世界が終わる夏、僕は少女と出会った。
抜けるような白い肌は青空に溶け、風になびく髪は夏の太陽を弾いた。
美しい空、美しい太陽、それら美しいものは絶望の裏返しでしかない。醜いアヒルの子にアヒルの世界はあまりにも美しすぎた。
瓦礫と腐臭に満ちた、ただ決められた死を待つだけの世界、それは僕自身の運命でもあった。
そこに立つ少女はこの世のものではなかった。それをこの世のものと認めた時、僕はきっとこの運命を受け入れることが出来なくなってしまう。
「あなたは、どうしてそこにいるの?」
「僕は・・・」
言いかけた唇が震えた。絶望を口にすることは絶望を上塗りすることに他ならない。かと言って希望を口にすることも出来ない。無いものは出てこない。偽りの希望は即ち妄言である。
「あなたがそこで燻って何も出来ないでいるうちに世界は勝手に崩壊していく。ただの生ける屍として生きているなら早く死んだほうがマシね。」
「うるさい!!!」
自分の耳を疑った。叫ぶだけの気力が残っているとは思っていなかった。心の器から言葉が溢れ出した。
「そりゃあ俺だってこんな腐臭に満ちた世界からおさらばしたいさ!!でも出来ないんだよ!!これ以上の絶望はきっと俺をダメにしてしまう。そうなったら俺はきっと・・・」
希望がなければ絶望も無い。得るものがなければ失うものもない。生ける屍と言われようが死んでないだけマシだ。
だが言葉は急に堰き止められた。彼女の温もりは僕の絶望に凍りついた心を溶かした。僕は僕自身が思う以上に彼女の美しさに魅せられ、彼女を求めていたようだ。
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僕は、希望を手に入れた
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