直木賞候補になったときから気になっていた本をやっと読みました。初読み作家さんです。ちょっとしたことを疑問に思うことが見過ごされそうになっていた真実を白日の下に晒し、身勝手な保身から出た嘘が暴かれる連作短編でした。そして、疑問が解決しても何かスッキリしない、後味が良くない物語でもありました。そんな雰囲気が米澤穂信さんの世界に似ているようにも感じました。

直木賞候補になったときから気になっていた本をやっと読みました。初読み作家さんです。ちょっとしたことを疑問に思うことが見過ごされそうになっていた真実を白日の下に晒し、身勝手な保身から出た嘘が暴かれる連作短編でした。そして、疑問が解決しても何かスッキリしない、後味が良くない物語でもありました。そんな雰囲気が米澤穂信さんの世界に似ているようにも感じました。

最終話の「星原の観測者」が一番刺さりました。最後に、不器用な天才の人間味ある姿が見えてほっとします。また、それぞれの短編の天才たちがその後どうなっていくのかが気になりましたけれど、書き下ろしの最終話で第三話の勇仁と第四話の翔琉の活躍がちらっとだけ垣間見えて嬉しかったです。

前作でウイグル問題に切り込んだと思ったら今度は在日米軍、中山七里さんの勇気に”あっぱれ”です。実際にこんな事件が起きたらこんなにうまくはいかないでしょうけれど、高頭冴子の行動にはいつもながら気分がスカッとします。ミステリーとしてみれば今一つかもしれませんが、このシリーズはこれでいいんじゃないのと思います。

モデルとされている河野多恵子、大庭みな子、瀬戸内寂聴(晴美)の３人の女性作家の思い出話のような本でした。かつて「女流」と呼ばれ、それに反発しながらもしたたかに受け入れてきた３人の大御所への山田詠美さんの尊敬の念、憧れ、そして懐かしむ心が感じられました。

凄い本を読んでしまった・・さすが月村了衛さんですが、それにしてもよくここまで書いたものだと思います。第一部は騙されないで！行っちゃダメ！って叫びたくなる、でもそれは今だから言えること、私もこどもの頃に「地上の楽園」という言葉を聞いた記憶があるくらいですからきっと多くの人がそう信じていたのかもしれません。第二部はもう読むのを止めたくなるような辛い場面の連続、人間はここまで残虐になれるものなのかと悲しくなります。そして「終幕」、ここを読んで月村さんがどんな思いでこの小説を書いたか、よく分かりました。

第三弾、面白かったですけれど、痛快さはあまり感じなかったかな。それよりも最近の世の中の出来事を風刺しているような中味が印象に残り、これだったらわざわざ莉子を登場させなくてもいいような気がしました。莉子と城島も結婚したことだし、このシリーズもそろそろ潮時かもとも思いますが、次は「ミセス・パーフェクト」として続くのかな・・