121頁。国は福島イノベーション・コースト構想なるものを立ち上げ、原発事故で甚大な被害を受けた浜通りに新たなハコモノを造るなどして、あたかも復興が進んでいるかのように見せかけている。構想では、日立、三菱、東芝などの原子力産業をはじめ、鹿島建設、大林組、熊谷組などのゼネコンが巨額の受注を得て、大規模工事を進めている。彼らは原発を建設・運転する時に大儲けをし、事故が起きれば除染で大儲けをし、そして今、復興で大儲けをしている。加害者でもあるゼネコン大手が復興で巨額の儲けを得、被害者たちの苦難は一層深まっている。
130頁。事故直後から政府は放射能の正しい拡散情報を国民に知らせようとはしなかった。2011年から福島県で始まった18歳以下の子どもを対象に行った甲状腺エコー検査では、甲状腺がん確定の疑いを含めた人数が増えていると報告されたにもかかわらず、有識者による検討委員会は、予想を超えるような多発が起きていることを認めた一方で、それを「放射能の影響ではなく、過剰診断である」とし、放射線起因性を否定する姿勢をとってきた。
138頁。2011年夏、伊達市は他の地域に先駆けて除染をスタートさせた。当時の仁志田昇司市長は「除染先進都市」を宣言。汚染度によって市内をA、B、Cのエリアに分けて除染をスタートさせた。一番放射線量が高いとされたAのエリアの除染は大手ゼネコンが引き受けたが、放射線量が少ないとされたCエリアは、必要なら自分たちでやってくださいと突き放され、被害者であるはずの住民たちが除染の担い手にされてしまった。さらに許せないのは「心の除染」という愚劣極まりない言葉である。除染作業を早々に終わらせるため、放射能は怖くない、
被曝を怖がるのは心が汚れているからだ、だから心を除染するのだと市長が言い出したのである。この旗振り役を引き受けたのが電通など広告代理店だ。莫大な予算をかけて作られた「放射線教育副読本」が教育の現場に沢山ばらまかれた。そこには自然界に放射線は沢山あります、被曝は決して怖いものではありません、と書き連ねてあった。そうやって、子どもたちとその保護者に「心の除染」を広めようとした。放射線アドバイザーや健康相談員と称する人たちが伊達市を訪れ、講演会を開いたり、戸別訪問をしたりするなどして放射能は安全だと説いて回った
155頁。なぜ日本の原子力関連会社がそこまで原発に執着するのか。かつては米国が世界の原子力事業を牽引してきた。その主軸を担っていたのがウェスティングハウス社とジェネラル・エレクトリック社だが、米国では四半世紀以上にわたって新しい原子力発電所の建設がなく、両社とも生産ラインをすべて失ってしまった。つまり、原子力で金儲けをしようとするならば、日本を使って他国に売り込み、パテント(特許)を握って儲けるという方法しかないわけだ。日本の原子力事業は米国企業のカネ儲けの道具になっている。
193頁。文献調査には約2年間かかると国は言っているが、文献調査など実はもう終わっている。NUMOがもう地質調査など済ませているし、地域産業や住民の状況もすでに把握している。ではその2年間で何をするかというと、電通などの広告代理店が入ってきて、地元での安全宣伝を遂行していく。つまり核のゴミ処分場は安全ですと住民をマインドコントロールしていく。そうして2年後には多くの住民が処分場は安全であると騙されるという、そのための期間なのである。文献調査だけ受け入れて、処分場の建設は拒否するなどということは不可能である
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121頁。国は福島イノベーション・コースト構想なるものを立ち上げ、原発事故で甚大な被害を受けた浜通りに新たなハコモノを造るなどして、あたかも復興が進んでいるかのように見せかけている。構想では、日立、三菱、東芝などの原子力産業をはじめ、鹿島建設、大林組、熊谷組などのゼネコンが巨額の受注を得て、大規模工事を進めている。彼らは原発を建設・運転する時に大儲けをし、事故が起きれば除染で大儲けをし、そして今、復興で大儲けをしている。加害者でもあるゼネコン大手が復興で巨額の儲けを得、被害者たちの苦難は一層深まっている。
130頁。事故直後から政府は放射能の正しい拡散情報を国民に知らせようとはしなかった。2011年から福島県で始まった18歳以下の子どもを対象に行った甲状腺エコー検査では、甲状腺がん確定の疑いを含めた人数が増えていると報告されたにもかかわらず、有識者による検討委員会は、予想を超えるような多発が起きていることを認めた一方で、それを「放射能の影響ではなく、過剰診断である」とし、放射線起因性を否定する姿勢をとってきた。
138頁。2011年夏、伊達市は他の地域に先駆けて除染をスタートさせた。当時の仁志田昇司市長は「除染先進都市」を宣言。汚染度によって市内をA、B、Cのエリアに分けて除染をスタートさせた。一番放射線量が高いとされたAのエリアの除染は大手ゼネコンが引き受けたが、放射線量が少ないとされたCエリアは、必要なら自分たちでやってくださいと突き放され、被害者であるはずの住民たちが除染の担い手にされてしまった。さらに許せないのは「心の除染」という愚劣極まりない言葉である。除染作業を早々に終わらせるため、放射能は怖くない、
被曝を怖がるのは心が汚れているからだ、だから心を除染するのだと市長が言い出したのである。この旗振り役を引き受けたのが電通など広告代理店だ。莫大な予算をかけて作られた「放射線教育副読本」が教育の現場に沢山ばらまかれた。そこには自然界に放射線は沢山あります、被曝は決して怖いものではありません、と書き連ねてあった。そうやって、子どもたちとその保護者に「心の除染」を広めようとした。放射線アドバイザーや健康相談員と称する人たちが伊達市を訪れ、講演会を開いたり、戸別訪問をしたりするなどして放射能は安全だと説いて回った
155頁。なぜ日本の原子力関連会社がそこまで原発に執着するのか。かつては米国が世界の原子力事業を牽引してきた。その主軸を担っていたのがウェスティングハウス社とジェネラル・エレクトリック社だが、米国では四半世紀以上にわたって新しい原子力発電所の建設がなく、両社とも生産ラインをすべて失ってしまった。つまり、原子力で金儲けをしようとするならば、日本を使って他国に売り込み、パテント(特許)を握って儲けるという方法しかないわけだ。日本の原子力事業は米国企業のカネ儲けの道具になっている。
193頁。文献調査には約2年間かかると国は言っているが、文献調査など実はもう終わっている。NUMOがもう地質調査など済ませているし、地域産業や住民の状況もすでに把握している。ではその2年間で何をするかというと、電通などの広告代理店が入ってきて、地元での安全宣伝を遂行していく。つまり核のゴミ処分場は安全ですと住民をマインドコントロールしていく。そうして2年後には多くの住民が処分場は安全であると騙されるという、そのための期間なのである。文献調査だけ受け入れて、処分場の建設は拒否するなどということは不可能である