高校の英語の授業で「I have a dream」の演説を聞いた。その時の力強い声を今でも覚えている。公民権運動の指導者というイメージしかなかった。何ならあの演説の直後に暗殺されたと誤解していたくらいだ。でも、そうではなかった。人種を超えて貧困と戦っていた晩年や非暴力を貫いた生き方を知り、キング牧師の認識が大きく変わった。
①I have a dream.で、有名な公民権活動家キング。実は、この1963年の演説以降は、次第に貧困問題の解決を目指した運動に軸足を移していったという。黒人のみならず、白人貧困層をも念頭に置き、アメリカ資本主義の弊害で生み出された貧困問題の解決に向け、苦悩しながらも邁進していったという。②1968年4月4日、メンフィスにて波乱に満ちた生涯を閉じる…恥ずかしながら、最近まで、メンフィス=茂野吾郎の青春の地という認識しかなかった💦
恥ずかしながら「I Have a Dream」演説もよく知らないで積読を手に取ったのだが、彼のその人生や行動、考え方に引き込まれ、一気に読み終えてしまった。非暴力は無抵抗ではなく戦いのための戦術であり、そして戦略をもって運動を組織したこと。また「三つ組の悪」として人種的不正義、貧困、戦争を克服することが、キングの真に目指したものであったことなど、本書からのメッセージは非常に分かりやすく、結果的にはキングについて読んだ最初の一冊として最適であったと思う。
キング牧師といえば「I have a dream」の演説を英語の教科書で読んだぐらいで今回初めてその生涯を知ることになった。非暴力がたんに暴力を振るわないことではなく、暴力との対比をメディアに見せつけて指示を得る戦術であることや、黒人差別だけに止まらず、貧困や戦争とも戦った人であることなど。そんな偉大な人を一発の銃弾で失ってしまうアメリカという社会について。
暗殺から50年。非暴力で人種差別に立ち向かったキング牧師の苦闘を辿る。公民権運動など、報道でおぼろげながら記憶にあるが、当時の南部社会を覆っていた凄まじい暴力に改めて戦慄する。60年代のアメリカにおいて、黒人の選挙権も識字テストなどの姑息な手段で制限されていたとは・・。公民権活動家としてだけではなく、後半生(といっても僅か39年の生涯)の貧困根絶への闘いをもっと評価するべきと著者は述べる。80年代、一人旅したアトランタ、まだまだ差別の空気が色濃く残っていた。"I Have a Dream."未だ成らず。
としている。そして、リベラルな白人にめんどくさいキングの面は捨象され、「公民権運動」の闘士として賞揚することで、黒人差別の根に目を背け、安心できる歴史が作られてきたとのこと。それがどこまで妥当かは知らないが、たしかに公民権以外のキングは知らなかったので、すごく勉強になった。