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2024年9月の読書メーターまとめ

パトラッシュ
読んだ本
33
読んだページ
11377ページ
感想・レビュー
33
ナイス
7234ナイス

2024年9月に読んだ本
33

2024年9月のお気に入り登録
2

  • みい坊
  • 林芳

2024年9月のお気に入られ登録
16

  • らいあん
  • みなもと
  • K.S
  • ごんのすけ
  • かわすみす
  • あほのこ
  • はやたろう
  • みい坊
  • 畑ぽん
  • 河イルカ
  • Crack Luc
  • tonnura007
  • 水落健二
  • 練りようかん
  • ラムネ
  • Masa

2024年9月にナイスが最も多かった感想・レビュー

パトラッシュ
母に自殺された弁護士と父が失踪した傷害致死犯。長く会わぬままトラウマを抱えてきた同い年の従兄弟が同居することになり、反発し合いながら少しずつ折り合いをつけ理解し合っていく。不器用に生きながら友人もできて社会と向き合うようになるが、思いがけぬ事実が判明してから双方の過去に絡んだ謎が解き明かされていく。作者得意の手法で次々に意外な話が展開して読ませるが、真実を探るために都合のいい偶然の出会いが多用されている感が拭えない。何となく結末も予想できてしまい意外性に乏しい。今ひとつ小説としての工夫が足りずに終わった。
が「ナイス!」と言っています。

2024年9月にナイスが最も多かったつぶやき

パトラッシュ

ノロノロ台風10号のおかげで、日本中で風雨の被害が続いている。この後また猛烈な熱暑がぶり返すだろう。専門家は「こんな天気が新しい常識だと思わねば」と言うが、たまったものではない。地球温暖化など起こっていないとほざく連中に熱湯をかけてやりたい気分だ。2024年8月の読書メーター 読んだ本の数:35冊 読んだページ数:11924ページ ナイス数:7545ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1009613/summary/monthly/2024/8

ノロノロ台風10号のおかげで、日本中で風雨の被害が続いている。この後また猛烈な熱暑がぶり返すだろう。専門家は「こんな天気が新しい常識だと思わねば」と言うが、たまったものではない。地球温暖化など起こっていないとほざく連中に熱湯をかけてやりたい気分だ。2024年8月の読書メーター 読んだ本の数:35冊 読んだページ数:11924ページ ナイス数:7545ナイス  ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1009613/summary/monthly/2024/8
洋書好きな読書モンガー
2024/09/11 20:45

あと2〜300年すると過去の歴史でも周期的に起こって来た太陽の黒点活動の不活発時期になって地球も寒冷化する小氷期が来るんだけど待てないよね。その頃居ないし。自動車メーカー各社は自動運転の開発競争をしているけど、「水陸両用車を先に作って」とお願いする事態にならないと良いな。

