形式:新書
出版社:白水社
2) 詩学『国家』のプラトーンはホメーロスに対する賛嘆を隠さない。『パイドロス』では見せかけや錯覚なのか、神の賜物である錯乱を通じて到達する知の側の物なのか考えあぐねる。アリストテレースの芸術についての省察は主に『詩学』に含まれている。虚構として距離を起きながら経験することは純化された仕方で経験することができ、模倣すること、演じることによって快を得て自らを浄化する制作学である。
3) 人体の比例 4) 自然美 5) 感性的認識論 6) 趣味判断 美しさに関わる判断。客体の空間的、時間的な形式に基づいている。 7) 崇高 尺度における非限定、あるいは力の非限定に基づいている。崇高の経験は理性や道徳の理念によって媒介されるため部分的にしか美的ではない。崇高は表象不可能なもの、理念を感覚的に証言するもの、否定的呈示。 8) もののあわれ 102
18世紀末から、美学は「感性の学」から「芸術の哲学」へとシフトする。主な立場は、芸術の外部から哲学的なアプローチを行う、芸術それ自体に内在する哲学にアプローチする、芸術と哲学の根本的な同一性を主張するという三つの立場だ。20世紀には、芸術的挑戦が盛んになっていく。デュシャンの『泉』のように、作品とは何か、ジャンルとは何か、芸術とは何かを揺るがす作品が多く現れ、美から芸術が乖離し、芸術は脱定義、脱審美化の方向へと動いていく。
こうした芸術の流れへのアプローチの仕方として、社会史的な諸条件の分析を行うフランクフルト学派、美学に現象学の概念装置を適用する、現象学的美学、超越論的で観念論的な芸術理論のアンチテーゼとしての分析美学が存在する。
これがロマン主義である。すなわち、芸術はロマン主義者により、形而上的なものへ接近するキャリアとしての役割を持たされるようになったのである。また芸術についての言説については、ヘーゲルやバウムガルテン、ニーチェ、ハイデガーの各思想を構成する芸術の位置が述べられる。芸術と著名な思想体系の繋がりを知ることができる。第四章は、現代芸術およびフランクフルト学派、現象学的美学、分析美学について。結論の章は、美学への批判に加え仮想現実やコンピュターアートなど技術の進展に伴う美学の変化の展望について。
佐々木健一『美学への招待』よりも学術的である。また、西洋近代美学を批判的に検討する趣旨である井奥陽子『近代美学入門』に対して、本著は哲学・思想上の芸術に関する言説にも深く、また現代美学も扱っており包括的である。本著は広く深い稀有な美学入門書となっている。
いまはひとまず読んだ段階だが、美の分析の方法論をまとめてみるのもおもしろいだろう。つまり、人々にとっての美や感性の考え方のモデル作ってみることだ。だれかすでにやってそうであるけれど。
美学は学際的ゆえ、社会学、心理学、精神分析学、経済学、史学、記号学の協力も必要(137頁)。
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