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孤児 (フィクションのエル・ドラード)

感想・レビュー
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タキタカンセイ
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ネタバレ保坂和志氏が激賞していたので読んでみました。簡単に言うと「16世紀、南米大陸に上陸した船の一船員だった少年の数奇な一生を描いた物語」となるんだけれども、カニバリズムという衝撃的な題材を扱っていながら「人間とは何か」「世界とは何か」という極めて哲学的な展開に。インディオたちと私たち、どちらが「文化的」「進歩的」なのか。「命よりも物を大切にする」という彼らの「考え方」が大変面白い。作者はこの物語をほとんど「想像」だけで書いたという。そういう意味ではある種のSFとも言えるかもしれない。いやはや凄い小説でした。
0255文字
Millet.K
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“概して人生とは、歳月とともに深まっていく孤独の井戸に他ならない”(P039)探検船団に加った元孤児の独白。上陸部隊はインディオに襲撃され全員食われる。なぜか孤児だけ丁重に扱われ十年の歳月が…皆川博子『天涯図書館』の一冊は異形読みにど真ん中、漂泊者の物語。前半は叙事詩の如く、終盤は抒情をも醸しつつ清澄で思索的に。食人行為は特に強調されない。空の青、海そして金色の太陽。月蝕の神秘。真の色、真の知。ラテンアメリカ文学ニガテでも意外と読みやすい。2013年邦訳刊行で既に旧書扱いとは…毒毒度:5 おあと5419冊
Millet.K

“緑の葉を敷き詰めた上に積み重なった肉塊の山には、かつてそれが探検を共にした仲間の死体だったことを偲ばせるものは何も見えず、頭は一つもなくなって”(P045)“地面を引きずられた際の汚れだと思っていたものは、実は、味付けのための香草で”(P047)“黒い焦げ目のつき始めた表面が縦に裂け始め、その間から流れ出た肉汁が脂とともに滴り落ち”(P050)“私はその見知らぬ動物の肉を食べてみたくなったのだ。とうとうその機会は訪れなかったが”(P051)年に一度の饗宴を「観察」し記憶する。自分は証人なのか?

03/10 09:21
Millet.K

“毎晩十時半になると、義理の娘が私に夕食を運んでくれる” “白い皿が、台所の瓶から出したばかりの緑と黒のオリーブを乗せて少し輝く横で、ワインを入れた細長いコップは薄い蜜色の液体から強い大地の匂いを立ち昇らせ、多様な形で両者に照り返された蠟燭の焔は、静かな空気のなかで、いつもの高みと落ち着きを追い求めているようだ。別の白い皿に乗った分厚いパンは、重々しく存在感を示し”(P130)身を落ち着けた。孤児を引き取り、起業した。孫も曽孫もいる。読書という音のない音楽が慰めとなっている。

