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アダム・スミス: 『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書 1936)

感想・レビュー
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Shinya Fukuda
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道徳感情論と国富論が解説される。説明と原文の引用、そして要約という形式で書かれている。アダムスミスといえば「見えざる手」が先ず想起される。各個人が利己心に従って行動する時「見えざる手」が働いて経済を拡大させていくというものだ。その個人の究極の幸福は「平静」だ。スミスは重商主義を批判する。何故なら経済の発展段階を逆走するものだからだ。農業、製造業、貿易の順でなければならない。しかし元に戻す時急激に戻してはならないと言う。急激な変革は軋轢を生む。現実的で漸進的な改革が必要なのだ。スミスは人に対する洞察が鋭い
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ばたやん@かみがた
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《「共感」に支えられる成長と繁栄》(1)今回は本の内容から離れたところから始めさせていただきます。この間、SNSでアウシュビッツの男女看守たちが休日を楽しそうに過ごしている戦中の写真を取り上げ「ホント嫌」と呟く人がいましてね。半ばまで同意できるんですが、そういう我々と何ら変わらない普通の人びとが人類最大の犯罪を行ってたり、その片棒担わされてたのが映画・小説『関心領域』の最大のテーマでは無かったか。人はそのような悪魔的犯罪を犯した人々を当然のように「悪魔視」して「コイツらは無縁の存在」と見なす(1/6)
ばたやん@かみがた

つながっているのだ、と堂目先生は力説されます。 (4)スミスが『国富論』を書き下ろしたのは、丁度米国による対米独立戦争の真っ最中でした。(3)に見た観点から「自由で公正な市場経済」を望ましいとするスミスは、本国・植民地の人々を共に縛り付け、かつ効率の良いリソースの分配を歪ませる重商主義や植民地支配には反対の立場でした。一方で、革命や独裁による社会的混乱・秩序崩壊を良しとはしないスミスが、独立戦争の行く末を占い英国はどうすべきかなど『国富論』に盛り込んだ内容は、思弁家だけに甘んじるを良しとは(5/6)

12/23 19:19
ばたやん@かみがた

せず、彼が時事問題に対しても雄弁であったことを余すことなく物語ります。 (5)人間に対して過度な思い入れはせず、さりとて全てを否定するのではなく、ありのままの姿・本性を受け入れていきそこから思想を紡ぎ出そうとする、スミスの冷静沈着な姿勢に先ず惹かれます。そしてその中で少しでも良き方向へ社会へ向かわせしめようとする実務的態度に好感します。我々が今、直面する社会の様々な問題に対して取るべきあり方とはそのようなものでは無いでしょうか?(2009年初読)(6/6)

12/23 19:19
5件のコメントを全て見る
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かおっくす
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『道徳感情論』では、公平な観察者の感情や行為が当事者ぬの感情や行為と一致すれば是認し、異なれば否認する。結果に影響されて称賛や非難の程度をかえる不規則性という見えざる手により住みやすい社会となる。一般的諸規則を顧慮する義務の感覚。富に対する野心により、人類が物質的に豊かになる。財産への道を歩む中で徳への道を踏み外すことがある。『国富論』での繁栄の一般原理は分業と資本蓄積である。経済は農業、製造業、外国貿易の順で発展する。社会は地主、資本家、労働者の三階級からなり、資本家は地主から土地を借り、労働者を雇う。
かおっくす

スミスは、規制を徐々に緩和するのが望ましいという。急激な改革は、多くの利害関係者に損失をもたらし、不満を招く。理想は自然的自由の体系である。植民地貿易の独占の結果は国民の大多数にとって、利益ではなく損失である。スミスの姿勢の根底には、人間にとって最も重要なのは心の平静を保つことであるという信念があるように思われる。『国富論』の概要を知りたくて読んだが、『道徳感情論』の公平な観察者が興味深かった。

