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2024年11月の読書メーターまとめ

左手爆弾
読んだ本
7
読んだページ
1728ページ
感想・レビュー
7
ナイス
69ナイス

2024年11月に読んだ本
7

2024年11月にナイスが最も多かった感想・レビュー

左手爆弾
本好きなら誰しもが少なからず感じる題名通りの経験から、読書の社会史を描き出す。本をたくさん読むべきという価値観は明治期後期に始まった。大量の書籍が出回り、黙読という習慣が拡がり(句読点もこのときにできた)、人々は「修養」を求めて読書をした。『西国立志編』はその典型で、未分を問わず、努力によって成功した人たちのエピソード集という自己啓発本的な要素の本だった。一方で、教養エリート層はそうしたビジネス的な「成功」とは距離をとった読書をしていた。
左手爆弾
2024/11/13 20:22

ビジネス書や自己啓発本が売れる一方で、日本人の読書離れが叫ばれはじめる。筆者は自己啓発書はノイズがない本であると指摘する。政治や戦争のような社会は変えられない一方で、自分の部屋は片付けられる。このような「コントロール可能なもの」だけを扱うのが自己啓発本の特徴であるという。同様に、インターネットも求める情報だけをノイズなく伝える手段である。このようなノイズのない情報群は、過去の蓄積を必要としないという点で、教養や知識と区別される。

左手爆弾
2024/11/13 20:25

読書とは、そうした意味でのノイズも含めて摂取することである。ところが、現代の労働は自己実現なども組み込んだ全身全霊を求め、社会全体のことを必ずしも求めてこない。ひとつのことに全身全霊でコミットメントするのではなく、ほどよく色々なノイズを摂取しながら生きていく社会こそが、働きながら本が読める社会である。

が「ナイス!」と言っています。

2024年11月の感想・レビュー一覧
7

左手爆弾
シュバイツァーといえば、密林の聖者と呼ばれ、世界偉人伝的な人物として知られる。しかし、本書は文化人類学者よろしくランバレネの現地住民を観察しているという感じが強い。黒人のことをあからさまに差別しているわけではなく、「妻を買う」ような彼らの習慣にも理解を示し(127頁)、黒人も白人も関係なく兄弟であると述べる(97頁)。その一方で、「わたしはお前の兄弟である。しかしお前の兄である」(129頁)という言葉に象徴される序列は捨てがたかったのだろう。ここはポストコロニアルな視点で読み解くべきだろう。
左手爆弾
2024/12/02 22:04

その他、材木商の話や黒人社会において労働力を得る話、象が食料を食べてしまうことなど、興味深いアフリカの話題が語られる。最も興味深かったのは、黒人は決して怠惰ではないが、あまり働かないという話だ。要するに、彼らは食べるのに必要な金が手に入ると、それ以上働こうとしない。そこで白人たちは税金をとったり、酒やタバコや化粧品などを持ち込むことにより、金を必需品にして黒人を労働者にさせようとする。資本主義の成立に立ち会っているような話である。

左手爆弾
2024/12/02 22:09

また、アフリカにいて自分を正しく維持するためには、精神的に「真面目な本」を読むなど、教養が大切であるという話は含蓄が深い。アフリカの生活は「散文のよう」であるという言い回しはなるほどと思う。白人商人がベーメの『アウローラ』を読んでいるなど、アフリカだからこそ向き合える本もあるのだろう。

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左手爆弾
「論理的」とは、絶対的な正しさを担保した言い方のようにも見える。しかし、筆者は(少なくとも)4つの論理の型が存在すると指摘する。①経済の論理(アメリカ)、②法技術の論理(イラン)、③社会の論理(日本)、④政治の論理(フランス)である。これは論理の正しさというより、論理を向ける相手や目的によって表現方法が変わるためである。これらが主張-根拠-結論型のアメリカの論文技術ばかりが問題になるが、社会の中で合意を作ったり、共感を呼ぶためには、このやり方だけを絶対視するべきではない。
左手爆弾
2024/11/28 15:06

フランスのディセルタシオンでは、弁証法的な形で対立の調整を目指す。双方の主張を統合し、より大きな問題へとつなげ、説得よりも合意に繋げていくことに力点がある。イランのエンシャーでは、自分で結論を出すのではなく、聖句などで結ぶのが定番となる。日本の入試などではしばしば心情を問う問題が出題されるが、これは「綴方」や感想文という伝統から作られる。

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左手爆弾
アラカルト本なので、アラカルト的に読んだ。聖徳太子の「和」が強調されるのは、1930年代になってから。山崎闇斎は奇人エピソードが多く残っているが、朱氏の崇拝者であり、近年では朱子学から神道に転向したわけではなく、あくまでも朱子学の道を貫いたとみなされている。『葉隠』もまた、日清戦争後のナショナリズムが盛り上がる中で評判を得ていく。宣長に対して「それは老荘思想では?」という批判は当時から存在した。もともとの儒教では親子関係が第一だったのに対し、日本の儒学では君臣関係や大義名分論が前面化する。
左手爆弾
2024/11/22 09:26

