毎回毎回、図書館の仕事の大変さに頭が下がります。書店や利用者の対応に精神を消耗し、せめて同僚との関係が良好であれば働きやすいが、やはり様々な人がいるからそうもいかないのが現実。そんな中、承認欲求が強くストレスの権化のような茉莉野を切り捨てるのではなく活かし、さらにお互いにメリットがあるよう対策を講じた石平少年の成長が著しい。今は非対面のものが多くなってきてるが、人は人に揉まれて成長できることも多いと改めて思う。それにしても、茉莉野を擁護するような発言をした松浦さんに対しての石平少年のツッコミが秀逸で。

夢見た生活を送っているはずなのに、今のデンジは空虚。望んだものを手に入れたのに、満たされないのはなんでなんだろう。

こちらもあなたの庭を侵しはしない。そのかわり、俺の庭に決して入ってくれるな。完全な拒絶。踏み込むことができない領域。だが植物との愛の間には限界があるのではないか。“知らないくせに”と他者に対しての諦めと、意図せずとも蔑んでもいるのだろう。人との間には共感も理解も必要になる。他者との深い関係を望むなら、彼らだけの甘美なる庭は久遠ではない。

心がなければ苦しみも悲しみもなく、辛くもない。しかし、心を失ったまま永遠を生きる意味はあるのだろうか。それは本当にユートピアなのか。主人公が下した決断は想像以上に過酷で絶望的なのかもしれない。しかし彼女の母が言うように、心がそこにあればどこに行っても失うものは何もない。心はいつも自由だから。

何年ぶりの再読だろう…。