08/14 21:32
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寝落ち6段
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社会は経済で成り立っている。富む者も弱い人も救われる正常な社会にするために、正常な経済活動が行われなければならない。それは、平等で公正な活動で、重い規制のない自由なものでなければならない。正常な経済活動をする人間は心中に「公平な観察者」を形成し、正義をなす。そうすれば、自然と「見えざる手」で、社会が良い方向に向かうだろう。そこで生まれる富には、人と人とを繋ぎ、社会全体を押し上げる効果がある。スミスは、そんな社会を思い描いた。これは、スミスの人類に対する愛と希望だったのではないか。社会は未だに至っていない。
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地面の底
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公平な観察者による承認。公平な観察者は社会の慣習や流行に影響を受ける。社会的自我に相当するだろう。人類愛は不可能。慣行的同感によって祖国愛が生じる。閉じた社会。分業は人間本性のなかの交換性向から生じる。また、余剰生産物がなくては分業は可能にならない。
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たいよ
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【メモ】国富論における「見えざる手」やスミスの唱える自由主義経済の前提は道徳感情論にある。そして、スミスの描く経済主体たる人間が、利己心のみに基づく人間ではないことに驚きを持った。前提や仮説を知らずに、学ぶと誤った解釈になることを痛感させられた。
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Kappa
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途中まで時間切れ。「徳への道」と「財産への道」は両方一緒の歩むものだとスミスさんは考えていたようだ。徳や英知を持つ人に、人は富を与えようと思うだろうし、富をもてばそれを独り占めして他に人が困っているのを見過ごせないだろう。。。という風に。そうなれば素晴らしいが、現実をみると理想論に聞こえてしまう。時間ができたときに最後まで読みたい。
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あったろう
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「見えざる手」という言葉で知られた有名人だが、もとより原典を読んだことはなく、詳細は知らなかった。この本を読んで中庸の勧めという言葉を思い出した。福沢諭吉も意見の押しつけや暴利行為を非難していたが、福澤はスミスを読んでいたのだろうか。時間をみて原典にあたろうと思う。
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Francis
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10年間積読。アダム・スミス入門としては日本ではこれが一番良さそう。原著を読んだだけでは良く分からなかった「道徳感情論」の内容がこの本を読むことでようやく理解できた。「国富論」は概ね理解してはいたが、この本での著者の見解には完全同意。出来れば政府の役割、租税原則、そして東インド会社などの当時の株式会社に対してスミスがどう感じていたかも書いてほしかった。
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Jackie
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すごくいい本だった。私のようなド素人にもわかりやすく書いてある。イメージではもっとドラスティックな主張しているのかと思っていたが、同感を重んじることが前提での見えざる手だったり、現実的な段階を踏んだ改革を主張していたりとても理解しやすい内容だった。そういえばwhisper words of wisdom, let it beと歌っていたグループもイギリスだったな
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ライン協定
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 大体この内容だったと思う。ハシビロコウが描かれていた本もある。他が言いたいのは、どこが経済なのか?という事らしい。人に当たるも何も、アダム・スミスは、前歯が出ており、早口で捲し立てる様に話すと書いてある。
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ツカモトカネユキ
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2008年発行。「見えざる手」で有名なアダム・スミスを「道徳感情論」「国富論」の両輪で解説されています。初めには世界史でアダム・スミスの名を聞くのですが、「国富論」に偏った教えしかされてないのは、残念に思いました。現在の見えないものに対しての投資が、超重商主義になりアダム・スミスの著作当時より懸念されたことが全く方向修正されず、目先の身に動く悪い方向へ広がっているのを実感できます。アダム・スミスの性善説に基づいた考え方は、素晴らしいですが、その分悲しい現実を思い知らされました。
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ふじこ
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弱者(貧困層)を救うのは、分配よりも"仕事"を与えることだ、というスミスの主張に愛を感じる。仕事があれば、社会的な存在として認められ、軽視されることはない。こうした人間観や同感から考察してまとめられたスミスの思想体系、経済学の鋭さに驚かされる。終章の苦しみは永続的ではなく、いずれ適応して平静を取り戻せる(意訳)のくだりに慰められ、感動して泣いてしまった。
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Y.m.Kim2
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ネタバレ・中日 書評掲載★★★『たしかにスミスは、『国富論』において、個人の利己心に基づいた経済行動が社会全体の利益をもたらすと論じた。しかしながら、そこで想定される個人は、社会から切り離された孤立的存在ではなく、他人に同感し、他人から同感されることを求める社会的存在としての個人なのである。社会的存在としての個人が、胸中の公平な観察者の是認という制約条件のもとで、自分の経済的利益を最大にするように行動する。これが、スミスの仮定する個人の経済行動なのである。』
Y.m.Kim2

