形式:新書
出版社:講談社
質量の単位と重力を加味した重さの単位であるキログラム重は別物という話とかも序盤のほうに出てきていて、正直内容もかなり難しめだったけれど、少しずつ物理の概念の話を読むことが苦痛ではなくなってきている気がする。力学とか熱力学の話は正直かなり難しいと感じているのでひたすら根気強く読むことで対処してしまいたい。単位定義が概念上の量に近いものになることで単位としての精度が上がるということはすごいメリットだけれども、人間の文明や科学力自体がロールバックするような事態が起きるとも限らない令和の世では
キログラム原器のような不安定な(いうほど不安定ではない)ものを克服したことの素晴らしさと、確実に進化する技術をただ手放しに賞賛できないとも思う。科学が進めば単位は変わるというのが本書のキャッチフレーズなんだけれど、技術と理論の集大成ともいえるキッブル・バランスのような象徴がいつまでも平和に大事にされてほしい。自分でもなんの感想文なのかわからない。触れたいことはほかの人が書いてくれているのでこれでいいや。あけましておめでとうございます。
シリコン単結晶の世界トップクラスの真球は、レンズ研磨の原理で作ったそうだが、それでも完全な真球じゃなくて、原子1個の大きさの凸凹がわかるぐらいの精度で計測されている。まてよ?シリコンって数種類のアイソトープがあるよな?って思ったら、ウラン濃縮の技術を使って同位体分離でSi[28]を濃縮したシリコンを使っていた。使える技術は使い切ったという感じ。
⇒原理としては有名なアインシュタインの質量・エネルギー等価原理E=mc↑2と量子論の基となったプランクの「電磁波エネルギーは最小エネルギーの整数倍、最小値はプランク定数h×電磁波周波数f」でE=hf。両式からm=hf/c↑2。プランク定数と光速(及び周波数)で質量を示せるというマジックのような…。プランク定数を正確に求めると質量が求まるというわけらしい。現実にはプランク定数を原器と比較し正確に測定、逆にプランク定数から1キログラムに相当する質量を作り出すという両方の技術が必要で、それが可能になったという。
難しくて解りません すごい(๑•﹏•)
むしろ量子論的世界観に沿って、かつ一般市民が理解できうる形での単位の刷新が必要になっているのでは。
アボガドロ定数→プランク定数→重量という関係があり、アボガドロ定数を正確に測定するための国家プロジェクトが発足。(1)核燃料を作るための遠心分離機を用いてシリコン28を濃縮(ロシア)(2)結晶化(ドイツ)(3)格子定数の測定(イタリア)(4)球研磨・再研磨(5)国際kg原器と比較しての質量測定(相対測定)(6)体積、表面測定(日本、ドイツ)→アボガドロ定数測定 というプロセスです。
⇒厳重に密閉された金庫のような部屋で、神体のごとく鎮座していた原器から単位を解き放って、いまやわたしたちは世界中、いや全宇宙どこへいってもかわらない、永遠不変の新しい単位を手に入れることができた。技術が進めば単位がかわる。単位を学べば科学がわかる。新しい1キログラムには、科学技術の最先端がつまっている。
pp.18-19より;単位を共有しようとしたときには、その社会で受け入れられる決まり事とする必要があります。この決まり事を、単位の「定義 (definition)」と呼びます。そしてその定義を実際の形(モノ)にすることを「現示 (realization)」と言い、形作られた器物を「原器 (prototype)」と呼びます。
p.152より;ジョセフソン効果も量子ホール効果も、長さや力とは直接関係なく、量子力学の下で現れた電気的な現象です。定義に従って現示されたものではないので、どんなに正確に「再現」できても、それは定義の現示とは言えない、つまり国際単位系における電気量の標準とは言いがたいのです。(中略)ここは思案のしどころです。定義に忠実に従って6桁の不確かしさに甘んじるか、国際単位系の整合性を犠牲にしても9桁の再現性を優先するか。
ごくごく間接的ながら、シリコンインゴットにもかかわる仕事をさせてもらっているだけに、終盤、日本が担当して成功したアボガドロ定数の高精度測定で正確なシリコン球の話しが出てきたときは「!」しました。
著者の臼田さん、サラメシに登場!
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