パトラッシュ
2024/09/11 20:55

洋書好きな読書モンガー様 数百年後まで人類が現在の文明を保って生存しているのか、かなり疑問に思っています。

が「ナイス!」と言っています。

2024年9月の感想・レビュー一覧
33

パトラッシュ
相変わらず猛烈な熱量で縦横無尽にミステリを切りまくるが、内藤陳と違うのは作品論やシリーズ分析が充実している点。かといって法月綸太郎や飯城勇三のように理論一点張りでなく、読者の面白さ第一の視点を崩さない。特にディーヴァーやギャンブルミステリを取り上げた部分は長編評論を書けるほど圧巻だが、この人に好きなだけ書かせると際限がなくなりそう。それにしても、過去に読んだ本をほとんど忘れている者からすれば、よく覚えているなと感嘆する。読書エッセイなど売れない本の筆頭だが、ミステリファンには一読どころか百読の価値はある。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
(承前)連続密室殺人と父殺し容疑をかけられたドイルの事件が、思いがけぬ手がかりから収斂していく。先の先まで考え抜いたボタニストの犯罪計画と、解明へ奮闘するポーたち捜査チームとの壮絶な頭脳戦が展開される。やがて西表島の話を含む全ての伏線が回収されていき、思わず「そう来るか」とうならせるラストはいつもながら見事だ。これほど鮮やかに着地を決める手腕に並ぶのはディーヴァーくらいか。ただ、あれほど金と時間を費やした不可能犯罪を実行しながら、あまりに犯行動機がつまらない。大犯罪者を動かすほどの強烈な動機が欲しかった。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
予告密室殺人事件は本格ミステリ界の最難関だが、ついにワシントン・ポーが挑むとなれば否応なく期待が高まる。ボタニストを名乗る殺人者が社会の嫌われ者を次々と毒殺していくが、ポーたち捜査陣は翻弄されるばかり。そこへ同僚のドイルが父殺しの容疑で逮捕される凶報が舞い込む。二件も重大事案を抱えたポーとティリーらは、邪魔する者は警察官僚でも蹴散らして犯人を説得までする大活躍を始めるのだ。冒頭の西表島での怪事件が、果たしてどうつながるのか。不可解な謎の連続に魅せられた読者は、ひたすらページを繰ることしかできない。(続く)
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
乱歩賞史上初の殺人事件が絡まない受賞作。ドーピングや密輸など従来にない要素を盛り込み、若い雑誌記者が潜入取材を経験し成長していくプロセスはエンタメとして楽しく読めたが、これがミステリの新人賞作品と言われると違和感が拭えない。多くの選考委員がユーモアミステリと受け取っていたが、ドーバーやフロストのような人格破綻的キャラも出てこない。純粋なお仕事小説であり、サスペンス要素が皆無なため結果的にそう見えたのだ。犯人の抱える悪の大きさ、探偵との頭脳戦を期待すると裏切られるので、どこまで許容できるかで読者を選ぶ作品。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
前著『食べ歩くインド』では日本人の知らない様々な地方料理を紹介していたが、料理を作る台所も負けず多彩だ。均一なシステムキッチンが当然の日本に比べ、土地やカーストや民族で食習慣が全く違うインドは台所もバラバラだ。低所得層は土間に調理器具を置く例が多く、大きなバナナの葉が食器代わりになる。金持ちの豪邸や高級ホテルの厨房はタンドールを備え、ホームレスは歩道で煮炊きする。現地に住み着いた日本人は昭和レトロな料理を出すレストランを開き、スラム街は同郷人が集まった村の姿を呈する。これが本来の自由な生き方かもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
長編の一部を切り出した風の短編5作を収録。生きるのも困難な状況に追い込まれた高校生や超知能AIが、考えに考え抜いて自分のやれることに必死で挑む姿を描いていく。しかし、いずれもハードSF的な展開を期待させながら、どの作品もストーリーは尻切れトンボになり明確なラストを提示しない。伏線の回収やカタルシスなど知るかという態度だが、あえて読者の想像に結末を委ねるオープンエンドを採用することで容赦ないリアルを暗示するようで読後感が重い。特に「星界に没す」と「銀河風帆走」は、宗教者が解脱を迎えた瞬間を捉えたかのようだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
序章にある通り本格ミステリとは「奇想と推理を叙述することに徹した小説」だ。他の文学にはない約束事だけに、この三点がうまく融合しなければ高評価は得られない。なのに愛読者ほど密室やアリバイ、偽装や叙述などトリックを偏愛し、そのデータベースを構築してきたため過去の評論では問題の三点を分けて批評するのが一般的だった。著者は古典から近作までの諸作品を多数分析し、優れた本格ミステリの成立には読者が「総合的な構造批評眼」を持つ必要性を提唱する。ポー以来のすぐれた本格物を生み出したのは、読者の厳しい眼差しの成長であると。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
令和に捕物帳を書くからには、それなりの意味付けと新しさが求められる。従来は主人公が単独で推理し犯人を捕らえていたが、今回は岡っ引きの佐吉と医者の秋高のバディで犯罪解明を担う。佐吉は特に頭脳明晰ではなく、秋高の医学知識に基づく推理を受けて不審点に思い当たる。加えて各編ではDV、不倫、ジェンダー、引きこもり、同性愛など現代でも難しいテーマを取り入れ、江戸の庶民の思いや苦しみを描くスタイルをとっている。しかも犯人が判明してもあえて捕縛せず、誰も傷つかぬ配慮を優先するのだ。工夫は認めるが、生ぬるさは否めなかった。
がらくたどん
2024/09/23 21:48

