読書メーター KADOKAWA Group

2024年10月の読書メーターまとめ

パトラッシュ
読んだ本
36
読んだページ
11041ページ
感想・レビュー
36
ナイス
7623ナイス

2024年10月に読んだ本
36

2024年10月のお気に入り登録
8

  • かな
  • I KNOW
  • nami1022
  • ゴン
  • やー
  • marty@もぶおん学
  • pilotfish
  • taiko

2024年10月のお気に入られ登録
23

  • アンジー
  • 今日もおひさま
  • nonpono
  • I KNOW
  • てまり
  • めめほめ
  • ZAKI★
  • Nao023
  • ゴン
  • Yo
  • 魚不足
  • marty@もぶおん学
  • としま
  • うたかた
  • miyumo
  • じゅんぼ
  • taiko
  • ぴちか
  • Pellonpekko6
  • のりたま
  • Lilas
  • 平井太郎
  • きんぎょ番兵@サピエ図書館ユーザー

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

パトラッシュ
『オオルリ流星群』では人生を諦めていた者たちの復活劇を描いたが、今作は行き詰まったり鬱屈を抱える男女が新しい道を見い出す5つの瞬間を捉える。いずれも人の少ない田舎を舞台に、粘土や狼犬探し、原爆遺留品に鉄隕石の行方 ウミガメの卵泥棒と些細なものをきっかけに人生の転回点を掴んでいく。最初は興味もなかったのが思いがけない由来を知り、少しずつのめり込んでいくプロセスが共通している。著者が『宙わたる教室』で会得した作劇法による青春小説は短編でも味わい深いが、特に表題作と「祈りの破片」は長編の序章を予感させる出来だ。
が「ナイス!」と言っています。

2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

パトラッシュ

9月には大谷翔平と真田広之が、アメリカで共に日本人初の偉業を成し遂げた。元気のない国内で閉じこもっている私たちより、海外へ雄飛し見事な成果をあげた。自民党と立憲民主党でも党首が交代したが、彼らはどこまで活躍できるのか。期待値は高くしないでおこう。2024年9月の読書メーター 読んだ本の数:33冊 読んだページ数:11377ページ ナイス数:7235ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1009613/summary/monthly/2024/9

9月には大谷翔平と真田広之が、アメリカで共に日本人初の偉業を成し遂げた。元気のない国内で閉じこもっている私たちより、海外へ雄飛し見事な成果をあげた。自民党と立憲民主党でも党首が交代したが、彼らはどこまで活躍できるのか。期待値は高くしないでおこう。2024年9月の読書メーター 読んだ本の数:33冊 読んだページ数:11377ページ ナイス数:7235ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1009613/summary/monthly/2024/9
が「ナイス!」と言っています。

2024年10月の感想・レビュー一覧
36

パトラッシュ
アルハンブラ宮殿やコルドバのメスキータを訪れると、カトリック国スペインに残るイスラム文化の影響力を痛感する。イベリア半島からアラブ勢力を追いやったレコンキスタの結果とされるが、その一言で要約できない長い歴史は恐ろしいほど複雑怪奇だ。異なる宗教勢力に二分され多数の王朝が乱立する中でカトリックとイスラムの同盟も珍しくなく、婚姻や合従連衡、裏切りと戦争の時代が800年近くも続いたのだから。これに山がちな地形が重なり、多様性に満ちたスペイン社会を生む原動力となったレコンキスタは、今日に通じる問題を投げかけている。
パトラッシュ
2024/10/31 20:29

青池保子の漫画『アルカサル -王城-』は、まさにこの時代が舞台(226~229頁参照)。そこに描かれていたペドロ1世の戦争に明け暮れた生涯は、当時のイベリアの大地だからこそだったと思い知らされる。

mippo
2024/10/31 21:55

レコンキスタ好き(笑)というかそのあたりの歴史のうねりが、ですが。イタリア好きなのですがスペインに行ったらイスラムの残り香にクラクラしました。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
名探偵と大犯罪者の対決はミステリファンの血を滾らすが、現役作家で最も支持されているのはディーヴァーだ。リンカーン・ライムとウォッチメイカーの闘いも、遂にニューヨークで最終決戦を迎えた。大型クレーン倒壊に始まる最新技術を駆使した罠また罠の連続の中で、相手の意図を確実に読まねば命がないドラマにページを繰る手が止まらない。しかも従来ほとんど描かれなかったウォッチメイカーの人間的側面や、ライムの薫陶を受けたブラスキーの成長ぶりもあって厚みを増している。最後に「QED」と語るライムに、エラリー・クイーンが重なった。
パトラッシュ
2024/10/30 20:20

