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ヒューマニズム考 人間であること (講談社文芸文庫 わA 2)

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ジャン
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「ヒューマニズム」を人間の博愛主義を讃える思想ではなく、ルターからカルヴァンに至り最後には急進化して不寛容へと至ってしまう近代キリスト教やその社会に「待った」をかけて、本来の人間らしさを思い出させるような態度と定義する。この定義は、フランス革命による社会の断絶的な変化を批判して過去の制度の良い部分は受け継ごうと主張するバークの「保守主義」(宇野重規)を思い出させる。ある種どっちつかずで「弱い」思想なのだが、その実良心的で常識的な態度なのだろう。
0255文字
フォンテーヌ赤井
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『思想・制度・機械・・・・・など、人間がつくったいっさいのものが、その本来もっていた目的からはずれて、ゆがんだ用いられ方をされるようになり、その結果、人間が人間のつくったものに使われるというような事態に立ちいったとき「これでは困る。もっと本来の姿にもどらなければならない。」と要請する声が起こり、これが、「人間らしい」ことを求めることになるのです。』41頁
0255文字
Go Extreme
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心構えの重要性ー物事において過剰にならない 言語への注意ー外来語に対して注意を怠らない ヒューマニズムの再評価ーフランス文学を通じて吟味 限界を認識することの重要性 象のたとえ話 ヒューマニズムーより良い理解を目指す心のあり方 キリスト教との関係 宗教改革: エラスムスの役割: 批判の重要性 ラプレーとカルヴァン: ユマニズムの二つの側面 現代人とユマニズム: ユマニズムの持つ意味ー平凡な人間らしい心構え 危機の認識 「それは人間であることとなんの関係があるのか」という問いかけ ユマニズムの再評価
0255文字
劫
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私が思っていたヒューマニズム(p29で言われていたようなもの)とは違い、この方の言っているユーマニスムはどこかニヒリズム的な感じがした。そして人間もこの思想もどこまでも曖昧模糊な存在で、別に大層なものではないというメッセージを読み取ったような気がする。後半を読みながら平家物語のような無常観を感じると思った。
0255文字
ご〜ちゃん
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とてもわかりやすい文章だった。ルネサンス期と、今と、何も変わっていない状況が進歩していないと思う。 制度や思想の歯車にならないように、問いかけが必要だと思った。 「それは人間であることとなんの関係があるのか」と問いかける人間の心根ーこの平凡で無力らしく思える心がまえが中心とならなければならないかと思われます。
0255文字
まふ
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フランス古典文学の泰斗である著者のヒューマニズムに関する思想の開陳。ヒューマニズム(ユマニスム)とは、がんじがらめのキリスト教教義解釈論で機能不全に陥ったローマ教会の教義を「人間であること」に戻そうとした必然の動きであった、というのが彼の考え方。ラブレー、カルヴァン、モンテーニュを並べて比較し、カルヴァンが教条的になってしまったとは言え、目指す目的は同じだったとする。その考え方は今日の「人間を忘れた」国同士の争いにも当てはまる。彼の「ヒューマニズム」は没後半世紀を経てますます輝いている。
0255文字
ホリエッティ
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p.60「ユマニスムは、...むしろ、歴史の流れに見られる「衆愚」や「狂気」を指摘して、悲惨な事態をなるべく少なくし、同じ愚挙を繰り返さないようにすることを願うだけでしょう。」
0255文字
ステビア
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ラブレーとモンテーニュ。「ユマニスムは、別に体系をもった思想というようなぎょうぎょうしいものではけっしてなく、ごく平凡な人間らしい心がまえであるというのがわたしの考えです。」
0255文字
buuupuuu
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人為的に作られたものに人はたやすく絡め取られてしまう。そのようなあり様への批判的な眼差しが著者の理解するユマニスムということになるのだろう。このことが、ユマニスムと同じく旧体制の絶対性への批判から出発しながら、別の絶対性へと落ち込んでしまった宗教改革運動と対比されながら描かれる。この眼差しは宗教にだけ向けられるものはない。現代でもイデオロギーに起因する戦争だとか資本の運動によって引き起こされる環境破壊などが例に挙げられる。ユマニスムは懐疑論や相対論の見かけをとるが、根底には人間性への信頼があるようだ。
0255文字
unterwelt
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本来なら人間を救うはずの宗教(キリスト教)がその本来の目的を忘れたり(忘れたのは聖職者たちだが)、それを改革しようとして争いになった時代に「それはキリストと何の関係があるのか」とつぶやいたユマニスト(人文主義者)とユマニスムについて書いている。生活を便利にするために作られた制度、技術、思想がいつしか人間を不幸にしてしまうことが続く限り、「それは人間であることと何の関係があるのか」というつぶやきは意味を持ち続けると感じた。
0255文字
馬咲
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本書で語られるユマニスムは、「答え」に固執せず、素朴に「問いかけ」を発し続ける態度のことだと思う。それは「~主義」と呼べるような何らかの規範を提示するのでもなく、問題解決の処方箋にはなり得ず、容易に「無用」と罵倒され、せいぜい致命的な崩壊までの時間稼ぎができるにすぎないのかもしれない、弱々しい姿勢である。しかしこうした立場に自覚的に立つことによって初めて、人間が自ら作った思想・制度を巡って争ううちに、逆に人間の方が思想・制度に機械的に駆り立てられて潰し合うという本末転倒な事態から距離をとることができる。
馬咲