読むのを楽しみにしている本ですo(^-^)o私の中で「佐吉」というと、どうしても横溝さんの人形佐吉が浮かんでしまいますが、人気ミステリー作家さんの令和の捕物帖に期待♪ご紹介ありがとうごさいました\(^_^)/

がらくたどん
2024/10/31 14:45

↑横溝さんは佐七でしたね。失礼しました( *´艸`)「各編ではDV、不倫、ジェンダー、引きこもり、同性愛など現代でも難しいテーマを取り入れ」ホントですね~。私はこの背景の使い方がかなり面白かったです。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
仕事に邁進する昭和の猛烈サラリーマンが、称賛と名誉を得ながらプライベートを犠牲にしたツケを払わされる。さんざん読んだその手の小説を、若い女の子をヒロインにリライトされたようだ。SNSや地下アイドルなどスターになれるチャンスが広がった今日、少女たちは「自分も」と願う。しかし注目されるとは孤独に耐えることであり、強い心根の持ち主でなければ耐えられない。名声と脚光めざして必死に耐えてきた心の弱さが、思わぬきっかけで壊れる瞬間を捉えていく。こんな世界では、冷酷非情なサイコパスしか生きられないのではと思えてしまう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
幼少時から夢中でしていたことが長じて本職になり、その分野では世界屈指の名人となる。いい話に聞こえるが、ジェフリー・レンドラムの場合はハヤブサなど猛禽類の卵を盗む仕事だった。鷹狩りを王家のスポーツとしてきたアラブの富豪を中心に動く野鳥の闇取引マーケットにとって、レンドラムは自分たちの手先となるため生まれた男といえた。ヘリで人跡未踏の地へ飛び、崖の巣から卵を取っては警察の目をかいくぐり密輸する。逮捕され裁きの場に引き出された彼に同情はしないが、やめられなかったのは危険だが血沸き肉躍る冒険への渇望故ではないか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
優れた才能は目も眩む高みに達する反面、人の醜悪さをもさらけ出す。演劇に全情熱を傾注するハイティーンの少女たちを集めた学校とは、この両面を知るために存在するようなものだ。最高の芝居を創造するためなら悪魔に魂を売るのも容認された場では、至高の芸術を求める人は許されざる悪をも許容してしまう。神の如き天才と崇められた設楽了の死の謎を探る貴水とさやかの探偵行は、マクベスを誘惑して野心に破滅させた魔女は誰かを探っていく。その魔女すら演劇の毒に魅せられ罪の沼にはまっていく姿は、人の業を描くミステリが見事に成立している。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ファーストコンタクトSFは侵略か友好かを問わず、異星人の地球到来が発端とされてきた。巨額の資金と揺るがぬ意志を費やしてまで、人類が深宇宙に乗り出す状況が想像できなかったのか。それを精神のアップロード化による事実上の不老不死という革命的技術で、銀河系の隅々まで探査の手を広げられることになったとの設定が素晴らしい。若き日に宇宙に飛び出したい夢を共有した3人が、1億年の時間をかけて諦めなかった夢を実現する異星人との出会いの旅は青春ロードノベルの色彩を帯びる。常に前だけを見続けたスケールの大きさには感嘆しかない。
pilotfish
2024/10/06 20:34

パトラッシュさん、私もです!この本以外にもいっぱいいただいてます。パトラッシュさんの感想を読んだら読みたくなるなる😊これからもよろしくお願いします!

