形式:新書
出版社:岩波書店
①弥生早期(前1000~)稲作が伝わった。②弥生前期(前800~)山や川などの地理的条件で区切られた小地域内で、水や土地の分配を巡る争いがあった。③中期(前400~)小さなクニを築く過程の争い、そしてそのクニを更に大きなブロック(北九州・瀬戸内・出雲・畿内・東海・関東)に統合する動乱があった。④後期(前50~)魏志倭人伝にいう倭国乱、西日本全体を巻き込んだブロックの動乱があり、卑弥呼を共立して収めた。⑤終末期(180~)は卑弥呼を継いだ壹与の時代であり、狗奴国を巻き込んで東日本にまで波及した動乱があった。
1世紀はツクシ政権が後漢の庇護のもと鉄を支配していたが、2世紀末の後漢弱体化によりヤマト政権が鉄供給ルートを掌握した。纒向遺跡が邪馬台国であり、箸墓古墳が卑弥呼の墓だ。東北北部以南から九州において前方後円墳が増築される。古墳時代だ。各首長の連携による中央政権、初期国家が成立した。中央政権は地方の首長に支えられていた。中央政権は中央集権化を常に狙っていた。一方政権交代もあった。⑥5世紀後半に雄略大王の官僚制・軍制の強化がなされ、⑦継体大王のときその反動がおきた。両王に血縁はない。そして⑧律令国家へ繋がった。
この本のちょうど一年前に同じ岩波新書で出ている広瀬和雄さんの『前方後円墳の世界』とは扱っている対象が近いのに、随分描かれ方が違うので併読すると面白い。(年齢も5歳違いと近い)/海外の文化人類学の成果を取り入れて初期国家を論じたのが、都出さんの重要な功績なのだろうと思うが、1978のクラッセン以降の海外文献について言及がないのは少し気になるところ。海外でもそれ以上の議論の深化がないのだろうか?
邪馬台国論を含め、それほど新奇な見解は開陳されていないが、若手の研究者の成果(例えば三角縁神獣鏡の製作地につき、西晋説の復権もあるという)も指摘している。雄略朝期の全国規模の墓制・墓地選定で首長系譜の変動が生じている点、継体朝も首長系譜の変動(ただし、雄略朝前の主張の復権らしき事態も想定可能)の点も同様か。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます