Amazonのレビューは2009年くらいから投稿しております。本の長めの感想は、アマゾンの「荒野の狼」の上記URLをご参照ください。本職は医学部で微生物学・免疫学・神経難病などの教育・研究をしております。現在は大阪在住ですが、アメリカで21年間医学教育・研究をしておりました。職場のURLは以下です。
https://www.med.kindai.ac.jp/microbio/
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この時点で、マルクは真理に従って行動しようとする熱をもっているが、真理をまだ持っておらず、探しているのだが、ロランは次のように言葉をかける。”あなたの真理はあなたの性質です。あなたの性質を裏切らないようにしなさい。ほかの人の性質をめとることによって、あなたは結婚するようにできていません。あなたは自分自身をめとるだけでも相当にすることがあります!何も棄ててはいけないんです!いっさいをもっていなさい!もっとも美しい調和を求めなさい。”
これに対して、マルクは、自分自身ですら自分の性質がわからないのに、ロランには何故わかるのか、自分が魂の決闘で倒れてしまったらどうするのかと尋ねる。するとロランは、”私はあなたに代わって知っています。死になさい、そしてなりなさい。”と親しく語りかける。ここでは、ロラン本人が、マルク(読者)が気がついていなっかった真理そのものといえる。ロランは、後にアンネットとも会い、深い理解を示すが(p315)、この挿話も感動的。
この物語の最大の感動は、絶望にあるアンネットに、かつて友人のブルーノが、クリシュナとナーラダのインド神話を語って聞かせる1ページにある(p311)。妻子を失い絶望するナーラダに対して限りなく優しいクリシュナのマーヤーの話は、この物語のクライマックスと呼応し、魂が揺さぶられる感動を呼び起こす。このマーヤー(まぼろし)の話は、(ロマンロランが伝記も書いている)インドの聖人ヴィヴェーカーナンダの「ギャーナ・ヨガ」にフルバージョンがあるので、この逸話に感動した人にはそちらも勧めたい。