アップダイクの短編で好きなのは、イギリス留学のなかでの微妙な恋愛模様を巧みに描いた「静物画」や、イギリスからの帰国を苦味たっぷりに描いた「帰郷」、アップダイク少年期の、無神論にかぶれたり釣り銭をちょろまかされたりする話を緻密に描いた作品群などでしょうか。ただ、有名な「A&P」や「妻を口説く」はたしかに巧緻な短編ですが、救い難く自己中心的な世界観が透けて見えて苦手です。
わたしは『走れウサギ』とかはだめなのですが、『農場』は泣けました。ダークなユーモア、風刺を入れつつ、対照的に母子の愛情を描き出す鮮やかさに感動しました。とはいいつつ、風刺は、祖母と孫が「人間保護区」とか真面目に語っているとか、かなりきつかったりします。
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