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ネタバレ二作目にしてこの「語りの才能」。別に"昨年の『その女アレックス』に続くフランス・ミステリー"という括りがなくても充分に面白い。冒頭の老いぼれたギャングが、過去の謎に迫ろうとするジャーナリストに暗闇の中でささやく場面やその後の息もつかせぬ展開などパルブ・フィクションを見ているようだし、普通のウエイターが知らず知らず事件に巻き込まれ運命の糸に翻弄される様などは星新一を読んでいるようなドライなシニカルさを感じる。だから、ゆえに、作者が最後のエピローグでテオドールが語って聴かせる相手を誤ったのは残念で仕方がない。
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普段でも過去を振り返ってみて、偶然の積み重ねによって引き起こされた出来事の成り行きに唖然とさせられることがあるが、本書で著者が生み出したテオドールは、この偶然の出来事を人為的に引き起こす存在だ。ただし、興味深いのは、彼の関心が引き起こされる結果ではなく、その波紋の観察にあるという点。実にユニーク。著者はこれを「偶然の巡り合わせを引き起こすアシスト」と呼ぶ。

07/08 17:34
  • Makoto Nakagawa
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本書の失敗は、波紋の広がり具合を遠くから観察することが無常な喜びだというテオドールの告白を、青年イヴァンに打ち明けさせたこと。エピローグに向かって半ば強引に、アルベールから数百万ユーロにつながる鍵を受け取るイヴァン。3年に及ぶ刑務所暮らしの埋め合わせ? あれよあれよとテオドールに導かれるイヴァン。「君は策略の中心」? まさか。これなら、オスカルの娘のクロエを殺さず立ち会わせた方が、より展開に無理がなかったろうに。

07/08 17:44
  • Makoto Nakagawa
0255文字
全2件中 1-2 件を表示

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読書データ

プロフィール

登録日
2010/11/13(5248日経過)
記録初日
2010/02/21(5513日経過)
読んだ本
840冊(1日平均0.15冊)
読んだページ
295733ページ(1日平均53ページ)
感想・レビュー
824件(投稿率98.1%)
本棚
5棚
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