hiace9000
2024/10/31 09:29

これすごいの読んじゃいました。最後までしがみつ生きて読み切って良かった!このSF作品、すごすぎません⁉ SF読書の醍醐味存分に、味わいました。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ホラー小説は最後までストレートに展開するドラマが身上だが、本書は単純に恐怖を追求するだけでなくユーモア要素を取り入れている。導入部は楽し気な怪談イベントだが、怪奇現象や失踪事案が相次いで不気味な霧がたちこめてくる。そこに漫才コンビを思わせる二人組の探偵が、ドタバタと掛け合いながら真相解明へ猪突猛進していく。重苦しい事件を軽すぎる探偵が調べるちぐはぐさが物語にリズムを与え、快調に読み進められる原動力となっている。悲劇的な結末は用意できない制約もあるが、似たような設定が多いこの分野で新鮮さを感じたのも確かだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
クローズドサークルから自分だけ脱出しようとする人間ドラマには既視感がある。間違いなく夕木春央『方舟』と『十戒』に刺戟され「自分ならこう書く」と挑んでいる。何者かにより巨大な密室に閉じ込められた男女が犯人の出す条件を満たせば助かると知り、他者を出し抜いてでも逃げようと弱さ醜さを露呈する設定は夕木作品と同じだが、その後が全く違う方向へ発展する。『方舟』の瑕疵だった動機の弱さを意外なトリックで克服したと思わせ、その裏に隠された二重三重の真相を暴くラストの逆転劇は鮮やか。カルネアデスの板は全員に沈黙を強いるのだ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
生れた土地からほとんど出ないで一生を終えるのが普通だった19世紀英国で、異国に等しい他の土地へ自由に行けるようになって社会に大きな変化と戸惑いをもたらした。教会や各種団体が人気獲得へ団体旅行を企画し、トーマス・クックをはじめ旅行業者が事業として成り立つようになる。安息日たる日曜のレジャー旅行は正しいかで大論争が起き、日本でも問題となっているオーバーツーリズムやインバウンド需要獲得が議論された。そんな鉄道旅行の勃興期に遭遇した人びとの思いは、現代人が気軽に宇宙旅行へ行けるようになって初めて実感できるのでは。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
米大統領選では候補者のルーツが話題となるが、冷戦時に東西両陣営の独裁者として知られたカストロとフランコは同じスペインのガリシア地方が故地だった。共に対米関係に緊張をはらむ国の指導者としてイデオロギーと無関係に国交を維持し、カトリックという共通基盤を引き込むことで冷戦下の国際外交で独自の地位を占め得た。立場を異にしても二人は相手を同じガリシア人であり、ガリシア的な独立自尊のプライドを持ち主と認識していたからこそ、一度も会わぬまま政策が絡み合って成果を上げた。両者が尊敬し合っていたとの推測は間違いないだろう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
「暗殺する者は暗殺したことによってのみ歴史に名を残す」(銀英伝)のなら、ルイジ・ルキーニはその典型だろう。カネ目当ての里親に引き取られ辛い幼少年期を過ごした私生児が、底辺労働者として欧州各地を放浪する生活の中で社会への復讐心を抱いたのも当然だった。自分はこんな無意味な人生を送るために生まれたのではないという怒りが、歴史に名を残したいとの妄執を生んだ。そのためなら誰でもよかったが、たまたま好機を得た皇妃エリザベートを狙ったのだ。そんな「無敵の人」がミュージカルの準主役にまでなれたのだから、もって瞑すべきか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
殺されて幽霊になってしまった完全犯罪請負人の男と、彼が見える少女のバディが男を殺した犯人と少女の両親殺しの真相を解明しようと奔走する。わかりやすい『デスノート』的な特殊設定ながら超能力も優秀な頭脳もない2人(?)が偶然出会い、男の経験と少女の勘と行動力で互いを補いながら推理と追跡を重ねるドラマが小気味いい。奇怪な殺害方法やサイコ殺人犯などケレン味たっぷりのな仕掛けも盛り込み、ディーヴァー顔負けのトリックと伏線とアクションの乱打を放つ。多少強引な部分もあるが、ミステリの面白さ追求に徹した快走ぶりは鮮やかだ。
きゃる
2024/10/14 12:45

横ですが、昔の職場が18℃でした…、ソレもこれも、夏場でもスーツの男性に合わせてたから、女性は夏服半袖でスカート、帰る頃には冬場より冷え切ってました。男女共に大変だったわ😅