1個所ミスが。本編で登場するアメリカ大統領の名前は「ボイド」だが、登場人物一覧では「ボイル」となっていた。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
(承前)本格的な法廷劇に突入し、検察や判事を振り回すプロとしてのハリーが生き生きと描かれる。叩きつけるような議論の応酬と思いがけぬ展開の連続は、ストーリーテラーとしてのコナリーの本領が見事に発揮される。老病に苛まれ近く訃報を聞くかと危惧していたボッシュが何とか立ち直り、揃って正義のために戦う姿もファンには嬉しい。期待を裏切らぬドラマを堪能した直後、やられてばかりでいるものかと逆襲する判事には笑った。この兄弟チームにバラードとマディが加わった最強捜査部隊が、ロスを揺るがす大事件に出動する日を想像してしまう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
再審無罪確定や開始決定の報道が相次ぐ昨今だけに、冤罪事件を巡る裁判がテーマの物語は興味深く読んだ。ミッキー・ハラーの直面するアメリカ司法制度の複雑怪奇さは信じられないほどで、ペリー・メイスンの時代は何と牧歌的だったのかと痛感させられる。国家安全保障という大義名分の前に平然と人権が踏みにじられ、脅迫を受けたり警察や弁護士の腐敗臭も漂ってくる状況下だが、敢然と理不尽に立ち向かうハラーの姿は感動的。ハリー・ボッシュを筆頭に信頼厚い仲間との連携も変わらず、彼こそアメリカの正義だとの希望を描いているようだ。(続く)
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ウルトラシリーズの初代ヒロインとして、科特隊のフジ・アキコ隊員は歴史に名を刻んだ。その後も紅一点が配置される原点となり、戦隊シリーズまで勇敢に怪獣と戦う女性軍人という存在が引き継がれたのだから。しかし『ウルトラQ』から続けて演じた桜井浩子さんには、大人の事情に振り回されたり過密スケジュールに追い立てられるキツイ仕事だったようだ。『ウルトラマン』は円谷一や実相寺昭雄ばかり話題となる(実際面白い)が、知られざる現場での苦労を伝える証言は特撮ファンにとって宝物であり、桜井さんの大きな目と共に忘れ難い印象を残す。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
日本の刑事警察は、袴田事件の再審無罪のように苦い失敗を積み重ねてきた。戦前からの自白偏重主義が続き、地下鉄サリン事件までは科学捜査も重視されずにいた。検挙率低下の現実に直面した警察首脳部が捜査と鑑識と科捜研を有機的に結合させる方向へ舵を切るプロセスを、長くサツ回りを務めた記者の経験と視点から描き出す。犯罪の進化に合わせて捜査を進化させるやり方は一応成功したが、今度は捜査技術の継承と捜査を指揮できる人材の育成が急務となっている。どれだけ科学を導入しようとも、人の起こした犯罪を解決するのは人だけだと痛感する。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
今日、BLが出版界で売れているのは、萩尾望都や竹宮惠子と共にJUNEの存在も大きい。少女たちが憧れながら決して手の届かなかった美少年同士の性愛というジャンルを、マンガや小説やアニメとして実現できる可能性を広く知らしめたのだから。栗本薫の後輩で増山法恵の意外な知り合いでアニメファンという著者の立ち位置は、この雑誌を生み出す天命を受けていたとしか思えない。「売れる本を出せるなら何をしてもいい」という出版社で、アルバイトから正社員になった若造が一切を任されて走りながら作っていく姿は雑誌編集者冥利に尽きるだろう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
他人を傷つけたり差別する言葉を使わないとは正しいが、それで発言者を貶めたり自らの立場を強めるのに利用する者が現れると話はいかがわしくなる。しかも「政治的に正しい」という呼称が左右関係なく定着してしまい、自分の政治的考えが正しいと信ずる者同士による罵り合いに発展する例もある。ただ著者らはフェミニズムやジェンダーの専門家として一切の差別を法的に禁止せよとの立場なのが、逆に問題を停滞させている。やらない善よりやる偽善かもしれないが、ポリコレという呼称をやめマイノリティ支援の一環としての差別語彙排除とすべきでは。
pilotfish
2024/11/03 23:48