03/10 09:22
0255文字
heian794uguisu
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孤児として船乗りとなった若者が未開の地で原住民に襲撃され、捕虜として過ごした日々を回想しながら半生を語る。序盤のギラギラした躍動感とは裏腹にことのほか哲学的に物語は進む。前半後半で違う意味で圧巻。あなたもわたしもデフ・ギー。
0255文字
イワシ
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「同じ経験を誰かと共にすると、他者と記憶を共有しているように人は思い込むものだが、実際には、記憶は一人ひとり違っており、死が孤独であるのと同じく、記憶もやはり孤独を免れない。記憶とは独房のようなものであり、生まれてから死ぬまで、人は記憶の独房に閉ざされて生きている。つまり記憶とは死なのだ。」
0255文字
Takashi Takeuchi
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16世紀の大航海時代、未知の大陸に夢馳せる孤児は船に飛び乗るが、上陸した地で食人インディオに襲われる。なぜか唯一人食べられなかった彼は食人族と共に暮らすことに…粗筋を読めばホラーのようだが、実際は人間とは、生きること(食、SEX、物、金、戦争、宗教、倫理)、死について考えさせられる哲学的な作品。しかし文明批判が語られるのではなく、主人公の詳細な観察の下に語られるインディオの生態を通して突きつけられるのだ、我々にはショッキングな食人も彼らには意味を持つ。受け入れ難い文化を滅ぼして良いのか。
0255文字
のりまき
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ネタバレ面白くはないです。人肉を食らう場面も恐ろしいはずなのに、焼き肉パーティーのような様相です。長々、「哲学的思考」とやらを語られ、疲弊しました。私には合いませんでした。
0255文字
刳森伸一
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インディアンによる強烈なカルバニズムの描写で度肝を抜かせるが、語りは徐々に内省的、哲学的に移行していく。我々とは文化、哲学、言語が全く異なるインディアンの不可思議な生活と生き様を通して、我々の人生と死の表層にべったりと塗られた墨の裏に隠れた「真実」を探っているのだと思う。その挑発的な「真実」に必ずしも同意するわけではないが、看過できない説得力と不気味さを持っている。
0255文字
saeta
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素晴らしい小説だった。未開のジャングルに分け入って行く南米の小説といえば、カルペンティエルの「失われた足跡 」
やバルガス・リョサの「密林の語り部」を読みながら思い浮かべたが、趣きがまた異なり、この著者の創造力に感服しました。今まで翻訳化もされておらず、もっと読んでみたくなる未知の小説・作家である。
0255文字
だまお
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回顧録形式だからかライブ感が乏しいが、終盤まとめに入ってからは引き締まっててよい。
0255文字
ksh
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一体どのようにして著者はこれほどまでにインディオの生活の深淵を描くことが出来たのだろう。これがすべて、想像の仕事とは到底思えない。流麗な言葉で語られるのは我々とは全く違う視点で生きる人々への深い眼差しだ。詩的で美しい言葉に彩られながら一人の男によって露になる大地に根ざした生活。それは決して生易しくもなく、狂気と隣合わせのギリギリのものだ。その数々の鋭い洞察の言葉は理解することが出来ても体現することはなかなか出来るものではない。何度も読み返し、身体に染み込ませていかなければならないだろう。
0255文字
tipsy
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今月末から『彷徨える河』とゆう映画が公開される。(原題はEmbrace of the Serpent「蛇の抱擁」という意味だそうで、原題もいい)。白人探検家の手記をもとに、アマゾン先住民の目線から描かれるだろう神秘的な世界。幻覚や呪術に彩られたマジックリアリズム的な世界。見たいなと考えてたら本書をふと手に取ってしまい、まさかの夜中まで一気読み。おかげで寝不足。やはり再読して更に感じるが圧倒的物語だ。本書と映画は直接関係はないが、私たちの現代文明と、先住民族の文明、この2つの魂に触れる面では同じかも。
0255文字
tipsy
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インディオの捕虜から解放された後の独白。描写が秀逸で誤読を許さない圧倒的な文章に終始やられっぱなし。前半はわしづかみにされ引き出されていく感じだったが、密度の濃い哲学的雰囲気もあるので、耳を傾けているうちに人間の思考の変化が見えてくる。「読書と言う音の無い音楽に癒される」と言う言葉が出てくるが、文章がきれいに流れているから正に音楽を聴いているかの如く、自然な形で残酷な場面も頭に入ってきた。孤独の中にいても文学、音楽のはるか遠くのものへ思いを馳せる喜びはある。私たちは、再び生まれるのだ。
0255文字
ヘンリー八世が馬上試合で死んだことは内緒
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言語学SF
0255文字
fishdeleuze
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非常に素晴らしい。だが、正直うまく消化できていない。読んで中に入ったものをテキストとして外に出す準備ができていない。まだ胸から腹のあいだになにやら塊がうごめいている感じがする。サエールは、アルゼンチンにおいては、ボルヘス、コルサタルと並ぶ代表的な作家の一人で、未邦訳の重鎮ともいわれていたが、本国においてはいわゆる玄人好みの作家といった存在で、(ピグリアやジョサ(リョサ)、フエンテスらの後押しもあり)広く社会に認知されたのは90年代になってからだという。→
fishdeleuze

→1.幻想的でありながら、死と生、時間と生、今見ているものは本当は見ていないのかもしれないといったような知覚と認識、そういったフレーズが、薄くもやの掛かった雲で覆われた月がうっすらと空を照らすように、作品を照らしている。訳者曰くこうした哲学的フレーヴァーが足枷となって、作品が広く受容されるのを妨げていたとのこと。

