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Toska
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Toska
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義経伝説も為朝伝説も、「貴種流離譚」や「英雄不死願望」だけでは説明のつかない深みを持つ。それは日本人の境界・異域認識をダイレクトに反映し、時代ごとに大きく変化するものであった。北に向かった義経はアイヌ世界を踏破して大陸に足を踏み入れ、南の為朝は琉球の覇者となる。日本の近現代史を振り返るなら、彼らの旅路が単なる歴史のロマンにとどまらない剣呑なものを含むことは否定できない。本書はその辺りの危うさに鋭く切り込んでいる。
Toska

「義経=成吉思汗」前は、「義経=清朝の祖」説が一般的だった(「清」は清和源氏の清なのだとか)。こうした荒唐無稽な説に対し、江戸時代の段階で意外に真面目な史料批判が行われていたこと、また為朝を琉球に結びつける言説は琉球王国側からも利用された形跡のあることなど、両伝説の紆余曲折はなかなかに面白い。南北に対する日本人の眼差しという大枠のみならず、こうした具体的な細部の解説でも読ませる。

01/26 10:13
  • Tomoichi
  • Fumitaka
  • 西園寺カトリーヌ
  • Mittii
  • のれん
  • Tkc Knk
  • Utsuro
Toska

柳田国男曰く、伝説は昔話と異なり「歴史になりたがる」という性格を持っている。まことに鋭い指摘と思う。「信じたい伝説に有利な新たな知識や解釈に出会えば、それを都合良く自らに引きつけて、伝説は「美しい」成長を遂げる」(225頁)。たとえ野暮とか無粋とか言われようと、歴史家が真剣な態度で伝説に向き合わねばならない理由もそこにある。これは中世史ではなく現代史の問題なのだ。

01/26 10:23
  • Tomoichi
  • Fumitaka
  • chang_ume
  • 西園寺カトリーヌ
  • Mittii
  • のれん
  • Tkc Knk
  • Utsuro
  • おわか
0255文字
全2件中 1-2 件を表示

Toska
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読書データ

プロフィール

登録日
2021/02/26(1475日経過)
記録初日
2020/12/05(1558日経過)
読んだ本
815冊(1日平均0.52冊)
読んだページ
248481ページ(1日平均159ページ)
感想・レビュー
785件(投稿率96.3%)
本棚
0棚
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