすぐに嫌になって出奔。その出奔に巻き込まれた形の照子さんだが照子さんも良い機会とばかりに乗って来て冒頭のバサマ2人のBMWによる逃走になる。実に痛快である。『あちらにいる鬼』しか読んだ事が無い作者だがこっちの方が読んでて気持ちが良い。
後で思った事だが瑠衣さんは4歳の子供を置いて芸術家肌の男と家を出るが男はすぐに亡くなったって瀬戸内晴美じゃん、と気がついた。『あちらにいる鬼』を書くに当たって随分寂聴さんに随分インタビューしたと書いていたのでこの話も詳しく聞いた事だろう。
「偈」は仏教書によく出てきて、四句から成り仏の功徳を讃嘆する詩。「偈」という漢字は、つくりが「曷」で読みが「カツ」なので、そう読んでしまいますよね。因みに「曷」の意味は「いずくんぞ」です。一休さんのアニメで有名な「作麼生(そもさん)説破(せっぱ)」に近い感じかなぁ。あ、それから『雁の寺』に差別戒名の話は出てこない。禅寺の暗黒面は出たけど。また、お書きのように、差別戒名は曹洞宗に限らず全宗派でやったこと。ただ、1979年の「世界宗教者平和会議」で日本代表の曹洞宗宗務総長が「日本に部落差別は存在しない」と――
の多くは住み慣れたバビロンに残り神官らだけがエルサレムに帰った。彼らはユダヤ人の正統性を記録するため旧約聖書を書いたが天地創世他の物語はバビロンにいる間に学んだメソポタミア起源の話が多いと。白村江の戦いに負けた天智天皇達は私が思っていたよりずっとビビっていた様で都を難波から大津に移したのは軍勢を引き連れて敗戦処理にやって来た唐の将軍を恐れての事だったと。何故大津京なのかと言う疑問が晴れた。ムハンマドがメッカでイスラム教の布教を始めた610年はローマ帝国とササン朝ペルシアが戦いに疲れていてその隙を→
ついてシリア、エジプト、エルサレムを奪う。作者はムハンマドは商人なので合理的だと言う。つまり戦争に勝って相手が帰属すれば相手の宗教や価値観に対して鷹揚で税金さえ払えば良いと言う政策を行う。世界帝国であるローマ帝国も元も基本的に同じ政策を取った。考えてみると当然で敵地では多勢に無勢なので融和政策が最も合理的なのだ。歴史に学ばなかった大日本帝国は価値観の違う民族に日本語を強要し彼らのアイデンティティを壊す政策を行った結果未だにあげつらわれている。事ほどさように歴史を学ぶ事は重要だと作者は言いたいのだろう。
から歌手になり地方を転々とするうちに薬物に溺れてそこで出会ったマイナーと言う男と結婚する。ローリーにはルーシーと言う連れ子が居る。そのルーシー(9歳)が突然トムを訪ねて来る。母からの手紙は途中で無くした。さらに喋らないと言う苦行をしている。ルーシーを誰が引き取るかで一悶着しとりあえずネイサンが預かる。9歳の賢い女の子があらゆるものを引っ掻き回す。出だしの一文は一体何だったのかと言うくらいポールオースターの小説にしてはドタバタしてかつ明るい。面白おっせ。
岡品記念病院が出来る前は多分診療所も無く自然のままに死を受け入れていた土地柄。そこに岡品院長の父親が病院を設立し息子を院長として呼び戻した。父親の死にあたって息子は現代医療の粋を尽くすがそれがかえって酷い事になると言う医療の矛盾。ちなみに白塔大学って「白い巨塔」の大阪大学ですよね。ググると作者の出身校だった。本書は単に善悪を言っている訳ではないが現代医療はちとやり過ぎではないかと言う問いかけです。
といきなり書いてあって新約聖書、マタイの福音書を初めて読む者に「無理っ!」と思わせる元凶になっている部分である。でもこれは歴史を極めて省力化して書いた名文の様だ。さてアブラハムがユダヤ民族の始祖らしい。アブラハムはユーフラテス河の川上1200kmに有るハランと言う町の有力者だった。もちろん異教徒。ある日ユダヤの神の声を聞きカナンの地に行きそこで栄えよと言われる。アブラハムは家族と郎党、財産の家畜を従えて長い旅に出る。カナンの地にはもちろん先住者が居る。当然争いになる。アブラハム自身は周辺で死ぬ。→
ヤコブの子ヨセフは兄弟の争いに巻き込まれエジプトに逃げる。ヨセフの4代後がモーセ。ユダヤ民族は多民族と混じり合わない。神の啓示を得たモーセがユダヤ民族一同を連れてエジプトを脱出する。出エジプトである。追っ手が迫った時に紅海が割れるんである。ドラマチックである。モーセはシナイ山に登り神から十戒を与えられる。そのモーセは40年間カナンの地を前に停滞する。あれこれ汚い手を使ってカナンの地に入り他民族を追い出したのはその子ヨシュアの時である。神の意志だ。ガザを攻撃するイスラエルの残虐さの元はここにあるやに見える。
を含む。どういう構造であるか図示されている。本書は手書きの図で現象を上手く表現していて分かり易い。作者は生化学、構造生物学の専門家であり、CRISPRとはちょっと離れたRNAの研究をしていた。ところがこの回分構造とRNAとは相性が良いとわかる。結果としてcrRNAとtracrRNAとcas9タンパク質を用いてDNAの任意の場所を切断出来ると言う発見である。遺伝子改変の手間が大幅に軽減する。それを使って農作物や家畜の改変も゙始まっている。遺伝子改変作物と言うとGMO作物が有名で賛否両論がある。→
ところがCRISPRはそれどころではない影響力が有る。要するに誰でも簡単に出来てしまうと言う特徴がある。CRISPRで改変した豚の臓器を人間に移植すると言う事も何十年か後には行われるだろうと書いたが7年後の現在実施されてしまった。作者はこの技術で優生学が再現されるのを恐れる。CRISPRは胚細胞に施すとその子供を設計出来てしまうと言う可能性が高い。原爆を開発したオッペンハイマーと同じ事をしたのではないかと言う気持ちが本書を書いたベースにある。が、賽は投げられてしまった。
ガラスの文鎮というニックネームですが文房具フェチな所があってそういう意味の文鎮です。文鎮と呼んでください。嫌いな作家は百田尚樹なのでそのレビューだけはナイスをパスします。悪しからずご了承ください。
(好きな作家、敬称略、順不同)
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ツマの方がずっと強いと感じているが。さて一方の瑠衣さんはシャンソン歌手。2度の結婚を経て子供は小さい頃に別れたまま。今は独り身。たまたま宝くじが当たったのでそのお金で老人ホームに入ったが住民の派閥争いに巻き込まれてすぐに嫌になって出奔。その出奔に巻き込まれた形の照子さんだが照子さんも良い機会とばかりに乗って来て冒頭のバサマ2人のBMWによる逃走になる。実に痛快である。『あちらにいる鬼』しか読んだ事が無い作者だがこっちの方が読んでて気持ちが良い。