著者の意図とは違うかもしれませんが、私は「生き急ぐ必要なんてない」というメッセージをこの作品から受け止りました。とくに気に入ったのはこんなセリフですね。「周りの目ばっかり気にせんでさ、好きなこと見つけて堂々と生きてりゃいいんよ」
「人は死んでも、人の言葉は死なない」ってフレーズにノックアウトされた!不自由を自覚してこそ自由を希求できるという考えも魅力たっぷりですね。極めつけは最後の手紙。震えたわ~。
勉強不足な私は著者をライトな書き手だと思い込んでいましたが、全然違いますね。境界知能について主人公が感じる「何とかならないのだろうか」というくだりは著者の心情そのものだと受け止めました。どこに救いを見いだすのか?本当に難しい問題ですね。
進水時には給糧艦として世界最大だった『間宮』。主人公が祖父の足跡を追う中で辿り着いたその船は、洋上の食糧庫であり、食品工場であり、料理店でもあったのだとか。軍艦でお菓子を作っていたという史実はとても興味深いものでしたよ。
世の中にはどんなに努力や誠意をみせても通じない相手が存在するという悟りは、社会を生き抜く上でたぶん不可欠。その点で魅力たっぷりの教本であり、かつエンタメ性の面でも抜きん出ていましたよ。絶対に覚えておきたいと感じたのはこんな心情ですね。「どす黒い感情に巻き込まれたくない。その気持ちを手放したら、人間として何かが終わってしまう気がする」
リアルすぎて五感で楽しめたような印象です。「私、罪を滅ぼしたいと思ってる」からの連想には笑った!試合でフェイントを予測した瞬間の「頭の回路が、本来通るべきルートを越えて、始点と終点で突然繋がったみたいな感覚だった」という描写も冴えてたな~。ここからエースのスパイクにつながる美麗な軌跡が、まざまざと目に浮かびましたよ。これはたぶん本気で打ち込んだ人にしか書けない作品。途中で主人公の振る舞いにイラっとする場面があるかもしれませんが、そこで切ってはダメ。何度でも言います。激アツの最終章は必見ですからね!
少年が漫才の相棒に誘われ「丁重にお断りさせてもらうわ」と言った刹那の「そのお断りをお断り」という返し。神すぎる。ぜひ青春路線で勝負して欲しいと思う作家さんですね。
尊敬できる先生、高め合えるライバル、目標となる先輩、これらは部活の”三種の神器”かも?と読みながら思いましたよ。こうした課外活動は、好きを掘り下げたり、新しい自分を見つけるのにはもってこいですね。
関東大震災の折にアメリカから救援物資が大挙して届いたことや、戦時下に学校制服が統一された話などはこの作品で知りました。戦後の凄惨な事象なども・・。覚えておくとどこかで役立ちそうだと感じたのは、こんなセリフですね。「初めて会うた人と仲良うなろうと思うたら、その人のやってることを手伝うことじゃ」
主人公に運は無かったかもしれませんが、出会いには恵まれていた印象。それは頑張り屋さんだからこそ贈られた特別なギフトのようでした。印象に残る言葉はたくさんありましたが、一つだけ挙げるとこれですね。「世の中に放りだされても生きのびていけるだけの力を、どうにかして身につけるんじゃ」
終盤の引き込む力が凄かったですね。作中にいいセリフはたくさんありましたが、特に気に入ったのがこれですね。「この先、君たちがつまづいたときの杖になるのは、悔しかった記憶だ」
主人公からは太陽のように思われていた、ガーナハーフの少年の葛藤もみどころ。大人げない大人たちのドタバタ感は笑いを誘い、期待を重く感じる子どもたちの心模様は共感を呼びそうです。こんな言葉、刺さらないわけないかと。「目標が無いんじゃなくて、目標を作りたくない。かなわないのに、努力するのが怖いだけ」
『時計坂の家』に魅せられて児童書ワールドに!
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少年が漫才の相棒に誘われ「丁重にお断りさせてもらうわ」と言った刹那の「そのお断りをお断り」という返し。神すぎる。ぜひ青春路線で勝負して欲しいと思う作家さんですね。