「神の見えざる手」の陰には、見えざる絆が必要ということでしょうか。自由放任だからといって、何をしてもよいということにはなりませんし、それで丸く収まるとスミスは言っていません。「公平な観察者」の視点を内にもって、周囲の人と協調する。それは個人だけでなく企業についても言えることで、そのような企業が増えれば政府の役割は必然的に小さくなっても問題ない。「神」はどこかにいるのではなく、私たちの心の中に必要なようです。

07/05 22:25
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サボテン
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アダムスミスの主要著書『道徳感情論』『国富論』について、わかりやすくまとめてある。共感、社会性のある人間はフェアプレイの精神でもって競争することで豊かになる。賢い部分と弱い部分のある人間だが、弱さがあるから見栄も張りたいし、野心があるから頑張ることができる。
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tetekoguma
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アダム・スミスの『道徳感情論』と『国富論』は重要な古典ですが私自身通読したことがありません。そろそろ読みたくなってきたので手始めに入門書を読んでみました。『道徳感情論』の方は、どちらかというと倫理学的な内容ですが、自分の中にもう一人の「観察者」がいるというモデルは心理学的なアプローチで面白いですね。『国富論』も市場経済や経済発展に、心理学的な要素をもとに自己組織化的な要素を見出しているようで、それが2つの著作をつないでいるようにも思えます。
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天乃ジャック
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アダム・スミスといえば、「見えざる手」から自由放任主義者というイメージを持ちがちですが、著者は「道徳感情論」と「国富論」を再検討することで異なるイメージを示しています。/真の幸福は富や地位の獲得にはなく、それらを熱心に求めることは個人の人生をむしろ不幸にする。幸福は平静と享楽にある。大きな富を獲得したとしても、実際には、幸福はほとんど増加しない。改革はそれによって損害を被る人びとの感情に配慮してすすめなければならない。社会的成功の大志を抱きつつも、自分の心の平静にとって本当は何があれば足りるかを
天乃ジャック

心の奥底で知っていなければならない。幸福の中で傲慢になることなく、また不幸の中で絶望することなく、自分を平静な状態に引き戻してくれる強さが自分の中にあることを信じて生きていかなければならない。/病気で衰弱する友人のために「国富論」の出版を早めたという、スミスの人柄が窺えるエピソードが紹介されていました。本書を読み、アダム・スミスは経済学者というより、哲学・倫理学者という印象が強くなりました。

