形式:単行本
出版社:有斐閣
与謝野晶子が経済的自立を、平塚らいてうが母体の保護という観点から女性の権利獲得を求めたという点は興味深い。一枚岩と思われがちな日本のフェミ的言説が実は多様であることを再認識。また、上野千鶴子と同じく、この著者も、全共闘など社会運動で女性が「女性の性的役割分担」を強いられていたと言及しており興味深い。また、キリスト教的バックグラウンドがあり、それの疑問点として社会主義活動に傾倒した女性たちが日本にも一定数いたことも面白い。
加えて、男性が担った仕事が戦時中には女性が任されたこと、戦地に出向いた男性の奥さんの貞操を監視する役割をコミュニティの女性が担ってきたこと、GHQのために慰安所を日本政府が自ら設営したこと、売春婦たちが性病をうつしたことを責められ、彼女たちが時には監獄に入れられたことなど戦時中、戦後直後の話も興味深い(悲しい)。マスメディアのdiscourseの暴力性にも頷かされた。いずれにせよ、この本は素晴らしい知識と分析に溢れていて、日本のフェミニズムの流れを俯瞰的に、かつ詳しく学びたい人には絶対におすすめしたい。
フェミニズムとは直接関係ないですが、学生時代に母に勧められて山川菊栄の「武家の女性」を読んだことを思い出しました。菊栄女史のお母様の娘時代の水戸藩の女性の生活ぶりを書いたもので、当時の女性の立場等、考えさせられました。(茨城県出身なので、それ以上に幕末〜明治水戸藩の内紛ぶりのインパクトもかなりでした…😅)
まるみさん、山川菊栄の母方の家はわりと藩の重要な家柄だったみたいですね。後年もっと歴史的な著作も書いているようです。「武家の女性」読んでみたいです。江戸時代からまだ地続きの感じが色濃く残っていた時代なんですよね。
【田中美津という存在】<彼女のリブって一面的でなくって、いろんなものを包み込む力を持ってたでしょ。例えば、口紅で媚びるのもマルクスで媚びるのも、男に対する媚びとしては同じだっていうような発言は、私にはすごくピンと響くものがあった。それぞれの人が自分のやりたいことをやりたいようにやっていけばいいんで、口紅つけたい人はやってみる。それで自分が媚びてるということに自分なりに拘ってみる。それが大事っていうのかな、自己肯定感っていうのかしら、そこのところがよくわかったっていうか、私はちょっとほっとした>。わかる!
【リブとは何か】<性的役割分業というよりはもうちょっと深いところにある、女として期待されている行動様式っていうのを全部守ってきたっていうところがあったのね。それをそうじゃなくていいんだ、そういうことを全部一回崩していいんだっていう、それをリブは打ち出したっていう気がして。で、そこから見てみると、男社会の思想とか、政治の仕組みとか組織とかっていうのに、今まで違和感を持ってきた自分というのは、遅れてる訳でも間違っている訳でもなくて、それ自体肯定していいんじゃないかって思えたことが、私にとっては共感できた>。
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