家永三郎は教育勅語の中にある種の近代性を見出し、その点を高く評価していた。教育勅語に書かれている「國體」は、会沢正志斎をはじめとする水戸学系の國體とはニュアンスが異なる。和辻は欧米にも通じる普遍的な倫理学を作ろうとしたが、海外では残念ながら日本の倫理学として受け止められている。

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左手爆弾
議論といっても、話し合いというよりは(入試等の)小論文に関する本である。それでも、日本のナイーブな議論に関する見方を粉砕してくれる。「正解はない」とか「人それぞれ」というのは議論の着地点ではなく出発点であり、あえて波風立てるような状況こそが議論にはふさわしい。その中で、勝ち負けにこだわらず、真理の探究に取り組むことが議論である。「人それぞれ」という言い方はこの真理の探究という議論における暗黙のルールを無化することになる。
左手爆弾
2024/11/22 09:09

後半は議論の型についての説明が主題になる。議論は「問題・解決・説明」の型で考えることで、自分の立場や好みから中立的に議論の良し悪しを判断することができる。本筋と関係ないところで、「常識・繰り返し・強調」なども使われることはあるが、まずは論理の骨組みを見つけることが大切である。このようにしていくと、中沢新一はチベットの神秘について語っているようで、伝統的なヨーロッパの実存主義を引きずっているし、大江健三郎の議論には共感はできても納得できないというようなことがわかってくる。やっぱり、小論文のための本だな。

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左手爆弾
本好きなら誰しもが少なからず感じる題名通りの経験から、読書の社会史を描き出す。本をたくさん読むべきという価値観は明治期後期に始まった。大量の書籍が出回り、黙読という習慣が拡がり(句読点もこのときにできた)、人々は「修養」を求めて読書をした。『西国立志編』はその典型で、未分を問わず、努力によって成功した人たちのエピソード集という自己啓発本的な要素の本だった。一方で、教養エリート層はそうしたビジネス的な「成功」とは距離をとった読書をしていた。
左手爆弾
2024/11/13 20:22

ビジネス書や自己啓発本が売れる一方で、日本人の読書離れが叫ばれはじめる。筆者は自己啓発書はノイズがない本であると指摘する。政治や戦争のような社会は変えられない一方で、自分の部屋は片付けられる。このような「コントロール可能なもの」だけを扱うのが自己啓発本の特徴であるという。同様に、インターネットも求める情報だけをノイズなく伝える手段である。このようなノイズのない情報群は、過去の蓄積を必要としないという点で、教養や知識と区別される。

左手爆弾
2024/11/13 20:25

読書とは、そうした意味でのノイズも含めて摂取することである。ところが、現代の労働は自己実現なども組み込んだ全身全霊を求め、社会全体のことを必ずしも求めてこない。ひとつのことに全身全霊でコミットメントするのではなく、ほどよく色々なノイズを摂取しながら生きていく社会こそが、働きながら本が読める社会である。

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左手爆弾
著作権の基礎がわかる本。著作権は無体物に対して発揮され、媒体を変えても残り続ける。著作権はアイデアを保護しないし、料理やダンスについてもほとんど保護されない。基本的に、契約の取り決めがない場合は著作権法が適用される。YoutubeやTiktokで歌ったり踊ったりで楽曲が使えるのは、サイト側が一括契約をしているからである。その他、学校における個別の事例を丁寧に取り上げているため、マニュアルとしても利用できる。
左手爆弾
2024/11/07 14:44

学校での使用は、授業による利用はもちろんのこと、学習指導要領に書かれている範囲内であれば基本的に著作権法の例外となる(著作権法第35条)。ただし、「いつか役に立つかもしれない」という理由でのコピーは禁止である。また、部活動などの課外活動では非営利の活動ということで、一部制限を免れることができる(第38条)。コロナ禍に定められた第35条の例外規定は、あくまで授業利用に限るため、注意が必要。

左手爆弾
興味深いが、それこそ「雑食」という感じの本。人間は雑食を選択したことで様々な食物を選んで食べるようになった(食についての好みが強くなった)。昆虫食は食糧問題への答えなのだが、文化的な嫌悪も含めて課題は大きい。母親のお腹にいるときや、生まれた直後に空腹な子供は、将来的に太りやすくなるとされる。家族団らんは高度経済成長期に創られたあり方であり、それ以前は家族同士で食事中に会話をすることは稀だった。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2010/12/16(5123日経過)
記録初日
2010/12/16(5123日経過)
読んだ本
1648冊(1日平均0.32冊)
読んだページ
452582ページ(1日平均88ページ)
感想・レビュー
1248件(投稿率75.7%)
本棚
0棚
性別
職業
アーティスト
自己紹介

 良い本は「良い」と誉め、悪い本は「悪い」と徹底的に批判する。これによって日本の出版文化がもっと豊かになれば、と考えています。
 もちろん、個人的な傾向性(好み)はあります。文学ならばあっさり話が進んでいくものより、物語の構造や思想がはっきりと現れているものが好きです。評論なら、事例ばかりを並べるものより、それらを分析し、総合する理論を内包しているものが好きです。なので、時々いじわるな感想を言いすぎてしまうこともあるのですが、気になるところがあれば、反論をお待ちしています。

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