04/09 10:19
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die_Stimme
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アダム・スミスの印象がガラッと変わった。『国富論』では個人の利己心にもとづく経済活動が社会全体の利益をもたらすことを論じたが、「しかしながら、そこで想定される個人は、社会から切り離された孤立的存在ではなく、他人に同感し、他人から同感されることを求める社会的存在としての個人なのである」。と同時に、スミスの議論には他者が存在しないような印象も持った。あくまでも他人を共感可能な、自分と似たことを感じて、欲望する何か、と考えているのではないか。そういう意味では今のトレンドとは折り合い悪いとも感じた。
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うえぽん
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もともとは留学したエディンバラ大のヒュームについての本を読みたいと思ったが、先に同時代に同じスコットランドで過ごしたスミスを再評価したこの本に出会い、読むことにした。社会的存在としての人間の幸福とは心が平静であること、つまり手近にあるものを大切にし、それらに満足することであることだとし、また、賢明さと弱さの両方を持つ人間がいかに弱さに基づく財産形成の野心や競争を賢明さに基づく社会秩序によって制御するかが重要だと説いたスミスの言葉は、「体系の人」が跋扈する混迷の日本に、深く突き刺さるものと考えた。
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watarum
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なかなか面白かった。出た当時にかなり話題になった本だったけど、読む機会を逃してたが、やっぱり話題になるだけの良書。啓蒙時代の哲学者って、プリミティブなところから論を立てていくから、面白いよね。もっと読みたくなってくる。アダム・スミスの道徳感情論で展開する論なんて、ほとんど現代の進化心理学とか行動経済学みたいな感じだなあと思って読んでたら、あとがきで脳科学や行動経済学の話も出てきて、やっぱりそうかあってなった。
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シマ
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アダム・スミスは国富を第一とする重商主義を批判し、分業と交易による市場を見出す。人間には物を交換しようとする性向があるため交換の場が形成され、単一の生産物を生産する分業が可能となる。良質な物を生産するのは富を得るためだが、市場に出すことで社会に繁栄をもたらす、そこには公共心ではなく野心があるだけ。しかし市場では自らの富しか考えない者(重商主義)は淘汰されてゆく。私たちは共感を快と感じ、交際が広まり深まることで利害心のない公平な観察者が是認される。市場とは富を媒介にして見知らぬ者同士が世話を交換する場。
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ジャック天野
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○市場は本来互恵の場であって、競争の場ではない。 ○倒錯した祖国への愛 ○体系の人 この辺に感動しました。
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AKI
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経済学の祖としてのイメージが強いアダムスミスだが、その学の根底には『道徳感情論』に現れる人間観にある。人間を共感せざるを得ない存在として描き出すことで、社会を秩序立てる秩序を見た。
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Mealla0v0
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アダム・スミスの『国富論』を読む前提として『道徳感情論』を置く。このことによって、経済自由主義のホモ・エコノミクス像からすれば意外にも見える人間像を提示する。「公平な観察者」というモデルを示すことで、社会は秩序を形成する特性を持つことを明らかにする。市場という秩序像の原点。人間は賢くもあるが弱くもある。市場は本来、人間の共感能力と交換性向が発揮される互恵の場であるが、弱さゆえに財を求めるがゆえに競争の場に転化する。この競争が保障されるには正義が必要となる。これが市場の持つ秩序維持機能である。
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めぐりん
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生涯に触れた後、【Ⅰ】道徳感情論で、人間の共感力を仮説し社会秩序・繁栄をもたらされると議論。【Ⅱ】国富論では、互恵の場として市場を捉え、Fair Playが必要とか、貨幣=富の錯覚などに触れた点を紹介。階級と資本蓄積はマルクスの議論に影響し、欧州歴史の発展と植民地主義は米国植民地の将来を予想。更に、国際諸国間の繫栄が共感をもたらす可能性を示し、「万民の法」も構想。アダムスミスの多様な側面と強い影響が2つの書から読み解けて興味深い。スミスは経済学に繋がる問題設定をしたが、経済学者ではないことがわかる。
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a.k.a.Jay-V
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アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書) 見えざる手のイメージしか無かったが、取りように取ってはクロポトキンの相互扶助論を彷彿させる箇所もあり、偏見は無くなり誤解は解けた。
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yokkoishotaro
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とても重要な論点や視点を与えてくれた。個人的にあまり注目していなかったが、しっかりとアダム・スミスや啓蒙主義を見直してみたいと思った。
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Hiroshi
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岩波新書の「アダム・スミス」は市民社会に関する社会学者と捉えていたが、本書では市場経済に関する斬新な理論を見出し、バランスの取れた情熱と冷静さを持つ学者と見ている。「道徳感情論」と「国富論」を読み、スミスの真意を追究する本。「道徳感情論」では社会秩序を導く人間性は何かを明らかにする。道徳原理は同感に基づく。各人は胸中に公平な観察者を形成し、自分の感情や行為が胸中の観察者から称賛又は非難されないものになるように努力する。慈恵と正義だ。慈恵はやった方がよいがやらなくてもよい。だが正義は守られなくてはならない。
Hiroshi