現代のように反知性主義やポスト・トゥルースなどの考え方が現実に力を持ち、「啓蒙」といった言葉自体が冷笑の的になる時代では、道徳哲学や体系的理論などの「知力」で相手を説得しようとすることは、却ってルサンチマンを焚き付けて泥沼を助長するにすぎないのかもしれない。すると、ユマニスムのささやかな抵抗ぐらいしか、実はすでに残されていないのかもしれない。しかし青瓢箪の私は、そんなユマニスムの精神を基盤としつつ近代への道を一度は切り開いた「人文主義=人間らしい学芸の追究」への希望を、まだ捨てられない。

01/02 19:18
0255文字
よたか
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大江健三郎のお師匠さんであり、ずっと読んでみたいと思っていた。平易な文章でめっちゃ読みやすい。ユマニスム(ヒューマニズム)がどういう考えなのが、著者が研究しているルネサンス期の宗教改革から探る。ユマニストは「もっと人間らしい学芸」を叫び、「それは人間であることと何の関係があるのか」を問い続ける。地味で無用・無力な存在ではあるが、弱々しくも常に地下水のように流れている。
0255文字
しお
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大江さんの師の本ということで衝動買いしたのだが、タイトルから想像できないほど平易で読みやすく、フランスの宗教改革とヒューマニズムの関係についてよく知れた。ヒューマニズムは決して重々しい思想でも仰々しい主張でなく、時を超えてもなお人間の中に流れ続ける良心なのだと思った。ヒューマニズムの考えは、宗教改革の流れから始まったが、今こそ必要な普遍的な姿勢であると思った。最後に引用されていた「人類は所詮滅びるものかもしれない。しかし、抵抗しながら滅びよう。」というセナンクゥールの言葉が印象的だった。
eucalyptus

若い女性とお見うけしますがそのような方が大江さんの小説を読んでおられるのが嬉しくて、突然コメントを差し上げる失礼をお許しください。セナンクゥールのこの言葉は、大江健三郎さんの小説『さようなら、私の本よ!』に示唆に富む仕方で引用されています(第12章1)。無理にとは言いませんがこの小説も読んでください。

