形式:単行本
出版社:東京堂出版
グルジアと書いていました。十数年前に会議に参加した時にジョージアからの参加者がいて、初めて国名が変わったことを知ったことを思い出しました。
調べてみたところ、2019年6月の出版だったようですね。執筆のタイミングでは、まだジョージアだったのかもしれません。 グルジア人の立場では「ジョージアというのはロシア語の発音に近い。我々の母国語ではジョージアに近い」と主張した結果、日本のメディアもジョージア化したんでしょうね。 いずれにしろ「いや、そうじゃなくて、正しくはこう発音するんだ」と食下がられかねませんけどね(^^) 現地の綴りは⇒だそうです。საქართველოს 旧ソ連の15共和国は殆どがキリル文字かアルファベットですけどね。
主権国家の定義に軽くショックを感じたし、なるほどと思ったし。そりゃ友好条約なんて黙殺だわね。
★ロシアの"限定行動戦略"...自国の能力の限界を踏まえた介入戦略→現地勢力との関係が決定的に重要。★中東シリア内戦介入...①「汚れ仕事引受説」米に出来ないアサド(ISへの有効な対抗勢力)支援→ウクライナ情勢への姿勢軟化を求めた?②「世界戦略阻止説」アラブの春(民主化)は米国の陰謀→アサド(独裁)擁護で対抗。★いずれにせよ米国の中東戦略においてロシアは無視出来ない存在となった。★日米地位協定「返還後の北方領土に施設/区域を設けないとソ連と約するのは安保上問題だ」→ロシアの不信感。(3/4)
★純軍事と政治の論理は別→アフガン侵攻容認やバルト三国NATO加盟など、政治論理の優先もある。★北方領土交渉におけるロシアの面的思考⇔日本の点的思考。★中国を共通の敵とした日露の結束は困難←中国の脅威を感じていないからではなく、むしろ脅威として関係悪化を絶対に避けたいから。★北極の①資源②商業航路③核抑止基盤としての価値を巡る、協調と対立。●(小ネタ/感想)・ベラルーシは憲法18条の中立国規定を現在も維持→ロシア軍の駐留はない。・集団安全保障概念が薄いロシア。全体的にメンヘラ。(4/4)
⇒NATO加盟国は米国に制限される。日本は言うまでもない。核保有国で外国と同盟することなく安全保障を全うしてる中印など少数の国のみが主権国家とみなされる。旧ソ連諸国は勿論、ロシアの影響下にあり主権国家ではない。これらの国々はロシアが一定の影響を及ぼすべき「勢力圏」と考える。その勢力圏であった東欧諸国が次々とNATOに加盟し、そして旧ソ連のウクライナまでもその気配を見せる。プーチンの心は穏やかではない。2000年代のエネルギー価格の上昇により、ソ連崩壊時の経済的疲弊から回復したロシアは勢力圏の確保に力を…。
ロシアの(勝手な)論理からすれば、中国やインドなど(いずれも核兵器を持つ)ごくいくつかの国以外は「主権国家」ではない。そういう意味では北朝鮮は「主権国家」になりつつあるのかもとも。また旧ソ連諸国は「上位の存在」であるロシアの影響下に置かれるのが当然というロシアの論理。北方領土問題は第6章に詳しいが、安倍政権の「新しいアプローチ」は安全保障に関する視点が欠けていたと手厳しい。このほか、ウクライナの位置付けを巡っての前置詞に関する論争も興味深い。プーチンの演説の中では、ウクライナは国ではなく特定の限られた場所
ってことはこの機に乗じて境界問題がある国が一斉に参戦して奪回しようとする動きが出る可能性がある?