02/11 21:30
fishdeleuze

→2.個人的には、このフレーヴァーがツボで、ラテンアメリカ風味の幻想的な風景と、哲学的思弁がまざった世界は、なぜかとても視覚的に訴えるものでありながら、熱狂の奥で醒めた言葉が足跡を刻み、強い印象を残した。

02/11 21:30
0255文字
横山
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なんでこんなに面白い小説が三十年も翻訳されなかったのだろう。
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gu
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「熱帯」をダシにした哲学小説、と言うと聞こえは悪いが、ある世界観を学び、それによって思索するまでの成長物語に思えた。人食い人種達の中に一人放り込まれた主人公にとって、彼らのものの見方や感じ方は、一個の異なる宇宙のようなものだ。記憶喪失の男が浜辺で錆びた自転車と自分との関係について思索するという意味でのSFに近い気がする。ちょっと違うか。
0255文字
tsuki
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再読。淡々として詩的な文章は読みやすいが、濃密な語りは読みとばすことを許さないほどで、その妙味ともいえるギャップは、もとの文章がそうなのか、翻訳のおかげなのか。わたしはインディオの世界でも戻ってきた世界でも恐ろしく孤独で、物語ではそこが強調されてもいいはずなのにそれほど触れられず、老いたわたしの思索はもっと大きなものに向かっていく。最後の場面を読み終えた時、世界がそういうものなら、わたしの孤独は敢えて取り上げる必要がなかったのか、とふと思った。もっと翻訳を読んでみたい。
0255文字
Y.Yokota
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主人公が原住民族と接触して感じたこと、例えば自分たちの住む世界や生と死についての観念などはとても現実的で、日本という国のテクノロジーを享受してる自分が言えたことではないと思いつつも、人類が無駄な仮面を剥いだ生活を送れたら...と思い耽ってしまう。言い方が悪いが原住民バンザイと言うのではなく、産業大国に居ってもこういった観念のもとに生活することは出来そうだ。規律や因習さえ取っ払われるならの話。こう実生活に置き換えてしまうほど著者の文章は冴えて刺さる。
0255文字
N_dept
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•印象に残った一文:死を前にして頭が冴えわたる最期の数秒間より長い人生などあり得ない。20年だろうが30年だろうが、60年だろうが一万年だろうが、実体験としては皆同じであり、同じ長さなのだ。
0255文字
アドソ
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若干のきっかけはあったにしても、これがフィクションだとは信じがたいほどリアルな描写。そのリアルさは確かに近代日本人から見ると全然リアルじゃないんだけど。語り手のこの生活はいつまで続くのかと思いきや、早々に自国に帰ることができ、過ぎし日の解釈に充てられる。近代社会だけが人間の取りうるべき姿ではない、と警告するようで、作者の想像力には脱帽。
0255文字
雲水峡
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貸出し本の返却に伴い再読。やはり圧倒的。この水声社シリーズをいくつか読み、寺尾氏の翻訳もまた見事なのだろうと思い至る。哲学に明るくは無いのだが、これは現象学を物語にシミュレートしたものなのではないか。そしてレヴィ=ストロース以降、南米、いくつかの要素が著者を介して壮大な思索とストーリーに結実したと感じた。他の作品も訳出を待ってみたい。
雲水峡