10/02 11:37
しお

情報ありがとうございます。今、大江さんの全作品を読もうとしているところなのでその小説も近々読むと思います。

10/02 19:37
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S.コーニック
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ヒューマニズム考 渡辺一夫先生の「ユマニスム」には、弱さ、みじめさの気分が分かち難く結びついている。それを受け入れようがいまいが、今一度、あなたも一緒に呟いてみよう、「それは人間であることとなんの関係があるのか」 この呟きは、狂気と無知と痴愚に対する一服の処方箋となる。
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jabrafcu
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宗教に対する姿勢としてのフランスのユマニスムを紹介する小著。宗教改革・宗教戦争にも大きく紙幅を割く。ユマニスムの基本精神を表すとして繰り返されるキーフレーズが「それはキリストとなんの関係があるのか」。この問いは当時の神学における論争のように本来の目的をわすれた些末な議論に意義を申し立てるものだという。その点でまっとうな「人間らしい」学問を目指すというのが本書の説明で,教会の腐敗と世俗化が人間の感覚を中心とする芸術を産んだ,というよくあるルネサンス説明のクリシェとはすこしニュアンスが違うなという印象である。
0255文字
ゴリラ爺
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16世紀中葉の宗教改革で新旧教徒が神をめぐる争いを繰り広げる中、あいだに挟まれて凄惨さや愚劣さを目の当たりにしたラブレーやモンテーニュが「それは人間であることとなんの関係があるのか」と問い直すところにユマニスム=人間の限界や惨めさに寄り添う思想の核心があった。本書は宗教学的・思想史的観点ではなく歴史学的に宗教改革を解説しているだけなので系譜学を期待して読むと失望する🦆より人間らしい学芸、エラスムス、痴愚神礼讃、ラブレー、モンテーニュ、カルヴァン、セルヴェ、カステリヨン、相対主義的思考、技術と疎外。
0255文字
ア
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とてもよかった。ルネサンス期の傾向・思潮であるユマニスムは、16世紀後半には「古典文学の研究者」を意味し、「神学者」に対比される言葉であった。エラスムスやルターといった人々は、中世の堕落した教会や修道院のあり方や、「議論のための議論」に堕した神学に対し、「それはキリストになんの関係があるのか」と問うた。エラスムスやラブレーのユマニスムは「もっと人間らしい学芸」を求める、宗教にとどまらない温故知新の学問となった。他方、ルターやカルヴァンは宗教運動に突っ走るなかでユマニスムを失った。
0255文字
m4
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★★★★★
0255文字
ねね
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人間であること、常に立ち返らなければならない原点がこの本の中にあると思う。 ヨーロッパでのユマニスムの発露の歴史が主な内容で、自分に理解できるか不安だったけれど 読み進めるうちに あまりにも現代の問題そのもので、ツイッターなどで繰り返される殺伐とした状況に当てはまることに悲しくなった。 刺激がなく、やわに見えるユマニスムの精神は地下水のように流れることを余儀なくされるのかもしれないけど、そのために汚れなく、綺麗なままで流れ続ける。人間の名に値する人であるために、その地下水を汲み上げられたら。
0255文字
マウンテンゴリラ
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ヒューマニズムという言葉が、一般にも浸透しているにも関わらず、その概念がどこか不明瞭で、メッセージ性が弱いという印象があった。本書を読んで、なるほどそのような言葉であると納得すると共に、そのような弱さ、あいまいさがあるからこそ、対立を越える、普遍的な概念となりうるということを感じさせられた。特に現在の世界、国家や人種間の分断・対立が激化し、人類の永遠のテーマともなりつつあるようにも見える世界において、「人間であることとなんの関係があるのか」、とういことを私なりに解釈すれば、→(2)
マウンテンゴリラ

(2)「人間であることの意味(責任)を念頭に置く」とも言えると思う。それが、神を越えたとする傲慢な存在でもなく、個人の権利のみに拘泥するバラバラの存在でもなく、権力に盲従する畜群のような存在でもない、弱さを強さに変えうる人間というものの普遍概念に成りうるものであると感じた。