私の好きな映画シリーズもポリコレ化されて、心底興ざめしました。社会に浸透させたい意図があるにしろ、長年のファンからしたらそれは別のところでやってくれー!です😰 よくわからないポリコレについて知るためにも、読んでみたいと思いました。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
文学者の生涯をテーマにした小説やドラマは多いが、人生の労苦を経て作家として成長し名作を生むまでを描くのが主流だ。その点、本書で描かれる近松門左衛門は波乱万丈には縁遠い受動的な人間で、逆に周囲のやらかしに巻き込まれて生きるために必死で頑張っていると、思いがけず浄瑠璃作者の才が開花していく。『光る君へ』や『八犬伝』のように悩みながら執筆するシーンはなく、題材を得たらするすると書けてしまう。一方で近松をハブとして多くの人生が思わぬ方向へ回っていき、彼らに一場の夢を与えたと悟る終幕は芸と心中したかと思えてしまう。
るい
2024/10/26 06:27

近松門左衛門と離れますが、昨日映画「八犬伝」を見ました。馬琴先生は28年かかったそうです。このスピーディな時代からは考えられないスローさで、読者も大変でしたね。待てない人も居たでしょうね。😌。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
地震と豪雨に襲われた能登地方では、未だ水道が復旧せず飲用水にも事欠く地域が残る。全国民が清潔な水を供給されるのが当然視される日本だが、おいしく安全な水は世界では例外的なのだ。水の確保も困難だったり、河川の利権が国際紛争に発展するのも珍しくないのが実情という。浴場が発展した古代ローマに比べ、キリスト教の支配下の中世欧州は王侯貴族でも不潔が当然視され伝染病が蔓延した。水と人の関係は住む地域や歴史や宗教により千差万別で、日本の入浴事情も大きく変遷した経緯を伝える。私たちの上下水道も、いつまで保たれるのだろうか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
あんかけ焼きそばはソースより好きなので、その由来を探る本書は興味深く読んだが、そこには食文化史を超える日米中の裏歴史が詰まっていた。揚げた麺が存在しない中国から直接伝わったのでなく、19世紀にアメリカへ労働移民した中国人が現地の好みに合わせて考案したあんかけが、激化する人種差別から逃げた料理人により日本へ伝えられたとする著者の推測には驚くばかりだ。膨大な資料と食べ歩きで証拠をしっかり揃えており、刑事裁判の法廷でも採用されるほど納得してしまう。下手なミステリより余程面白い、歴史の秘めた謎の解明に拍手したい。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
誘拐犯に身代金を奪われ人質は取り返せなかった。静岡県警にとって最大の屈辱ともいえる事件から十年後、被害者の遺骨が発見され再び捜査が動き出す。名探偵や最新の科学鑑識は一切登場せず、ひたすら関係先を歩く刑事たちの直当たりが息苦しいほど続く。調べるうちに思いがけない事実が次々明らかとなり、欲望と絶望と怒りが生んだ人間心理の暗い淵が見えてくる。パズルのピースが埋まっていくプロセスが鮮やかで、映画『天国と地獄』を観ているような気分だ。「捜査にやり尽くしたなんてあり得ない」という執念を描く警察小説の面白さを堪能した。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
