あえて本書の意見に則るなら、90年代には社会現象として「終わりなき日常」に対する大きなイベントがあったと言えるが、それ以降では社会現象とまで言わしめる出来事はなかったように感じる。「まったり生きる」、等身大の自分を求める人や、「輝かしい生」を求める人は、今では簡単にインターネットで自らに近しいロールモデルを知ることができる。本書で問題とされた承認の不在は、インターネットの登場によって解決され、細分化が進んだように感じる。
「輝かしさへと疎外されない」がゆえに「輝かしさからも疎外されない」生き方は、みせかけの「輝かしさに内包する」装置の登場によって90年代よりも膾炙しているのではないか。 しかし、人間の「特別になりたい」という欲求は根源的なものであるのか、どのような経緯でこれほど多くの人が抱く感覚であるのか疑問に感じた。
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