形式:新書
出版社:講談社
形式:Kindle版
記紀神話を学説に沿って検証する流れなど非常に面白かった。世界の始まりや天皇の起源を語る思考、イザナミの死=原初の女神の死により大地が豊かになっていく、スサノオによる竜退治などローラシア型神話的な部分と山幸彦・海幸彦の釣針喪失譚やイワナガヒメによる死の起源など、保食神の死による農作物起源などゴンドワナ型的な部分が混合したものと言える。そう考える記紀神話として編纂されたものは多分に見えなくなっているものや混乱が多くあるのかもしれない。
具体的なサンプルが端的に提示され、神話のモチーフが次々に抽出されていく。興味深いのは、古い「ゴンドワナ型神話」において世界の根源が語られないのに対し、新しい「ローラシア型神話」において世界の根源や人間の出自が明示されている点だ。また、前者において「自然と人間の一体」が無秩序に語られるのに対して、後者において「世界の成り立ちや秩序」が体系的で一貫したストーリーラインのもと語られる点だ。つまり、後者には前者にないイデオロギーが少なからず見られる。
それは、西欧諸国に見られる「自然支配」思想の原型であり、近代合理主義にも連なるもの。一方、「ゴンドワナ型」には「自然との調和と共存」といった原初的な自然観が見て取れる。だからこそ、ゴンドワナ型神話には現代的な意義がある。現生人類が誕生したのは二十万年前、そのころ人も、自然も、空も、神も、聖霊も、全ては一つだった。そして世界への畏れや敬いは、言葉を人類に与え神話を語らせた。日本の古事記、ヘブライの聖書、ギリシアの神話、世界に遍在する神話、その水脈をたどっていけば、どれも一つの原初的な世界にたどり着く。
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