映像化作品で興味を持ち初レッシング。「THE GRAND MOTHERS」は映画では「TWO MOTHERS」と若返り、邦題では「美しい絵の崩壊」と情緒的になる。収められた4編を通して感じるのは、何かしらの居心地の悪さと人生の短さ。読後には自らの来し方行く末にも思いを馳せてしまいました。これも小説の醍醐味か。
レッシングは微妙な男女関係を描くのも上手いが、女同士の関係を書かせてもピカイチ。表題の「グランドマザーズ」は、コレットの『シェリ』を思わせる2組の母子をめぐる美しい小説。個人的には、「ヴィクトリアの運命」がお気に入り。"進歩的な"上流中産階級の一家に憧れながら、"Know your place."と言わんばかりの社会の中で、一応もがいてみるも結局這い上がれない。せめて、色の薄い娘だけは…といった具合に矛盾を抱えながら分裂した英国社会が、非常に巧妙に描かれている短篇。