戦後日本では専業主婦が家事一切を担うのが当然とされてきたが、住まいは生活空間の快適さが優先された。食文化の研究でメニューや食材は主題となるが、料理を作る台所は付け足し扱いだった。公団住宅でシステムキッチンが広まると快適で近代的なキッチンが求められたが、持ち家政策が優先される日本では、諸外国のような家賃補助制度がないので家を買えぬ人は暮らしの質を考えない賃貸住宅に入るしかない。いわば住宅政策の負の部分が、キッチンに押しつけられ続けた歴史が見えてくる。この部分から改めねば、日本人は減り続けるばかりではないか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
元公安刑事が在職中の経験や職務上のノウハウを語る本はいろいろ出ているが、おそらく全て事前に警察庁あたりがチェックしているはずだ。さわりの部分だけ思わせぶりに語られ、機密に触れたり対外関係に影響を及ぼす話は削除された形で。結果、公安警察の苦労や「誰でも狙われている」危機意識を煽る話が中心となり、スパイ活動防止法制定や政府の政策PRを促す内容が中心となる。本書もその一部だが、そこに含まれる真実を探るのも逆に面白い。芸能界や自衛隊が監視対象で、協力者の作り方などはスパイ小説にも出てこないので、参考にできるかも。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
日本はGHQによる占領期に、明治以来の国体をアメリカ流に改造された。経営者としてのイーロン・マスクも、買収した企業の風土や伝統を容赦なく壊し自分の望む世界に作り替えようとする。旧ツイッター日本法人社長として彼のやり様を目撃した著者は、マッカーサー以来の体制破壊の経験者か。全経費の支払いを止め、大量リストラを断行し中間層を排除して命令に忠実なシンプルな組織に再生しようとする強烈な意志は認めるが、他者のことを一切考えない手法は日本人には容認されないだろう。世界滅亡の前日になろうとも日本にマスク流改革は無理か。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
戦後に黒人や貧困層が都市へ流入したアメリカでは、中間層以上の白人が同じ人種と価値観による理想の集住地を求めて郊外住宅地を建設した。その経緯から自分たちの土地を守るため徹底的に異分子を排除した結果、共同体は汚い部分を隠し通すのが当然となった。そんな状況は長続きせず各所で膿が破裂してしまい、郊外住民の夢や希望は潰え去った。そんな現実がアメリカンドリーム崩壊の象徴として小説や映画の舞台となり惨めな残骸が広く知られてしまったが、豊かで明日を信じられた時代を懐かしみ、アメリカの内向き保守化が進んだ事情が理解できる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
人の心は簡単にわからないが、放置すれば誤解が誤解を呼び暴走へ突き進んでしまう。現代人にはよくある話だが、深く考えて真実を追求する森田みどりが探偵でなければ、少年たちは取り返しのつかない道へ突き進んでいた。彼女のおかげで彼らは父親の真実を知り、詐欺に加担せずに済み、殺人を犯す寸前で止め、逆差別を作り出した事実に向き合った。みどり自身はそんな自分を父に似ていると忌避していたが、最終編で父もまた同様に人を救っていたと知り自分は間違っていなかったのを悟る。みどりが人を救い、自分も救われる物語が深い感動をもたらす。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
観客の恐怖感を強烈に刺戟するホラー映画は、理性から縁遠いと思われるがとんでもない。逆に少しずつストレスをかけて怖さを盛り上げていき、狙ったタイミングで最高のインパクトを与えるよう緻密に計算されている。製作時の社会で特に危険視されているものに恐怖の源を求め、意外なモンスターの突き抜けた行動をどうするか考え抜き、見る人の反応を心理学的に予想する。演出や撮影、音声から劇伴音楽、DVDのパッケージに至るまで目標に向けて統一されている。編集者のインタビューに血糊の歴史などトリビアも満載で、ファンにはたまらない1冊。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