パトラッシュ
2024/10/14 13:21

きゃる様 そんな職場があっただなんて信じられません。今ならコンピュータールームでも20℃以上でしょうから。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
オーウェルやブラッドベリ以来、SF作家は文明の進歩に対する不信や不安をディストピアとして描いてきた。その80年近い傾向を監視、人口調整、災害、労働解放の側面から分析する。犯罪増加、食糧不足、秩序崩壊、過剰労働など直面する危機を防ぐため最新の理論や科学に基づいた対策が、逆に国家権力の暴力化と自由の喪失をもたらすのではとの危機感が文学的想像力を刺戟している。市民生活のユートピアを営むには規律を強制する力が必要だが、その力を抑制できねばディストピアに変貌する。強権国家が増え続ける今日、人類の理性が問われている。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
組織の歴史を当事者が編纂すると、戦史や社史と同じく勝者に都合のいい形にしてしまう。鎌倉幕府の正史とされる「吾妻鏡」もまた、将軍を傀儡として実権を握った北条得宗家の権威の正当性を強調するための政治的フィクションだった。頼朝挙兵や平氏追討での功績を大幅に水増しし、和田合戦と承久の乱では北条泰時の英明さと徳政を称え、政変の敗者である比企氏や畠山氏、後鳥羽院や三浦氏の存在を黙殺・矮小化する。古文書としての吾妻鏡の文章や歴史改変のやり方から編纂者の意図を読み解いていく手法は、歴史ミステリを読む面白さすら感じられる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
題名の「真言」には「まこと」とルビを振ってあるが、仏教用語で仏の秘密の言葉を意味する「しんごん」と読むべき。刑事裁判では検察と被告双方から法廷に提出された書類と証言に基づき、裁判官が量刑を決めるのが原則。しかし犯罪は人間の本性や隠された真実が最も現れるもので、本来は人の言葉で表現できない関係者の思惑や苦悩や秘密があふれている。その名を持つ紀伊真言にとって法廷は教義の異なる宗派が争う法論の場であり、無味乾燥な法律文書に潜む矛盾や錯誤を探り、隠された真実を見抜く役割を担う。つまり紀伊は最高審判官たるブッダか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
過激な狂気と猥褻さに満ちたサドの著作は、その自筆原稿も信じ難い運命をたどった。バスティーユ牢獄で長い巻紙に記された『ソドムの百二十日』の手稿が革命の渦中で秘かに持ち出され、各地を転々としながら所有者を破産させたり盗まれるなど有為転変の様は小説より奇なりだ。やがて自筆文書を扱うビジネスの闇に巻き込まれ、出資を募る材料となった果てにフランスの国宝となるとは、フランス国家にいじめ抜かれたサド自身が最も驚いているのでは。それにしてもアリストフィルが設立した「手紙と手稿の博物館」が、今はもうないのは口惜しく残念だ。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ダークな性格の典型例とされる4分類を世界の政治家に当てはめると、ナルシシズムはトランプでサディズムは金正恩、マキャベリズムが習近平でサイコパシーはプーチンか。自分が絶対に正しいする強烈な自尊心を抱き、侵そうとする者に容赦ない怒りと憎悪を向ける。こんな性格の悪い指導者に率いられた国はしばしば他国と諍いを起こすが、その目的のためなら手段を選ばず、果てしない自己正当化もためらわない性格は揺るぎない強さと見なされて支持者も多い。しかし個人のカリスマが主導する国家は、その個人が失われたら簡単に瓦解してしまうのだが。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
孫文は「料理を作れたら、中国人はどこでも生きていける」と語ったという。北極圏やアフリカ、中南米、中東からインドまで世界の果てまで散った華人が中国の味を広げ、各地に根付いていった姿は孫文の言葉通りだ。自分たちを幸福にしてくれる政府に恵まれなかった彼らは、出稼ぎ、亡命など不本意な形で故国を離れるしかなかった。苦しく泥まみれの人生を歩まねばならなくとも、流浪先で料理により生活を立てていけた。生きるために必死で戦わねばならなかった中国人の逞しさが中華料理を広めたのなら、華僑とは中国三千年の冷酷な政治の産物だろう。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ソ連時代のロシア人が共産党に面従腹背していた話はいろいろ読んだが、イランでも状況は同じか。あれだけ派手に王制を倒してホメイニ師を歓迎しながら、半世紀近く続く厳格な政教一致体制にうんざりしている状況がよくわかる。長年イランに魅せられ、仕事や留学で長期滞在したという著者だからこその筆で読ませる。ただ猛烈に喋りまくり、本当は自分が独裁者になりたがり、極度にプライドが高く嫉妬深いイラン人の国民性も強烈だ。こんな人びとを統治する政府は、強権政治でなければ無理かもと思える。イスラム共和国の寿命も長くないと感じさせる。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
各国は置かれている場所と地理、歴史や国民性により異なる世界観を育んできた。その違いは国防意識に反映し、いかに効率的に自国を守るべきかを模索してきた。大陸国家は鉄道や道路を基本とし、海洋国家は海を通じて同盟国を結びついた。国力と戦略のバランスをとり国益を最大化させるのが指導者の役目であり、国際外交は「人は集団を作り争うもの」という冷徹な政治的リアリズムなのだと教えてくれる。そんな見たくない現実から目を背け、軍備反対の理想論にしがみついてきた戦後左派の愚かさを痛感する。世界は理想を掲げるのが贅沢な時代なのだ。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/10/08 12:19

