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199頁。スターリングラードの勝利以後、ソ連のみが不均衡なほどにドイツの圧力を引き受けている、その代償として勢力圏の拡大を認めよと述べるまでになった。ソ連という重要な同盟国をつなぎとめる必要から、米英もこれを認めざるをえない。こうして、スターリンとソ連の外交目標は、ドイツを徹底的に打倒することを前提として、中・東欧の支配を米英に認めさせることへと固まっていく。スターリンは、独ソ不可侵条約とその付属議定書によって定められた勢力圏を、今度は米英との同盟によって、西に拡大しようともくろんだのである。
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210頁。ドイツ国民はなぜ絶望的な情勢になっているにもかかわらず、抗戦を続けたのだろう。第一次大戦では総力戦の負担に耐えかねた国民は、キールの水平反乱にはじまるドイツ革命を引き起こし、戦争継続を不可能としたではないか。ならば、第二次大戦においても、ゼネストや蜂起によって、戦争を拒否することも可能ではなかったのか。どうして1944年7月20日のヒトラー暗殺とクーデターの試みの如き、国民大衆を代表しているとはいえない抵抗運動しか発生しなかったのであろうか。これらの疑問への回答に、連合国の無条件降伏要求がある。

07/13 17:59
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けれども、近年の研究は、より醜悪な像を描きだしている。1930年代後半から第二次大戦前半の拡張政策の結果、併合・占領された国々からの収奪が、ドイツ国民であるがゆえの特権維持を可能にした。換言すれば、ドイツ国民は、ナチ政権の「共犯者」だったのである。国民にとって抗戦を放棄することは、単なる軍事的敗北のみならず、特権の停止、さらには、収奪への報復を意味していた。ゆえに、敗北必至の情勢になろうと、国民は、戦争以外の選択肢を採ることなく、ナチス・ドイツの崩壊まで戦い続けたというのが、今日の一般的な解釈であろう。

07/13 18:00
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プロフィール

登録日
2012/01/17(4821日経過)
記録初日
2012/01/18(4820日経過)
読んだ本
1513冊(1日平均0.31冊)
読んだページ
428563ページ(1日平均88ページ)
感想・レビュー
1493件(投稿率98.7%)
本棚
49棚
外部サイト
自己紹介

歴史、特に近現代史を中心に読みたい。

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