胸中の観察者の判断に従う人を賢人、常に世間の評判を気にする人を弱い人と呼ぶ。全ての人は賢人と弱い人の部分を持つ。公平な観察者の判断基準が一般諸規則を形成し、一般諸規則を義務として守る。義務の感覚によって制御されるものは利己心や慈愛心だ。社会の繁栄を導く本性は何か。人は他人からの同感を得るためにも富や高い地位を望む。弱い人は虚栄心があるので勤勉に働き、必要以上に富を得ようとする。徳と財産で評価を得たいが、多くの人は徳よりも財産の獲得を優先させる。公平な観察者が是認する財産獲得方法は正義感に制御された野心だ。

05/24 19:23
Hiroshi

弱さも見えざる手に導かれて繁栄に貢献する。国際秩序では公平な観察者が周りにいないか遠すぎる。その為各国は勝手な主張をする。「国富論」では重商主義と違い、富は分業から発生する。一国の労働全体に占める生産的労働の割合は、生産的労働を雇用する為に用いられる資本の量に依存する。資本投下の順序は農業・製造業・外国貿易だ。地主・資本家・労働者のうち資本家が経済を動かす。資本蓄積により不生産的労働を生産的労働に切り替える。これは利己心で行われるが、利己心も正義により制御されている。見えざる手は正義による制御で機能する。