☆ 横レス失礼します。「世界は理想を掲げるのが贅沢な時代なのだ。」そのとおり。理想を掲げるならば何よりもリアリストでなければなりません(高坂正堯氏の特に初期著作群のように)。学生の頃にはまだここが解っていなかったなあと今頃ほのぼの思っています。駄文失礼。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
どの国でも政治と料理は深く結びついているが、台湾はその極端な例だ。日本の植民地時代は日本料理が高級品とされ、庶民の味は格下の台湾料理と総称された。戦後に国民党が移ってくると今度は大陸料理が上級国民の食となったが、独立派政権になると一転して旧台湾料理こそ国民料理たる「台湾菜」と持ち上げられた。政治の都合で様々な料理を押しつけられてきた21世紀の今日では欧米やアジアの料理も進出し、様々な料理が融合した台湾原産食材の料理が新しい伝統とされているらしい。ようやく好みの料理を自由に食べられる、普通の時代が訪れたか。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
小学生の頃から乱歩を読んできたため、二次創作化された芝居や映像作品もかなり見てきた。最初は辻真先脚本のアニメで、次にテレビの美女シリーズが楽しみだった。美輪明宏の黒蜥蜴や河井雪之丞の明智小五郎は今も覚えている。そうしたメディア化に携った関係者の回想インタビュー集では、誰もが明智と少年探偵団に憧れた記憶を共有しており、仕事だからではなく望んで入れ込んだ乱歩好きを語る。乱歩ほど長く広く国民に読まれた作家は日本におらず、今後も乱歩は繰り返し求められるだろうと確信した。できれば乱歩賞作家もひとりは出てほしかった。
パトラッシュ
2024/09/05 21:29

平井憲太郎さんも語っているように、乱歩は自作の二次創作化にはかなり寛容で面白がっていたそうだ。マンガのドラマ化を巡り原作者が自殺する事件が起こったばかりだが、人や時代で変わるとは思うが改変はどこまで許されるのか考えてしまう。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
美術館で見たあの絵はナチスに奪われたものだった。美の象徴たるノイシュヴァンシュタイン城は、略奪美術品の倉庫となっていた。自らの価値観を世界に押しつけようとした芸術家崩れの独裁者に部下も追従した結果、戦争は組織的な美術品強奪の場と化した。そんな野蛮人の所業で失われた芸術品回収を担当した「モニュメンツ・マン」たちが、焼け野原のヨーロッパ各地を走り回った記録は本当にあったこととは思えない迫力だ。また著者はナチスだけでなく、米軍兵士による破壊や泥棒があった事実も隠さない。やはり芸術は大衆と無関係にあるべきなのか。
エル・トポ
2024/09/04 22:21