主人公の晩年のくだりで、読書を「音のない音楽」と表現していたのが印象的。

06/25 14:37
0255文字
nakatta
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時に叙事的で、時には思弁的で、時には抒情的でもある。徹底的なモノローグから、かくも豊潤な虚構世界が生まれるのか、と圧倒された。脱帽とはこういうことと思う。全然似ていないし、旅芸人が出て来るのが同じというだけかもしれないけど、何となく横光利一の「時間」を思い出した。
0255文字
サトウキビ
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帯でボルヘスを引き合いにだしていたので、ひょっとして理解不可能なほどに難解なのではないかと心配したが、そんなことはなかった。内容は、インディオに囚われた「私」が、その体験を語るというものだが、食人という行為はあくまでもオマケに過ぎない。重要となるのがインディオの哲学というか世界観であり、これが東洋の諸行無常に似ているようで明らかに異なる。語り口は詩的であり、読んでて落ち着いた気持ちになることができる。
0255文字
vierge
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全体的にかなり濃密ですがもう少し長くてもよかったかなーと思いました。
0255文字
茉莉花
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哲学的でとっつきにくい部分もあるが、「わたし」自身や世界を冷静に分析する筆者の観察力がうかがえる。世の中や人間存在に対する一種の答えが呈されていると感じた。
0255文字
ときのき
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読んだ!
0255文字
宮永沙織
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ル・クレジオ的。タイミングが合わなかったのか、思索も哲学も頭に入って来なかったです。インディオのカニバリズム。淫蕩の祭り。気が向いたら再読します。
0255文字
安南
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ネタバレどこにも所属できない主人公の孤独、あちらの世界でもこちらの世界でも「傍観者」として宿命づけられた孤独が、冷え冷えと骨を軋ませるように伝わってくる。月明かりに照らされたとてつもない寂寥、無常観。その中での濃密な語りはまるで琵琶法師を思わせる。滑らかで美しい文章。思惟は螺旋を描くように緩やかに広がり、月蝕の闇に溶けていく。送り出したカヌーの横を泳くインディオ達の群が、後に救助された船上から見たときには死体と化し、まるで船を護衛しているようにともに川を下っていく。なんという印象的なシーンだろう。
安南

読友さん達の感想がみな良かったので、ずっと読みたいと思っていました。一昨日やっと手に入れることができました。でも想像していたのとは全く違いましたね。あ、よい意味ですよ(^-^)

02/23 13:03
0255文字
minota
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大自然に身を委ねると、生命の神秘を感じるとともに何か得体の知れない恐怖を感じることがある。 「孤児」を読んでいるあいだは、そんな感覚に襲われていたし変な夢をたくさんみた。 本を読むというよりは、魂に直接問いかけられているような。
0255文字
h
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かったるい哲学書
0255文字
長谷川透
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見習い水夫だった主人公は冒険の中でインディオの襲撃に遇い、船隊長を殺害され、自らは囚われの身となる。原住民の村で目撃したのは、人肉喰、乱交、乱痴気騒ぎなどの蛮行、日常の奇異。野蛮人の全ての行動は、解体、解放に結びつくと主人公は考え付くが、その行動原理も結局は快楽に結びつけるしかなく、腑に落ちる答えがでない。幸運にも西洋圏へと戻った彼は、そこに留まりながら野蛮の地で立証できなかった命題について考えたに違いない。書く事、独白する事もまた自己の解体だ。筆を置いた後、彼は快楽へと辿りつくことができたのだろうか。
0255文字
Roti
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食人ものではあるが、凄惨さやおぞましさを感じさせないのは語り口のうまさもあるが、食人を行うインディオがそれを文化として、また祭事として行っており、逆にそれが人間らしさ、その崇高さを感じさせるためだと思う。それはアスファルトの上の動物の死骸には目を逸らしてしまうが、土の上で生命の終わりを迎えた動物の死骸や、拡がって土に浸み込もうとする血は美しく目を奪われる感覚を想起させる。それは近代文明が、現代社会の人間が失ってきたものの輝きであり、尊さである。それがこの小説を最も輝かせていると思う。
0255文字
白のヒメ
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一人の孤児がインディアス探検の船に見習いとして乗船し、現地調査に従事している時にインディオに襲われ、他は皆殺しにされたがその孤児だけは何故だか命を助けられ、その後救助されるまで10年インディオの中で暮らしたという実話をもとに創られたフィクション。とにかく、当時の人喰いのインディオ達の生活が衝撃的で、その衝撃が主人公のその後の人格形成の主軸になっている。波乱万丈の末に主人公は言う。「身をもって世界の無常を思い知るところにより安心感は生まれる」この心境に至るには、こんな凄い体験をしなければいけないのか。蒼白。
白のヒメ

poshさん、しろは元気ですよ~^^

09/13 21:54
posh

そうですか。良かった!(^-^)

09/13 22:10
3件のコメントを全て見る
0255文字
雲水峡
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深い独白。インディオの生態と自身の孤児という出自を通して人間存在について深く考察していく様は、想像していた文化人類学的な視点を含む物語というより哲学的であった。だが圧倒的に物語。ラストへ至る流れは呆然とするような美しさだった。終わってしまうのが惜しいような言葉・物語のエネルギーを浴びた感。南米偏愛続行中(音楽含む)。
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