『オオルリ流星群』では人生を諦めていた者たちの復活劇を描いたが、今作は行き詰まったり鬱屈を抱える男女が新しい道を見い出す5つの瞬間を捉える。いずれも人の少ない田舎を舞台に、粘土や狼犬探し、原爆遺留品に鉄隕石の行方 ウミガメの卵泥棒と些細なものをきっかけに人生の転回点を掴んでいく。最初は興味もなかったのが思いがけない由来を知り、少しずつのめり込んでいくプロセスが共通している。著者が『宙わたる教室』で会得した作劇法による青春小説は短編でも味わい深いが、特に表題作と「祈りの破片」は長編の序章を予感させる出来だ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
どこまでも美しく聳え立つ山の圧倒的な雄姿に比べ、そこへ登って征服した気でいる人間は何と卑小な存在か。明るい登山道から間違えて暗い悪の道へ踏み込んでしまった人には、とりわけ落差がくっきりと浮かび上がる。そんな山岳を舞台としたミステリを集めた1冊には、単独で読むよりも強く胸に迫ってくる。集中で松本清張と新田次郎作品は既読だが、加藤薫と森村誠一と併読することで人の暗い情念と殺意が冬山の嵐のように読者を揺さぶる。どれだけ完全犯罪を成し遂げたと思っても、神聖さを汚された山は決して許さないのが共通のテーマかと感じた。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
短編ミステリでは被害者の遺したダイイングメッセージが重要なカギとなる例が多い。これまでは曖昧だったり謎めいたデータを受け取り、わかる形に変換するトランスミッター役が探偵の腕の見せ所だったが、本書ではメッセージを発する側から話が進む。現代日本から宇宙、アメリカと場所は様々だが、殺されるか、殺人現場を目撃するか、人生の重要な岐路に立って自らの思いを伝えなければとの必死の思いが提示され、その上で受け取る側はどうしたのか。双方の謎が重なるとき、初めて真実が浮かび上がる。工夫の斬新さは他の追随を許さない鮮やかさだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
一貫してファーストコンタクトテーマを追求してきた林SFだが、今作は最新科学知識に基づく侵略戦に舵を切った。人間をミリマシンに解体して自由に操れる人モドキを作るオビックの地球侵略計画は、ウルトラシリーズで何度も使われたアイデアの変奏曲だ。ロシアが容赦なく核兵器を使用する展開はウクライナ戦争の影響もあろうが、『バビル二世』のように一国の首脳部がすでに異星人の支配下にある可能性を示唆する。AI制御の弾道ミサイルが通常装備されている設定は、イスラエル軍がガザ侵攻に際して攻撃目標選定をAIに任せている現実と重なる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
世界史の教科書では「植民地アメリカで独立を求める戦争が起きた」とのみ記述されるが、対英戦争勝利から今日に至る政治体制の基礎が築かれるプロセスを革命として捉える。独自性の強い13植民地が独立という一点で共闘し勝利したが、新国家建設の大方針を定める連邦憲法制定会議で自らの有利を図るため激烈な論戦と政治工作を重ねる有様は政治劇を観ているようだ。フランスやロシア革命では一部勢力が全権力を握るため粛清を重ねたが、アメリカでは議論と妥協の末に民主政体が成立した。この原点を知らねば、あの国を正確には理解できないだろう。
あみやけ
2024/10/14 07:37

