(余談)イランアメリカ大使館人質事件をモチーフにした映画『アルゴ』の「カナダの策謀」が成功した一場面が一番、印象に残っている。制作される筈もない絵コンテを見て「なあ、この悪役ってパフラヴィー国王に似てねぇか?」、「えー、そうか?」と言うかのように笑い合う出国審査での兵たちの談笑とそれがフェイクであったと気づいた時の「また、北米に裏切られた」というような表情。映画では序盤でパフラヴィー政権化が民衆をどれだけ、虐げていたのかが(やや)誇張気味に描かれています。この本で実情とそれによる対米意識の確立が知れます。
著者の最終的な結論は「世界に今求められているのは、世俗主義であれ、イスラーム主義であれ、中東の人々の多様な意見が等価として保障され、対話を通して合意形成が実現されるような社会や国家のあり方を共に構想していく姿勢であろう。その先には西洋的でもイスラーム的でもない、新たな近代の可能性が開かれている」というものだが、多様な意見が等価として保障される社会とは要するに西洋流の自由主義社会であって新たな近代でもなんでもないような気がしてならない。
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