08/30 10:10
0255文字
Orange
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書店でふと手にとって、目に飛び込んできた一節、「天使になろうとして豚になる」。この人間観は好きなやつだ、とそのままレジにもっていく。「ある意味ではみじめな人間を十分に自覚してこそ、歪みのない人間が生まれる」そんな考え方が好き。
0255文字
ishii.mg
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ユマニスムのエッセンスを絞ったひとしずくのようだ。ユマニスムとは人道主義、博愛主義とは別物であること。ユマニスムはとても「弱く」「みじめ」でどっちつかずの態度表明しかできない、りっぱな「主義」でもないこと。ではなにかといえば「それは人間であることと何の関係があるのか」と常に問いかけること、問いかけ続けることだ。その必要が無くなることはない。なぜなら人間の痴愚の種は尽きることがないから。この流れは強くはないが連綿と続いている。自信はないがおそらくサイード、ブレイディ、大江や堀田などなど。
0255文字
最大255文字
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16世紀、宗教戦争の血風吹き荒れるフランスにおけるヒューマニズム=ユマニスムを概観する。ユマニスムの無力さ、ルターやカルヴァンら行動派に対する懐疑派、思索家的姿勢を強調する。 中近世教会組織から重化学工業文明まで人間の作り出した巨大なもの…村上春樹の「壁と卵」講演における「システム」……による人間疎外の状況が強調されるのは、50年近く前の本であることもあってナイーブな調子もあるものの、冷戦当時の世相を反映しているようにも見える。
0255文字
ネムル
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ルネサンス期の宗教改革のごたごたを中心にエラスムス-ラブレー-モンテーニュへと連なる、ユマニスムの地下水脈を辿る。いまの研究書ならより深く概説した本もありそうだが、ユマニスムが「歴史の流れを下る人間の「しりぬぐい」役を勤める」とした考察は、いかにもラブレー翻訳者らしい愉しさだ。そして、ユマニスムが身振りや態度、「ごく平凡な人間らしい心がまえ」とするのは、歴史の流れに踊らされない保守主義の考え方に近いのではないかと感じた。「です・ます」調の語りにのんびり学ぶ、小著にして良著。
ネムル

また野崎歓の解説は渡辺一夫の日記を元に、敗戦時の悔悟とユマニスムへの傾斜を橋渡しする内容で、これも興味深い内容だ。

01/22 00:45
0255文字
こも
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実家にあって勧められたので読んだ。歴史があまりわかってなかったから、(本著の主題ではないだろうけれども)宗教革命の流れがわかって面白かった。
0255文字
fseigojp
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キリスト教の不寛容に対する相対主義
0255文字
kentaro mori
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ヒューマニズムとは何か。「それはキリストとなんの関係があるのか」「それは人間となんの関係があるのか」と問う姿勢のこと。人類の存在理由を見失ったようにみえる今、読む意義がある。
0255文字
荏苒 byn
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蓋し、定番本が文庫で、1500円のB5新刊並価格。これでは、本は売れないね。物価は上がる。講演みたいに、分かり良く書いてある。熱っぽくはない。バーゼル生まれのエラスムスが、失敗したと言われる理由が、分る。カルヴァン  は「それは、 聖書に書いてあるのか?」。モンテーニュ関係を読みたく、全9章の2章。宗教戦争と、新大陸の人々の正当性に触れる。余り、印象としては、淡々として、いまいち。
0255文字
刳森伸一
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日本で流布する「ヒューマニズム」という言葉の意味と重要性をその起源まで遡って再考する。漠然と博愛主義的なイメージで語られることの多い「ヒューマニズム」が形式的な論争に陥りがちだった「神学」に対抗する形で、真に人間とって必要なことを精査する為に生まれてきたものであることを確認する。その後はフランス文学者らしく、フランスにおけるヒューマニズム(ユマニスム)を系譜を追う。そして、ルターやカルヴァンに対置されるラブレーのようなユマニスムに賭けた人々の考え方を尊ぶ。小著ではあるが深い教養に裏付けられた名著だと思う。
0255文字
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ヒューマニズム考 人間であること (講談社文芸文庫 わA 2)評価94感想・レビュー31