いただきます😃

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
社会主義の失敗は明らかだが、資本主義もトランプ現象など政治的分裂をもたらして行き詰まっている。この状況を打破すべく斎藤幸平氏らは脱成長コミュニズムを主張するが、ガブリエルは金儲け全肯定の新自由主義から倫理資本主義への移行を提言する。マルクス主義者は格差解消を求めるが、欲にまみれた人間は自分だけ裕福になるのを躊躇せず停滞と貧困をもたらす。ならば道徳的に優れたビジネスへの転換で、妥協と調整により穏やかに共存する社会を目指すわけだ。ただ、その手段として子供の政治参加を提案するが、却って過激に流れかねないのでは。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ネタバレ飛び込み自殺した娘が整形手術を受け、2つの家で別の人間として生活していた。子供について何も知らなかった双方の母親が、あまりに違う生活や立場を超えて真相を探っていくドラマと思わせてラストで驚愕の背負い投げを食らわせてくる。自分が最優先の親にうんざりしていた2人の娘が出会った時、混ぜるな危険のような怪物が誕生してしまったとは。設定に無理がありすぎるが、親に似た性格が二乗となって悪意の毒ガスを吐き散らかす娘たちのグロテスクな肖像画が強烈に迫る。あまりに救いのない絶望的な親子関係は、ある意味イヤミスの極致かも。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
文明とは無縁に生きてきたアフリカの黒人青年が第一次大戦に投入され、兄弟同様に育った友の死をきっかけに壊れていく。フランス語を話せず究極の孤絶にあって、他者より優位に立つには行動で示すしかなかった。戦場で敵の腕を切り取っては戻ってくる彼を、最初は英雄扱いした戦友もやがて恐れるようになる。近代兵器で大量殺戮する「文明化された戦争」こそが野蛮であり、個人対個人の原始的な殺し合いこそ人間らしい姿なのではないか。こんな状態に彼を追い込んだ戦争と、彼のなした殺戮行為のどちらが残酷で不正義なのかを強烈に問いかけてくる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
クリスティーにとって作中に出てくる料理は、登場人物をキャラ立ちさせるための重要な小道具だった。フランス人並みに食事の質にこだわるポワロや伝統の味をこよなく愛するミス・マープルもだが、何より食卓の場でこそ不吉な事件の予感に震える事件関係者の思いが響いてくるのだ。この他のミステリ作家にはない特色が英国人の琴線に触れて、長く愛され続けた秘訣かもしれない。それほど料理を大切にしていたのだから、うっかり料理をテーマにしたら食を汚しかねないと思ったか。「食べる時は頭脳は胃袋の奴隷」とは、クリスティーの人生訓なのかも。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
阿津川辰海氏の読書日記から。クイーンの国名シリーズにオマージュしたミステリは珍しくないが、題名に密接に重なる設定と推理まで工夫した例は珍しい。収録4編ともクイーン作品のローマ、フランス、オランダ、エジプトに関連する状況下で起きた殺人事件を扱い、それぞれ帽子に白粉、靴と十字架に繋がるトリックを解明するという遊び心満点のドラマとなっている。重箱の隅をつつけば埃は残っていても、野暮は言わず原作を思い出してひたすら楽しんでいればいい。そんな意味を理解できる本格愛好家のためだけに書かれた、ある意味非常に贅沢な本だ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
17歳の少年が3人を殺傷した西鉄バスジャック事件は、神戸連続児童殺傷と共に社会に衝撃を与えた。著者はこの時恩人を殺され自らも重傷を負う被害を受けたが、娘の不登校に悩んだ経験から一方的に少年を憎悪できなかったという。その後、不登校児を支援して居場所を提供する活動を続けてきた。そして元少年と直接会って謝罪を受け、犯罪の加害者と被害者の間に横たわる深い谷間に橋を架けたのだ。辛い経験を自らの成長に役立てて「罪を犯した少年が一人でも変わるなら」と少年刑務所で講話をする姿は、同じ立場に置かれたら真似できる自信はない。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
第一部は秋田の寒村を舞台に半村良の伝奇小説を思わせる展開だが、中盤は一転して『獄門島』的な女性連続殺人事件となり、さらにSF絡みの政治陰謀劇を最後の関係者が解明する終局を迎える。面白いアイデアを結びつけた壮大な物語を構築せんとした意気込みは買うが、各パートとも200頁前後の中編でしかなく消化不良気味で、それぞれのつながりが悪く中途半端に終わってしまった感が拭えない。強引に一編の小説にまとめるのでなく、それぞれ独立させた方が印象深い作品に仕上がったのではと思う。まだ二作目という著者の勢いが過剰に表れたのか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
受験生時代に読んだ英文解釈の参考本みたいだが、あれよりはずっと役に立つ。そんな勉強の合間(?)に読み耽ってしまったクイーンやクリスティーなど海外ミステリの原文を例示し、翻訳家が試行錯誤しながら最適な日本語を選んでいったのかがわかるのは実に楽しい。有名な『Yの悲劇』のblunt instrumentに関するくだりや『アクロイド』での自信満々なポワロの演説などは、自分をミステリにのめり込ませた文章はこんな原文だったのかと懐かしく思い出される。もしかして越前氏自身、似たような経験があって翻訳家の道に進んだのか。
Arte
2024/10/06 10:21

