[^1]: 『読書とは何か』河出書房新社,2022年1月 - https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309631479/
著者は自分自身のことを書評も本の執筆も自分に利益があるからやる利己主義的な書き手なのだと繰り返し強調している。であれば本書のような論考をわざわざ出版せずともよいはずだが,「本を書くことは知的な戦いを挑むことなのだと私は思う」(pp. 31-2)とも言っているのを考慮に入れるならば,本書を世に問うこともまた著者にとっては戦いなのだろう。全体を通じて,研究や知を巡る環境の悪化,特に断片的な情報ばかりがもてはやされ,体系的な知のあり方が軽視されている状況に警鐘を鳴らしているのはその戦略目標ゆえであるはずだ。
蛇足だが,著者は自分を「ネイティヴ京男」で「いけず」を入れる(p. 286),ストレートには読み解きにくい感じがする文の書き手だとも評価している。いままでは文体や語彙自体は明晰なもののように見えていて気がつかなかったが,過去読んだものも,そういう癖をお持ちなのだと認識しながら読み直しせば,また違った発見があるのかもしれない。(そういう記述を真に受けるところも私のナイーヴなところだが。)
人文系レフト寄りオタク。人権を尊重できる方歓迎。アフロ・アメリカンな音楽が好き。読書傾向は人文・社会科学系,音楽学などから漫画やライトノベルまで。詳しくは本棚を参照:https://bookmeter.com/users/515329/bookcases
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[^1]: 『読書とは何か』河出書房新社,2022年1月 - https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309631479/
著者は自分自身のことを書評も本の執筆も自分に利益があるからやる利己主義的な書き手なのだと繰り返し強調している。であれば本書のような論考をわざわざ出版せずともよいはずだが,「本を書くことは知的な戦いを挑むことなのだと私は思う」(pp. 31-2)とも言っているのを考慮に入れるならば,本書を世に問うこともまた著者にとっては戦いなのだろう。全体を通じて,研究や知を巡る環境の悪化,特に断片的な情報ばかりがもてはやされ,体系的な知のあり方が軽視されている状況に警鐘を鳴らしているのはその戦略目標ゆえであるはずだ。
蛇足だが,著者は自分を「ネイティヴ京男」で「いけず」を入れる(p. 286),ストレートには読み解きにくい感じがする文の書き手だとも評価している。いままでは文体や語彙自体は明晰なもののように見えていて気がつかなかったが,過去読んだものも,そういう癖をお持ちなのだと認識しながら読み直しせば,また違った発見があるのかもしれない。(そういう記述を真に受けるところも私のナイーヴなところだが。)