少年は特別な事情や過去のトラウマから、心をかたく閉ざし、怒りのコントロールができない。冒頭でラクダでの運搬シーンがあり、少年は奇異な目で見られるのをやけに気にする。これが示唆するように、少年は人につけられたレッテルに傷ついている。つっぱったり、つっかかったりする彼の事情が明らかになるにつれ、応援したくなった。作者は、戦争という大きな問題で見過ごされがちな弱き存在に光をあてている。少年もゴリラも。軍事に当てるため看板を提供し、殺風景になった動物園の様子など、こまかいところを丹念に描いている。
みなまで書かなくともつたわる情報の出し方がうまい。また、女性経営者にいやな顔をする役所職員や、やたら権威を振りかざす教師などキャラクター設定も絶妙。〈こんなのいやだ〉がとことん書かれているのが良いのだと思う。だってそんな社会やめたいとおもえるから。頑固者同士のジョーゼフとミセスFの行く末をぜひ見てほしい。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます
少年は特別な事情や過去のトラウマから、心をかたく閉ざし、怒りのコントロールができない。冒頭でラクダでの運搬シーンがあり、少年は奇異な目で見られるのをやけに気にする。これが示唆するように、少年は人につけられたレッテルに傷ついている。つっぱったり、つっかかったりする彼の事情が明らかになるにつれ、応援したくなった。作者は、戦争という大きな問題で見過ごされがちな弱き存在に光をあてている。少年もゴリラも。軍事に当てるため看板を提供し、殺風景になった動物園の様子など、こまかいところを丹念に描いている。
みなまで書かなくともつたわる情報の出し方がうまい。また、女性経営者にいやな顔をする役所職員や、やたら権威を振りかざす教師などキャラクター設定も絶妙。〈こんなのいやだ〉がとことん書かれているのが良いのだと思う。だってそんな社会やめたいとおもえるから。頑固者同士のジョーゼフとミセスFの行く末をぜひ見てほしい。