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2024年5月の読書メーターまとめ

クラムボン
読んだ本
11
読んだページ
2094ページ
感想・レビュー
11
ナイス
337ナイス

2024年5月に読んだ本
11

2024年5月のお気に入り登録
1

  • 逢沢伊月

2024年5月のお気に入られ登録
2

  • アンジー
  • 逢沢伊月

2024年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

クラムボン
「博士の愛した数式」を読んだ時に、小川洋子のお薦め本として読み友さんに紹介していただいた。二篇の中編は、一見小さな日常を描いてるように見えるのだが、それが閉じられた世界の為か、正常な感覚を麻痺させ、次第にズレが生じるような気がする。しかし二篇とも物語の行き着く先は書かれていない。「薬指の標本」では途轍もない悪意が充満してるのでは無いかと心配になる。尋常ならざる結末が想定される。一方「六角形の小部屋」では善意なるがゆえに、逆に危うさを感じる。そして結末がハッピーエンドになるとは思えないのだが…。
が「ナイス!」と言っています。

2024年5月の感想・レビュー一覧
11

クラムボン
第1回芥川賞の審査で太宰が《日本にまだ無い小説》と自負する「道化の華」が候補から外れ、師の佐藤が《採るにも足らぬと思はれる小品》「逆行」が候補になる。それは川端の《「道化の華」の方が作者の生活や文学観を一杯に盛っているが、私見によれば作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった。》の選評に表れている。これには太宰が川端に嚙みついた。「たいへん不愉快であった。まるであなた一人で芥川賞を決めたように思います。…きっと誰かに書かされた文章に違いない。」…これは駄々っ子の言い掛かりとしか思えない。
クラムボン
2024/05/30 20:41