本書とはあまり関係がありませんが、バルト三国というとチャペック『オランダ絵図』の「小さな民族」の冒頭、ラトヴィア人の若者の「どの言語で仕事をしていくべきなのか」という苦悩を思い出します。バルト三国は、今まさにロシアから離れていこうとしていますね。
冷戦の終了をロシアと米国が成し遂げた「共通の成果」と見ていたため、冷戦の敗者と見られることに屈辱がある。2000年代初めは米国に譲歩していた面もあったがNATO拡大に裏切られた思いを持っている。2014年のクリミア危機時、半島勤務のウクライナ軍人のかなりがロシア人だった。例えば、セヴァストポリのウクライナ海軍総司令官は、クリミア「独立」後、そのままロシアの黒海艦隊副司令官に横滑りした。
対して、ドンバス地方の戦闘などは、紛争を抱えさせてNATOに加入させないという戦争のための戦争である。 シリアでは、民間人を無差別殺傷することで、反政府地域では生きていけないという状況を作り出している。民間人の巻き添えを出すこと自体がロシアの戦術の一環。 安倍政権では、ロシアとともに対中国の連携を取ろうとしたが、防衛を米国に負っている=ロシア的見方では主権国家ではない日本との連携には懐疑的であった。また、対中国についても考え方が違い、成果を挙げられなかった
⑱新生ロシアの方向性をどのように定めるのかという問題に行き着く。つまり、★ソ連から決別した新たな国家体制の下でも旧ソ連諸国を支配下に置く「帝国」を目指すのか、それとも旧ソ連諸国を完全な独立国として認めてウェストファリア体制の中に位置づけるのかということだ。★そして、ウェストファリア的秩序への試みが挫折し、帝国的秩序がその実現の困難さゆえに採用されなかった結果、残ったのが「大国」への志向であった。しかし、プーチンのロシアが帝国志向のようにあからさまなヒエラルキーを目指していないことは⇒
⑲たしかであるとしても、その後の振舞いを見れば、ロシアの国境外部まで「歴史的主権を」及ぼそうとする傾向が完全に払拭されたようには見えない。だが帝国的秩序ではなく、ウェストファリア的秩序でもないとすれば、現在のロシアが想定する大国志向の旧ソ連秩序とはいかなるものなのだろうか。【この辺は日々、ロシアの動向を見せられているわけです】
ロシアの考え方が分かり、ウクライナ戦争へと突き進むこととなった背景も見えてくる良著。
「ソ連崩壊後、「ロシア」の範囲をめぐって試行錯誤を繰り返したのちにロシアが見出したのは、旧ソ連諸国を消極的にではあっても「勢力圏」として影響下に留めることであった。このような論理の帰結が2014年のウクライナへの介入であり、それに続く西側との対立の再燃であったと言えよう」「だが、これはロシアの論理である。」「ユーラシアの巨大な陸地の上で、ロシアは壮大な「勢力圏」の夢を見ている。⇒
⇒それは巨人の頭の中に広がる世界ではあるが、巨人が高揚のあまり、あるいは自らを脅かす「カラー革命」の悪夢に怯えて寝返りを打てば、隣人たちに影響を与えずにはいられない。2014年にウクライナで発生し、現在まで続く紛争は、その長い余韻と言える。」/ロシアの主権観、秩序観が窺える1、2章、ウクライナ危機を見てゆく4章、北方領土問題を切り口に日・米・中・露の四角関係を見てゆく6章が面白かったです。そして、ロシアの主権観からはもちろん日本は主権国家ではないのだった……。
今年7月8日、安倍晋三元総理が亡くなられた。この事件は私自身にとっても衝撃的な出来事で、事件後は大きな喪失感のなかで日々過ごしている。心からご冥福をお祈り申し上げます。安倍元総理は非常に多くの難題に取り組まれ功績を残されたが、その北方領土返還交渉については失敗であったとしばしば言われる。四島一括返還を唱える論者からの批判も存在する。しかし、その評価について結論を出すのは、個人的にはもう少ししてからにしたいと思っている。
ロシアによるウクライナ侵攻は強く非難されるべきものだ。しかし、日露間には依然として北方領土問題が横たわっている。この解決のためには、ロシアに対して欧米諸国と足並みを揃えた圧力一辺倒というわけではなく、安倍元総理がされた外交のように、硬軟織り交ぜた、何かいい方法はないものだろうかという思いになる。
「彼らは、自分たちがかつての東欧諸国からどれほど恨まれているかを理解できていなかった」って、控えめに言って、サイコパスでは?
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