05/24 19:23
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スターライト
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友人との読書会で『道徳感情論』をやっているので、その理解の一助として読んでみた。分厚いあの著書を分かりやすくまとめて紹介されていて、人間は社会的な存在であるために他人を意識して生きていること、それでも人間は過ちを犯したりするので「中立な観察者」を設定し、そこから見た自分や他人のふるまいをどう見るかなどをスミスが重視していることがわかった。それを基礎としての『国富論』であり、両著は二つで一つの書物だと感じた。現実はスミスの構想から外れてしまったが、アメリカの独立とイギリスが取るべき立場の慧眼はすごい。
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小國晴郎
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アダム・スミスの国富論は、政府による規制を極力撤廃し、自由な競走を促すことが経済効率を高め、結果的に国の繁栄に結びつくことを主張する。これは決して時の流れに任せよということではない。これが可能となる前提には国民の正しい道徳観・社会観があり、これなしでは国富は実現されない。この正しい道徳観・社会観の本質に迫ったのが道徳感情論である。つまり、アダム・スミスの国富論を正しく理解するには、道徳感情論の理解が欠かせないのである。
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土筆の子
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ネタバレ『道徳感情論』と『国富論』において展開されるスミスの議論を、社会の秩序と繁栄に関する、論理一貫した1つの思想体系として再構築を目指したもの。アダムスミスが倫理を考えていたことがよくわかります。 序章:光と闇の時代、 第1章:秩序を導く人間本性、 第2章:繁栄を導く人間本性、 第3章:国際秩序の可能性、 第4章:『国富論』の概略、 第5章:繁栄の一般原理(1)―分業、 第6章:繁栄の一般原理(2)―資本蓄積、 第7章:現実の歴史と重商主義の経済政策、 第8章:今なすべきこと、 終章:スミスの遺産
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わたぼう
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スミスはもっぱら自由主義経済の祖というイメージがあるが、実際は、著書『道徳感情論』で、共感と公平な観察者の形成の必要性を唱えるなど、啓蒙主義者の側面も強い。その背景には、18世紀当時、資本主義で進んでいた貧困や格差問題への危機意識があったのだろう。
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chang-3
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アダム・スミスの実像は、世界史や経済学で学ぶイメージとは大きく異なる。見えざる手とは、人間の感情と公平な観察者(良心)の作用。他人の目を意識する人間の弱さが社会繁栄の原動力となり、人間の賢明さが社会秩序をもたらす。交換は人間の本性。市場は本来互恵の場であって競争の場ではない。貨幣を富と錯覚させる重商主義政策は間違い。資本家階級は公共の利益を左右するキーマン。人々の感情を無視した急激な改革はかえって社会秩序を不安定にする。優先順位の見極めとバランスが大事。ストア派哲学の影響。実力も運のうち。脳科学への示唆。
0255文字
Nepenthes
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素晴らしい哲学書。スミスは真の幸福は心の平静であり、幸福を得るために多くのものは必要ないと信じた/真の幸福を得るための手段は手近にある/富や地位は手近にある幸福を犠牲にしてまで追求する価値はない/人間の心は自然に平静の状態に戻る/快楽と幸福の度合いに貧富は関係無い。得られる享楽は変わらない/不幸な結末を迎えた人々の不幸は「良い状態がいつだったのかを知らず、それを維持出来なかった」ことにある/等々、名言の宝庫。経済を通して個人の幸福を見つめたアダムスミスの哲学者としての面を見事に浮かび上がらせた名著。
0255文字
Bluemoonbooks
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アダム・スミスは人間の本性の考察をもって、 社会の秩序と繁栄を成り立たせる普遍的な原理を見出そうとしていた。つまり、人間はどんなに利己的な存在であるとしても、他人の運不運に関心を持ち、他人の幸福を自分にとって必要なものだと感じる動物であり、それこそが社会秩序を基礎づける原理だと。 そして、個人が自分の中に、冷静な「公平な観察者」を持ち、自分の感情や行為を分析・判断していく必要があると。なんだかとても人間くさく、人間をよく理解しているこの思想が好きだと感じた。いい本でした。
0255文字
MT
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『道徳感情論』と『国富論』が分かりやすく解説されており、アダムスミスの思想体系が理解できた。 特に印象深かったのは下記3点であった。 ①ベースとなる生活基盤があれば、それ以上の富を求めなくても幸福になれるという主張 ②『財産への道』と『徳への道』が各々あるという主張 ③心の中の『公平な観察者』という概念 これらの事は色褪せる事なく、現代社会にも当てはまる内容であった。定期的に再読したい本。
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Kai Kajitani
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 本書によれば、スミスは必ずしも徳の高くない「弱い人」をして「公共性」に向かわしめる装置として「市場」を高く評価した。ジェイン・ジェイコブズが『市場の倫理 統治の倫理』で切り開いた発想の起源はこの辺に求められるのかもしれない。また、アメリカ独立問題をめぐるスミスの所説も、彼の倫理学の実践として興味深かった。現在の米中両国に求められるのも、本書が説くような「人類の存続と繁栄を希求し,時々の政策課題に真摯に対応し、現状にたいして熱狂も絶望もしない等身大の人間に幸福の境地を見」る平衡感覚なのではないだろうか。
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クレストン
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経済学史が専門の方によるアダムスミスに関する本。私はスミスを、経済学の父で自由経済を概念的に生み出した人くらいの微妙な解像度で捉えていたが、国富論の内容は前作である道徳感情論で記した彼の道徳観念が色濃く反映された内容であることが分かった。ただ、作者の専門分野にかかる国富論の内容以後は専門度が深くなり今の自分ではいまいち追いきれなかった。新書1冊でアダムスミスの著作のあらすじ、思想、当時の歴史とこの内容がどう関わり合っていくかが分かります。レベルは学術書と同じくらいだと思います。
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アダム・スミス: 『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書 1936)評価66感想・レビュー239