だんぼさん、私としては、これでもオブラートに包んだ表現なのです。

だんぼ
2024/05/30 20:42

「これでもオブラートに包んだ表現なのです」わかります。

が「ナイス!」と言っています。
クラムボン
昨日読んだ佐藤春夫の「或る文学青年像」は、太宰の「創生記」について嫌悪を露わにした反論であった。ただ「創生記」は評者の間で話題になり、佐藤も「倫理性を暫く無視するとすれば面白く出来てゐる… 」と言う。しかし私には終わり近くまで、さっぱり分からなかった。ただ肝心なのは最後の部分(佐藤と太宰の間で繰り広げた芥川賞顛末記)だろう。佐藤の考えでは、太宰が空想的な物語を拵え、最後の部分までも虚構にした。…だとすると、太宰は師の佐藤を敬いながらも、甘えと狡さで巧妙に立ち回り、厚顔無恥に不誠実を決め込んだと言える。
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クラムボン
太宰の「富嶽百景」には、御坂峠の茶屋に滞在した時に文学仲間らが尻込みする中、一人の若者が訪ね来る場面がある。《太宰はひどいデカダンで、性格破産者だと佐藤春夫先生の小説に…》その小説がこの作品か? 芥川賞への異常な愛着と選考委員で師と仰ぐ佐藤への事実を歪曲した妄想を小説にした太宰の「創生期」について、太宰の不徳に憎悪し呆れ、その憤懣を書き連ねる。第1回芥川賞で佐藤は「道化の華」を推薦したが、予審⁈の瀧井川端両氏からは無視され候補作から外れる。《まるで採るにも足らぬと思はれる小品》「逆行」が候補作となるが…。
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クラムボン
太宰が師と仰いだ井伏鱒二の選んだ戦前の代表的な10短編を年代順に収めている。大きく「自伝的なもの」と「史実や伝承や原典があるもの」に分けられそうだ。若い頃に読んだ新潮文庫の「走れメロス」、最近読んだ「晩年」などに収められた作品も多い。ただ読んだ時期によって作品の印象はかなり違う。若い頃は「走れメロス」と「駆け込み訴え」には相当痺れて頭の中で反芻したものだが、太宰を読み始めた現在は、自伝的な苦渋に満ちた作品の中でも、何処かゆとりを感じる「富嶽百景」や「東京八景」が好みとなりつつある。
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クラムボン
デビュー当時の陳さんは、第一線のミステリー作家だったことが伺える作品集だ。第一短編集の「方壺園」から全6篇、第三短編集の「紅蓮亭の狂女」から三篇を採った2018年の出版なので陳さんの没後だ。一見したところは歴史小説風。舞台はやはり中国が多い。ただムガル帝国時代のインドや戦中のスマトラや現代日本の作品もある…広くアジア各地に渡っている。個人的には、素材も小説自体も魅力十分なので、推理小説の形に拘らない方が良かったと思う。執筆時の1960年代は推理小説が流行っていた時代なので、そこいらも影響したのだろうか。
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クラムボン
横光利一は川端康成のエッセイで伊豆湯ヶ島の宿に滞在中に訪れる客の中で最も気が置けない友として登場する。お互い菊池寛の世話になる同好の士だ。今回初めて読む横光作品は、妻の結核療養のため海の見える地で夫が甲斐甲斐しく看病する。快方の望みは無い。妻は天性我がままで夫により献身的であれと強く迫る。されど夫はその苦痛を舐め尽くそうと決心する。淡々と看病する対価が、妻への冷めたい理詰めで隙が無い言葉となる。それがある時点で変化する。いとうあつきの絵もガラリと変わる。それがタイトルの「春は馬車に乗って」になったようだ。
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クラムボン
「夜叉ヶ池」の舞台は現代の越前と美濃の国境。一方「天守物語」は江戸時代の播州姫路。時代も場所も違うが、天守夫人の富姫が夜叉ヶ池の主・雪姫と懇意であることが、富姫の口から漏れる。そして夫人の妹亀姫が夫の首桶を携えて奥州岩城から五百里を半日で移動する。城主の首が姉への土産なのだが…そう、姉妹も雪姫も物の怪なのだ。夫同士も兄弟なのも何かの因果か?…なので二つの物語は繋がっているようだ。この二篇は戯曲、なおかつ鏡花特有の言い回しもあって分かり辛い。特に「天守物語」は舞台で見てこその作品ではないか。
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クラムボン
先日「奈良の宿・日吉館」を読んだ。そこで会津八一のひらがな書きの歌の「書」を見た。明らかに印刷された活字から受ける印象とは違った。以前、八一の歌を読み友さんに紹介していただいたが、…その時は縁遠かった。しかし「書」から何か詠むヒントを得た気がした。「會津八一と奈良」―歌と書の世界―では、百十余首も八一の書が読める。歌は古(いにしえ)の言葉が使われ、意味が取り辛い「ひらがな」で書かれる。なので二重の壁があるのだが…。其れさえ捕まえれば、古都への並外れた愛と大らかな歌風もあって、八一の世界に浸ることが出来る。
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クラムボン
「博士の愛した数式」を読んだ時に、小川洋子のお薦め本として読み友さんに紹介していただいた。二篇の中編は、一見小さな日常を描いてるように見えるのだが、それが閉じられた世界の為か、正常な感覚を麻痺させ、次第にズレが生じるような気がする。しかし二篇とも物語の行き着く先は書かれていない。「薬指の標本」では途轍もない悪意が充満してるのでは無いかと心配になる。尋常ならざる結末が想定される。一方「六角形の小部屋」では善意なるがゆえに、逆に危うさを感じる。そして結末がハッピーエンドになるとは思えないのだが…。
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クラムボン
平安時代の中期、貴族が最も輝いていた世界を描いて新鮮だ。「まひろ」の名で登場する吉高由里子が演じる紫式部は一般的な印象とは違い、ホンワカして親しみ易い。そして今回は柄本佑の藤原道長の外にも、文学上では有名だが、実はあまり知られていない貴公子や公卿が登場する。三舟の才の藤原公任(きんとう)は町田啓太、書家として名高い藤原行成は渡辺大知、そしてお笑いからは、ロバート秋山が小右記を残した藤原実資を、はんにゃ金田が当代随一の文化人と言われた藤原斉信(ただのぶ)を演じる。意外なキャスティングだがとても興味深い。
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クラムボン
梅原猛著作集第13巻は、柿本人麻呂が晩年に石見国に左遷され、最期は水死刑を賜った論を展開した「水底の歌」…それ以降の論文や講演をまためた「万葉を考える」が前半の2/3を占める。後半は万葉集において、未だに謎の多い「人麻呂歌集」について斬り込んだ「歌の復籍」の第1部と第2部を収める…それは次巻に続くのだ。「水底の歌」を読んだのは遠い昔だが、作者の熱量に只々圧倒された。そしてこの著作でもそれは変わらない。それまで当然と考えられていた説を、徹底した論理の展開によって覆そうとする、正に気迫の書だ。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/01/05(2364日経過)
記録初日
2017/11/02(2428日経過)
読んだ本
925冊(1日平均0.38冊)
読んだページ
188048ページ(1日平均77ページ)
感想・レビュー
652件(投稿率70.5%)
本棚
66棚
性別
現住所
静岡県
自己紹介

2018年から利用しています。

以前はパソコンで読書記録をして、気の向いた時には覚え書き程度の感想を書いてました。

読書メーターの便利さを知ってからは、こちらにシフト。初めは気になった方のレビューを読むだけで十分だったのですが、そのうちに感想を書きたくなった。それが3年ほど前です。


【読書ジャンルについて】
若い時は、歴史とミステリー小説が中心。

歳と共に歴史好きは純然な方向に向かい、一方ミステリーは長い間離れていましたが、最近になってポツリポツリと読み始めました。

昔から地理や地図が好きだったので、次第に風土や紀行に関心が及ぶようになりました。

純文学そのものは苦手なのですが、文豪作品は文学とは別次元で文豪その人の生き方、時代背景や社会に強い関心があります。

また、若い時は全く興味が無かった《古典・詩歌・絵本》の面白さに、最近目覚めてしまいました。


【好きな作家】
特別な存在なのが、司馬遼太郎。氏の考えが一つの指標でもあります。

歴史:藤沢周平、池波正太郎、吉川英治、山岡荘八、陳舜臣、井沢元彦、半藤一利、永井路子、塩野七生

ミステリー:京極夏彦、内田康夫、島田荘司、大沢在昌、A.クリスティ、E.クイーン、A.C.ドイル、R.チャンドラー、C.デクスター

他:五木寛之、村上春樹、井上靖、井上ひさし、阿刀田高、浅田次郎、松本清張、筒井康隆、高橋克彦、丸谷才一、梅原猛、大岡信、宮沢賢治

読メ利用後:赤羽末吉、芥川龍之介、安野光雅、川端康成、堀内誠一、アンデルセン

(2023/1/8)

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