形式:文庫
出版社:光文社
127ページの「ノルドストン伯爵夫人とリョーヴィンの間には、社交界でしばしば見受けられるある種の関係が出来上がっていた。すなわち二人の人間が表面的には友好的な間柄を保ちながら、本音では軽蔑しあうあまり、お互いにまじめな話も出来ず、侮辱しあうことさえ不可能になっているような関係である」みたいな描写は鮮やかすぎて感動すらする。人間関係をバッサリ描写しつつよく考えてみるとどんな関係なのかめっちゃ気になりような書き方で、この後の実際のやり取りが実に生き生きしてくる。こんな描写が積み重なればそりゃ大作になるわな。
「われわれロシア人はいつもそうだ。ひょっとしたらそこがまたわれわれの長所なのかもしれないがね。つまり自分の欠点を見る能力がさ。でもわれわれはつい度を越して、 皮肉の投げあいに没頭してしまうのさ。また皮肉ときたらロシア語の語彙はいくらでも揃っているからね。ひとことだけコメントすれば、仮にわが国のゼムストヴォのよ うな自治権がほかのヨーロッパの国民に与えられたとしたら、ドイツ人やイギリス人 はきっとそこから自由を生み出すことだろうが、われわれはせっかくの権利をただの冗談に終わらせてしまうんだ」69ページ
言葉にしなくても感情が伝わっているという描写がけっこうあって、ノンバーバルコミュニケーションの大切さ、言語よりも非言語的なものの方が多くの情報が伝わるかもしれないということを思い出しました。
登場人物のなかでは、キティが一番好きだ。大好きって言ってもいい。 だが今回は、それをもう少し考えたくなっている。 その理由は先に行って考えることにしたい… まだ1/4を読んだに過ぎないのだから。
「アンナ・カレーニナの法則(成功の共通要因は似ているが失敗要因は人それぞれ)」「ラスコーリニコフ症候群(強者は弱者を支配して世の中を動かす権利がある)」といい、そんな言葉ができるくらい、ロシア小説のキャラパワーは凄い。
続き読む前にトレチャコフ美術館展の図録を見返し中。この時代のロシアをよりイメージしやすくなります。
恋愛というものを知るには一度ちゃんと過ちを犯して、それからきちんと立ち直る必要があると思いますわ‐346頁
しかしね、慈善をするのなら、むしろ誰にたずねても誰も知らないという形でしたほうがいいのだよ‐576頁
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