Amazonのレビューは2009年くらいから投稿しております。本の長めの感想は、アマゾンの「荒野の狼」の上記URLをご参照ください。本職は医学部で微生物学・免疫学・神経難病などの教育・研究をしております。現在は大阪在住ですが、アメリカで21年間医学教育・研究をしておりました。職場のURLは以下です。
https://www.med.kindai.ac.jp/microbio/
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浄瑠璃寺は主な建造物としては二つの国宝(三重塔と阿弥陀堂)を、収蔵品は仏像・絵画は寺が他の博物館に収蔵を寄託しているものも掲載されている。興味深いのは、p36-37に掲載の吉祥天女の厨子絵で、現在、国所蔵(東京藝術大学保管)と説明されているが、p102では、「厨子の扉絵八枚は盗み出され、模造の品が代わりに取り付けられているのが1897年に発覚した。本物の扉絵は東京美術学校美術館(現在の東京藝術大学)に所蔵されていた。」と書かれている。
これが事実であれば、国は盗品を所蔵していることになるが、現在は形の上だけでも浄瑠璃寺に返還して寄託という形にしているのか興味がもたれるところ。
本シリーズの他書と同様に、本書でも寺の歴史、当尾の石仏、庭園、文学散歩、吉祥天如、浄瑠璃寺の花々、文化財の簡潔な解説があるが、小さな寺であるため深みのある話ではない。「文学散歩」で紹介されている堀辰雄の短編「浄瑠璃寺の春」を読んでみたが、当時、寺は廃寺で、現在は特別公開の日にのみ見ることができる三重塔の薬師如来坐像も、管理している娘さんによって気軽に見せてもらえていた様子であることなどがわかる10分もあれば読める作品である。
巻頭エッセーは作家の立松和平で、住職の佐伯快勝のエッセー「現代へのメッセージ」も収録されているが、この二つは内容が乏しい。巻頭エッセーと住職のエッセーが、もっとも内容がないのも、このシリーズの残念な特徴。なお住職は4ページの「浄瑠璃寺の花々」も執筆しているが、こちらは阿川弘之の小説「雲の墓標」で、特攻隊の兵士が、出撃の前の夜に、九体寺(=浄瑠璃寺)のあやめとかきつばたの違いを論じ合ったことが紹介されるなど、興味深い内容になっている。
「文学散歩」で紹介されている堀辰雄の短編「浄瑠璃寺の春」と堀口大學の「浄瑠璃寺の秋」は国書刊行会「仏教の名随筆」にともに収録されているが、前者は1943年(昭和18年)の作品で、当時、寺は廃寺で、現在は特別公開の日にのみ見ることができる三重塔の薬師如来坐像も、管理している娘さんによって気軽に見せてもらえていた様子であることなどがわかる10分もあれば読める作品である。
後者は1964年(昭和39年)の作品で、前者の内容を受けており、娘さんのその後の話や、亡くなった堀辰雄のことにも触れている。この作品では、池の渚に小舟が一隻つながれており、これを見て「慈悲の船」だと叫んで父親の堀口九萬一を思い出す話がある。浄瑠璃寺の池には、2021年に訪問した際にも池に、小舟が打ち捨てられたように管理が悪い状態でおかれていた。この小舟の由緒については寺のパンフレットには説明がなかったが、堀口大學が短編で触れている小舟であれば、もう少し管理をしっかりして欲しいところ。
荒野の狼さん こんにちは 共読書本が一冊加わり、嬉しく思います。 昨日、東京国立博物館で開催中の、浄瑠璃寺九阿弥陀 修理完成記念『特別展 京都・南山城の仏像』を拝観して来ました。 日頃の仏像の学びの、関連書籍で観るのとは違う、感動『百聞は一見に如かず』に思い至りました。 何時も有り難うございます。🙋 宵待草
宵待草さん。仏像は現地ですと、遠方からしか鑑賞できなかったり、拝観日が限られていたりしますので、展覧会で近くから様々な角度でじっくりと鑑賞できるので、貴重な機会であったかと思われます。特に、京都の社寺は、寺宝の出し惜しみをするところが多いので、展覧会にする時のサービスを、現地でもして欲しいと思うことが多いです。その点、浄瑠璃寺は比較的、現地でも拝観できる仏像が多いのですが、奈良と京都の県境にありますので、交通の面では訪れにくい場所にあると思います。 今後とも宜しくお願いします。
追伸 やはり訪問されて居らっしゃるから、お詳しいですよね。💫 此方こそ、何時も学びを頂き感謝です。🍀 此れからも、宜しくお願い致します!✨ 宵待草