表題作に他１編。 「十二月の都大路上下ル」女子全国高校駅伝で急遽走ることになった絶望的に方向音痴な選手がレース中に目撃したのは… 「八月の御所グラウンド」夏の早朝に御所グラウンドでひっそりと行われる草野球大会にあるきっかけで参加することになった大学生が遭遇する奇妙な体験… 冬と夏の京都で起こる奇天烈な出来事。思ってたよりライトな感じで読みやすかった。

1930年代のアメリカ。流れの労働者として暮らすおバカなレニーとしっかり者のジョージ。いつもレニーが何かしら問題を起こしてしまうため農場を転々としている２人はある農場で働き始め… 序盤から不穏な兆しがあり哀しい結末を迎えてしまうものの名作と呼ばれるだけはあった。物語を通じて当時の社会情勢や問題が透けて見える。2人が懐いた夢に一時だけでも希望が差したのがまた何とも切ない。

ブロックチェーンやメタバースにSNSや宇宙開発など主にテクノロジーにまつわる話が全８編。 表題作「暗号の子」。元は自助グループとしてオンライン上でブロックチェーン技術を用いて運用されている分散型自律組織クリプトクリドゥス。新たなコミュニティの形として政府機関もモニタリングしていたが、参加者から殺人事件を起こした者が出てしまう。そこを心の拠り所にしていた主人公は思わぬかたちで矢面に立つこととなり… ジャンルとしてはSFなのだが現在の技術に準拠した内容となっている。

「浮かびゆく男」体型や健康状態に変化は無いが体重が減り続ける奇妙な現象に見舞われた男の話。 「コロラド・キッド」ある島の小さな新聞社でそこを営む2人の老人がインターン生に彼らがかつて遭遇した未解決事件の全容を語って聴かせる会話劇。 「ライディング・ザ・ブレッド」母の急病で実家に帰るためにヒッチハイクをする大学生が体験した奇怪な出来事は現実か？それとも幻か？。 浮かびゆく男はどこ清々しさがあった。コロラド・キッドは少し消化不良な感じ。ライディング・ザ・ブレッドは１番スティーブン・キングっぽい。

表題作に他１編。 「十二月の都大路上下ル」女子全国高校駅伝で急遽走ることになった絶望的に方向音痴な選手がレース中に目撃したのは… 「八月の御所グラウンド」夏の早朝に御所グラウンドでひっそりと行われる草野球大会にあるきっかけで参加することになった大学生が遭遇する奇妙な体験… 冬と夏の京都で起こる奇天烈な出来事。思ってたよりライトな感じで読みやすかった。

主人公の八五郎は声をあげながら行商をしていても誰にも気付かれない程に影が薄い。そんな八五郎はある夜の呑んた帰りに巷で噂の幽霊剣士を目撃するが、その正体は長屋で隣室の源次郎だった。それを機に八五郎は隣人・知人たちの裏の顔を次々と知ることになり… 少し人情もの要素もありつつ、全体的に話は軽快に進みサクッと読めて面白かった。

全５編。ちょっとした軌跡を描くお話とファンタジーに猫を添えて。塾講師の青年が主人公の話と商店街の小さななレストランで漫画家が夢だった祖父を想う少女の話が特に好きだった。

出版社で労務として働く主人公の浜野は40代で充実感は無いが充足した生活を送り日々を平穏に過ごすことを旨としていたが、あるきっかけで若手編集者の平木と知り合った事で平穏な日常が乱れ始め… 自称ルーティンゾンビの浜野が破天荒でアクティブな平木に引き摺り回される様子が滑稽でもあり同情を禁じ得なくもある。自らの日常に意味を見い出せ無かった浜野は平木や平木を通じて知り合ったミュージシャンのまさかとの交流で少しずつ前向きになっていく。