形式:新書
出版社:筑摩書房
「それに比べるとアメリカでは餌は国産(アメリカ産)、おまけに広大な牧場でたくさんのウシを飼育する方式なので一頭当たりの飼育費を桁違いに安く抑えることができるのです。/オーストラリア産牛肉も広大な牧場で飼育されたウシですが、アメリカ産とは餌が違います。穀物中心の餌で肥育期間が短いアメリカ産牛に対してオーストラリア産牛は牧草中心で肥育期間が長めです。この育て方は肉に含まれる脂の違いに直結します」
「アメリカ産牛の方が脂身が多く入るのに対してオーストラリア産牛は少なめ。例えればマグロの赤身とトロのような感覚でしょうか。その例でいえば日本の霜降り牛肉は超大トロといえるでしょう。/この大トロ状態にするのが日本独自の技術であり、きめ細やかな餌の配合で作り上げる肉は芸術品とされています。赤身で歯ごたえのあるオーストラリア産牛よりもアメリカ産牛の方が人気があるのは霜降り信仰とまでいわれる日本人の嗜好のせいでしょう」
ところが、狩猟期の冬にマタギらに捕えられると、美味しくないものとして捨てられる傾向にあるのは残念だ。◇これに対して、猪。これが豚の近縁種(というより猪を家畜化したのが豚)というのは割と知られているが、冬には脂肪分が多く、鍋にすると美味い(初冬、繁殖期の雄の臭いはかなりきつい)。もっとも近時、個体数の増加が農作物被害の原因となっていると指摘する。その理由は温暖化。つまり猪の個体数を抑えていたのは日本の山岳部には冬には雪が多く積もり、猪、特にうりぼうの生存が困難。ところが温暖化により降雪量・積雪量の減少。
により冬を越すうりぼうが増加。個体数の増加に繋がった。◆兎。骨ごとぶつ切りにして鍋に放り込んで食する。ただし、毛皮需要が激減した狐・貂の個体数が増加し、天敵が増えた兎の個体数に負の影響を与えたという。◆ただし、仏教思想や食肉加工の実際に対する言及が少し足りないかな。
こんにちは。 日本社会と肉食に触れた本では大学時代に読んだ豚と沖縄独立を思い出します。周りの学生は「どこからそんな本の情報を手に入れたのかな?」と言われましたが…。
Aya Murakamiさん、コメントありがとうございます。沖縄史にも興味あるので、読んでみたいです。著者は画家さんなのですねー
しかし第1章の歴史編はちょっとやり過ぎだろう。食肉加工と被差別民の歴史、またマタギと縄文時代人の関係性などははあまりに直線的に書き過ぎである。この辺に関しては網野善彦など歴史学者、また縄文時代に関しては考古学者の研究が進みつつあるので1章に関しては著者の想像に基づく歴史像であると断じておく。読む際は軽いエッセイくらいに受け止めておきたい
著者はジャーナリスト。いろんな取材でいろんな肉を食べてきたからこそ書けたのが本作と思う。ある意味うらやましい話である
本書を読み終えて思い出したのは、以前読んだ『ファーマゲドン』。飼育過程での過剰な抗生物質の投与・畜産動物にとって過酷な飼育環境・安い賃金で酷使される労働者達等、現代の世界の食肉製造の実態が書かれていました。甘美な旨味を知ってしまった今、肉食をやめるのは正直難しい。肉食を減らし、正当に飼育されたお肉を選ぶことが間違いなく正しいっていうのは頭では分かってるんです。なのに、安価なお肉を買い、コンビニのサラダチキンやフライドチキンを好んで食べてしまう自分が本当に浅ましい。
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「それに比べるとアメリカでは餌は国産(アメリカ産)、おまけに広大な牧場でたくさんのウシを飼育する方式なので一頭当たりの飼育費を桁違いに安く抑えることができるのです。/オーストラリア産牛肉も広大な牧場で飼育されたウシですが、アメリカ産とは餌が違います。穀物中心の餌で肥育期間が短いアメリカ産牛に対してオーストラリア産牛は牧草中心で肥育期間が長めです。この育て方は肉に含まれる脂の違いに直結します」
「アメリカ産牛の方が脂身が多く入るのに対してオーストラリア産牛は少なめ。例えればマグロの赤身とトロのような感覚でしょうか。その例でいえば日本の霜降り牛肉は超大トロといえるでしょう。/この大トロ状態にするのが日本独自の技術であり、きめ細やかな餌の配合で作り上げる肉は芸術品とされています。赤身で歯ごたえのあるオーストラリア産牛よりもアメリカ産牛の方が人気があるのは霜降り信仰とまでいわれる日本人の嗜好のせいでしょう」