形式:文庫
出版社:文藝春秋
形式:単行本
形式:Kindle版
兵達が遺した資料からは、兵糧が欠乏する様子と、便衣兵への恐怖と憎しみが窺える。大量の中国人捕虜を前にして、それらがないまぜになった結果この事件に繋がったのか。歴史は繰り返すという。またもし同じ状況に陥ったら日本は(あるいは中国は)どうするのだろうか。最近も日本人学校の生徒が襲われたりして不穏な状況になっているし、台湾のこともあるし、不安でならない。
歩兵第65連隊は福島県の郷土連隊だが、私も母方が福島県にルーツがあるので思い入れがある。同連隊は私も一号作戦の論文に取り上げたが、陸軍の中堅参謀にして作戦立案者の服部卓四郎大佐が連隊長として赴任している。本書に南京事件関係の本が引用された藤原彰先生も別部隊で作戦に参加したが、『餓死した英霊たち』にも65連隊は登場している。
たしか『鉄路の果てに』が筆者の戦争関係本らしい。樺太ではないがシベリア抑留関係らしい。訂正します。
直近に「インパール」を読んでいた関連として、自軍の兵士の兵站をすら軽視した軍上層部が敵軍の多数の捕虜の食糧までを考慮していたわけがないし、そこに困ればやってしまっただろうなあという想像は難くない。 そのインパール作戦でさえ戦後は正当化する擁護論があったというから、同じような人たちがこちらは否定したがるのだろうなと思うとストンと腑に落ちた。 すべてはつながっているのだろう。
小野賢二氏の協力を仰ぎ、日記に記された1937年12月16日、17日の揚子江岸で起きた捕虜虐殺の全容を掘り起こす。裏付け調査は、日記を記した本人の確認作業はもちろんのこと、日記に記された船の出入港記録、現地での場所の特定、さらには日記に使用された筆記用具などにも及ぶ。こうした清水氏の調査結果も否定論者は一蹴するのであろうが、事実を明白にし、被害者であれ加害者であれ、それを真摯に受け止めることができなければ、戦争はいつまでたっても繰り返されることになるだろう。
素晴らしいレビューです!
訂正「四半世紀」⇒「三四半世紀」
こんにちは。「全く無かった」というのは本書に書かれているようにあり得ません。「人数については触れられていない」とのことですが、「5000人を機関銃で射殺」など一次資料で出てます。問題は日本側が「折り合い」ではなく認めることでしょう。
zero1さん、コメントありがとうございます。私の書き方が悪かったですね。5000人とか、他の数字も上がっていますが、いわゆる30万人、とか、本当にどれだけの方が亡くなったか、という意味です。言葉が足らずすみませんでした
戦争について語られるのは、いつも被害者側である日本の様相ばかり。実は太平洋戦争の前段階までは、加害者の立場でもあった事も心に刻む必要がある。本作を読み返すまで、思いもしなかった都合の悪い「加害者」側の歴史も知らなければならない事実だと痛感。それにしてもキツいね。
戦争が諸悪の根源であり、主導者以外は翻弄され人生や命を犠牲にされる。加害者も被害者もどちらにもメリットはない。「二度と戦争をしてはいけない」悲惨な体験を日記に残された陸軍兵の言葉を忘れてはいけない。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます