210頁。ドイツ国民はなぜ絶望的な情勢になっているにもかかわらず、抗戦を続けたのだろう。第一次大戦では総力戦の負担に耐えかねた国民は、キールの水平反乱にはじまるドイツ革命を引き起こし、戦争継続を不可能としたではないか。ならば、第二次大戦においても、ゼネストや蜂起によって、戦争を拒否することも可能ではなかったのか。どうして1944年7月20日のヒトラー暗殺とクーデターの試みの如き、国民大衆を代表しているとはいえない抵抗運動しか発生しなかったのであろうか。これらの疑問への回答に、連合国の無条件降伏要求がある。
けれども、近年の研究は、より醜悪な像を描きだしている。1930年代後半から第二次大戦前半の拡張政策の結果、併合・占領された国々からの収奪が、ドイツ国民であるがゆえの特権維持を可能にした。換言すれば、ドイツ国民は、ナチ政権の「共犯者」だったのである。国民にとって抗戦を放棄することは、単なる軍事的敗北のみならず、特権の停止、さらには、収奪への報復を意味していた。ゆえに、敗北必至の情勢になろうと、国民は、戦争以外の選択肢を採ることなく、ナチス・ドイツの崩壊まで戦い続けたというのが、今日の一般的な解釈であろう。
歴史、特に近現代史を中心に読みたい。
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210頁。ドイツ国民はなぜ絶望的な情勢になっているにもかかわらず、抗戦を続けたのだろう。第一次大戦では総力戦の負担に耐えかねた国民は、キールの水平反乱にはじまるドイツ革命を引き起こし、戦争継続を不可能としたではないか。ならば、第二次大戦においても、ゼネストや蜂起によって、戦争を拒否することも可能ではなかったのか。どうして1944年7月20日のヒトラー暗殺とクーデターの試みの如き、国民大衆を代表しているとはいえない抵抗運動しか発生しなかったのであろうか。これらの疑問への回答に、連合国の無条件降伏要求がある。
けれども、近年の研究は、より醜悪な像を描きだしている。1930年代後半から第二次大戦前半の拡張政策の結果、併合・占領された国々からの収奪が、ドイツ国民であるがゆえの特権維持を可能にした。換言すれば、ドイツ国民は、ナチ政権の「共犯者」だったのである。国民にとって抗戦を放棄することは、単なる軍事的敗北のみならず、特権の停止、さらには、収奪への報復を意味していた。ゆえに、敗北必至の情勢になろうと、国民は、戦争以外の選択肢を採ることなく、ナチス・ドイツの崩壊まで戦い続けたというのが、今日の一般的な解釈であろう。