映画「黄金のアデーレ」を思い出します。 https://youtu.be/8OBsZQXEgOQ

洋書好きな読書モンガー
2024/09/11 20:37

映画「ミケランジェロ・プロジェクト」の原作ですよね。観ました。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
母に自殺された弁護士と父が失踪した傷害致死犯。長く会わぬままトラウマを抱えてきた同い年の従兄弟が同居することになり、反発し合いながら少しずつ折り合いをつけ理解し合っていく。不器用に生きながら友人もできて社会と向き合うようになるが、思いがけぬ事実が判明してから双方の過去に絡んだ謎が解き明かされていく。作者得意の手法で次々に意外な話が展開して読ませるが、真実を探るために都合のいい偶然の出会いが多用されている感が拭えない。何となく結末も予想できてしまい意外性に乏しい。今ひとつ小説としての工夫が足りずに終わった。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
国際政治において中心となっているシギント(信号諜報)を巡る情報戦について、理解しやすい対談形式で語る。明らかにされるのは国家安全保障のためなら手段を選ばず、やりたい放題になっているインテリジェンスの現状だ。日本は平和だと思い込んでいる国民は、実は盗聴やハッキングという目に見えない部分での戦争に自分たちが巻き込まれているとは想像もしていない。専門のシギント機関がないのは日本くらいで、政治家や官僚も無責任に見て見ぬふりを決め込む。きれいごとの平和ボケを打破し、現実を突きつけることこそ指導者の責務ではないのか。
るい
2024/09/03 23:10

ポイントがずれていると思いますが、テレビで「通信アプリ「テレグラム」の創業者で最高経営責任者(CEO)のパヴェル・ドゥロフ氏(39)が24日、パリ北部の空港でフランスの警察によって逮捕された。」を見ました。ロシアが躍起になっているようです。やはり、パヴェル・ドゥロフを握る者、世界を握るは大げさですが凄いキーマンなんだなぁと朧げに思います。

が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
ダーウィンの生涯については略伝程度で、科学者としての業績の評価と位置付けがメイン。いかにして進化論にたどり着き『種の起源』を著わしたかに始まり、ヒトの由来や心理の探究から唱えた性淘汰説が約1世紀後に実証され、植物の受精の研究が植物ホルモン発見の遠因となるなど、今日まで影響が及んでいたとは知らなかった。こうした研究のため手製の道具で実験を繰り返し、データ入手のため政治家を動かしていたとは、病弱の人嫌いという従来のイメージとは別人のようだ。ダーウィンは広い分野で業績を残した、最後の「万能の天才」かもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
パトラッシュ
藤原定家や勅撰集に関する本を続けて読んだので、改めて百人一首について知りたくなった。今まで定家による秀歌撰と思っていたが、実際は後鳥羽院の介入で新古今集を自由に編纂できなかった定家が鬱憤晴らしに作った私家撰の「百人秀歌」を、後世の誰かが編纂し直したとの経緯を明月記の記述から解き明かしていく。しかも当初はほとんど知られなかったのが、室町以降に和歌の入門テキストとして広まったという。今日の日本人が百人一首のかるたから和歌を知る現状からも、どんな時代でも簡単に受容される定家原案の編纂アイデアの巧みさが光るのだ。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/05/20(2014日経過)
記録初日
2019/05/20(2014日経過)
読んだ本
2148冊(1日平均1.07冊)
読んだページ
699678ページ(1日平均347ページ)
感想・レビュー
2148件(投稿率100.0%)
本棚
8棚
性別
現住所
千葉県
自己紹介

人間の友人はほとんどいませんが、読書だけに浸っていれば満足している変人です。いい年なのに独身ですが、下手に家族を持ったらため込んできた本を捨てられそうで婚活もしていません。私のような存在が少子化の元凶かもしれませんが、知ったこっちゃありません。もし読書を禁止するような政府が成立したら、命を賭けて戦う覚悟だけはあります。

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