形式:新書
出版社:中央公論新社
アマチュアではなく、プロの公務員としての矜持を持って業務に当たることの大切さ、そのためには、役人の命とも言える文章力・交渉力の鍛錬が必要という示唆は、散々現実を知った今でも、私にとって役人が興味深い仕事であり続ける所以だと思う。
上記のような点はありつつも、激務や激務により同僚が死亡したというエピソードもあり読後は暗い気持ちになった。筆者にとっては、自分が生き延び得た過去のことだろうが、若い公務員にとってはこれから生きなければならない未来であり現実である。
その実施の濃淡が地域やその対象者によってバラつきがあったりすれば、それは国力を弱め、はなはだしい場合にはその国を滅亡させる。その時代の、その国のおかれている環境に最も適した官僚制度を持ち、それを的確に動かしうる役人を持つことは、国の存立にかかわることである。役人は、アマチュアであってはならない。彼らは、公務員であることにおいてプロフェッショナルでなければならない。そして、彼らをプロフェッショナルたらしめているのは役人としての技術である。そして、その技術たるや法律、土木、経済といったその専門分野についての
技術に尽きるのではない。正確な文章を書くこと、論理に基づいてキチンとした交渉をすること、といったプロフェッショナルな役人として当然の技術を持っていなければならないのである。役人たる者、なかんずく役人のプロたらんとする者は、常にこの技術の修得、質の向上に努めなければならない。その道の蘊奥を究めるべく、日夜研鑽に励まなければならない。そして、果たして自分は己れの給与に見合うだけの技術を持っているだろうか、それに値する働きをしているだろうか、ということを、常に自らに問いかけなければならない。」(「あとがき」)
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