子供の頃読んだので、「鈍器」が理解できなかったことを覚えています(懐)。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
好きな作家のイマイチな出来の作品はガッカリ感が強いが、本書もそうだった。対独開戦直後という重い時代を映したシリアスな物語を期待したいところだが、映画関係者のラブコメとドタバタと非常識ぶりのオンパレードなのだから。続けざまに起きる殺人未遂事件も影が薄いほどで、よほどのカーマニアでも眉をひそめかねない。ようやくH・Mの登場で話が引き締まるかと思いきや、実にくだらない動機によるパッとしない犯罪計画が暴露されるのだ。密室と怪奇趣味がなければダメとは言わないが、読者の期待に応えるのもシリーズ探偵の宿命ではないのか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
特撮作品には数え切れない怪獣や怪人が登場するが、日本に伝わる妖怪をモチーフとしたものが結構多い。怪獣ブームが起こった1960年代は水木しげるが流行した時期でもあり、マンガ雑誌で特集が組まれるなど怪獣と妖怪は当時の少年にとって一般教養となった。そんな彼らが戦隊シリーズなど特撮を作る立場になると、妖怪イメージの敵方が登場するのは珍しくなくなった。いわば水木作品と特撮が相乗効果を起こし、妖怪がサブカルチャーの一部として確立するプロセスが見えてくる。京極夏彦や荒俣宏の活動もあり、この分野はさらに発展が予感される。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
巨大砲を積んだ装甲列車(ソコレ)が、敗戦直前の満洲の大地をひた走る。人命を優先する落ちこぼれ朝倉大尉率いる部隊は、猛襲するソ連軍を払いのけながらボトムズを思わせる地獄の戦いを延々と続けていく。朝倉は知力の限りを尽くして部下を守ろうと奮戦し、兵士も日本のためでなく尊敬できる指揮官の下で戦えた喜びに満たされて死んでいく。あまりに理不尽な戦争に翻弄されながら、彼らは人としての誇りを最後まで捨てない。政治や軍部の思惑なぞ無関係な敵味方の意地の張り合いとして展開するドラマは、マクリーンかバグリイが描きそうな世界だ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
なぜアメリカ国民はトランプを熱狂的に支持するのか。それは政治が一部の金持ちやエリート知識人ばかり優遇し、自分たちは放置されているとの貧困層の怒りが爆発したのも確かだが、同時にアメリカの底流を流れる思想史的側面も指摘する。アメリカンドリームを掲げて明日を信じてきたアメリカ人は、その理想が実現できなくなった現実を見せつけられた。機能不全の政治を自分たちの手に取り戻すには強力なハンマーが必要であり、トランプに理想を復活させる破壊者の役を託したのだ。現代のアメリカは、第一次革命当時のロシアと同じ状況かもしれない。
パトラッシュ
2024/10/02 21:48

ただ本書は様々な雑誌への寄稿文を集めたものであり、古い事実が最新だったり同じ記述が重なるのも多い。せっかく内容のある面白さだったので、全部をまとめて首尾一貫した論述として書き下ろしてほしかった。最後のカークやマクレランに関するエッセイも文学史的には興味を惹かれたが、ここに収録しては文学関係者には読まれないであろう。その意味で、編集に問題のある本だったといえる。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
図書館で何気なく手に取ったが、思わぬ逸品だった。ホラーとミステリの融合を試みた作品は数あるが、一方に傾斜したり均衡を取ろうとして却って曖昧になるなど食い合わせがよくない。しかし本書では、両パートの語り手を別にすることで怪奇性と合理性の共存に成功している。事件は本格物の体裁で解決したはずなのにゾワゾワする不気味さがいつまでも残り、思わず震えてしまったのも一再ではなかった。それでも第1話から3話までは個別の怪談として面白く読んだが、最終話で全てが関連していたと示唆されて最終頁の絶叫に続く見事な構成に感嘆した。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/05/20(2014日経過)
記録初日
2019/05/20(2014日経過)
読んだ本
2148冊(1日平均1.07冊)
読んだページ
699678ページ(1日平均347ページ)
感想・レビュー
2148件(投稿率100.0%)
本棚
8棚
性別
現住所
千葉県
自己紹介

人間の友人はほとんどいませんが、読書だけに浸っていれば満足している変人です。いい年なのに独身ですが、下手に家族を持ったらため込んできた本を捨てられそうで婚活もしていません。私のような存在が少子化の元凶かもしれませんが、知ったこっちゃありません。もし読書を禁止するような政府が成立したら、命を賭けて戦う覚悟だけはあります。

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう