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2024年5月の読書メーターまとめ

bapaksejahtera
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2024年5月に読んだ本
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2024年5月のお気に入り登録
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  • きりん
  • 宇治山田

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2024年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

bapaksejahtera
犯人当て目的で只管読者を騙すだけの推理小説ではない。初手に犯意が提示された後、その後当然生ずるだろう齟齬によって先行きの判らぬ展開となる。こういうのが最近の犯罪小説のスタイルとすれば歓迎である。妻の浮気に混乱している男性。空港で話しかけてきた女にそれを打ち明けるや、女は浮気妻の殺害を唆し、剰え犯行を手伝おうとする。小説は次に女のサイコパスなこれ迄の人生を辿り、次いでその後の犯行に移る。そこに生ずる逆転。これを齎した浮気妻の気持ちは納得できない。その儘離婚を要求して莫大な財産を受ければ済む話。しかし佳作だ。
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2024年5月の感想・レビュー一覧
29

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前作から4ヶ月経過した設定だが二年置いての第二作。年寄主人公の作品にはこの手がある。前作で88歳の老人には無理な負傷を被った為、自宅を売却し(買い取った人間がプロットの一つと最後に判明)老妻共々介護付き老人アパートに入居。リハビリに励み、歩行器と格闘する毎日。その中で昔取り逃がした犯罪者から、信頼できる警官に自首したいとして、紹介を持ちかけられる。以下再び騒動に飛び込む主人公。1965年と2009年の場面を交互に提示され、黒人やユダヤ人への人種差別に基づく事件が種々展開する。ユダヤ教の教義も盛られ面白い。
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本書の後に出た岩波の類似本を先に読んだが、私は本書が気に入った。陸奥の果から最澄空海に論争を挑んだ徳一は、それだけが歴史的存在根拠と扱われる。彼は若年で9世紀の後進地会津から布教の実を揚げ、菩薩と称された。本書は前半で限られた資料からその活動に合理的な推論を提示する。後半には三一権実論争を採上げ、徳一の原資料は失われたが、それが実に天竺支那の先師達の論争をなぞった物である事、後年源信による反論に見る所がある事を述べる。空海に寄せた「真言宗未決文」への反論がないまま後年天台側から反論が齎された事は興味深い。
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ネタバレ「モンキーズ・レインコート 」から始まった探偵エルヴィスシリーズの30年経って書かれた作品。彼の他パイクは勿論、警察犬を率いるスコットに加え、未読であるがパイクのシリーズで登場する傭兵ストーンも加わったオールスター巨編。ナイジェリアの自爆テロで一人息子を失った女性化学者が、高性能火薬でテロ集団を誘い出そうとするうち、これを怪しんだ政府治安機関が、内部通牒を恐れて探偵に捜査を依頼する破天荒な筋。海外テロに強い助っ人の他、「容疑者」で登場した、トラウマを抱える爆発物探知犬も大活躍して、十分に楽しめる作品だった
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ネタバレ1961年作品。激情の果に愛人を殺して刑務所に入った男が6年振りに出所した。丁度クリスマスイブの夜。夕食を摂りに行った食堂で、子供連れの女を目にする。女は嘗て殺した女によく似ていた。男は半ば女から誘われるように、映画館を経て彼女の家迄、子供を連れてついていく。しかし何とそこには彼女の夫の死体が。夫殺しを自殺に偽装し、その発見を委ねようと図った女。その為に設えた工場兼用住宅の怪しさ。男を前科者と知ったとっさの判断で男を陥れようとする悪い女。多少の穴は感じたが、メグレで慣れた長島氏の文章と程よい長さが宜しい。
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明治4年から3年を掛け、内政多端な中、岩倉具視を代表とし木戸大久保伊藤等を副使に、その後官民で活躍する有為の若者を加えた使節団。その間の克明な記録を久米邦武が残した。本資料の歴史的意義を基に、様々な活動を進める米欧亜回覧の会が発足20年を記念し公刊した。本書ではそのうち20人を超える正使や随員の、その後の明治史への寄与を追い、更に使節団の歴史的意義を世界史の視野も含めて論ずる。本使節団をその後の我国瓦解への主犯の如く論ずる幼稚な意見は、近年影を潜めたが、本企画では歴史の影と光にも目を向けつつ評価を試みる。
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一家惨殺の犯人少年が逃亡し、難病を持つ主人公の息子は誘拐されたまま。下巻は連続事件編である上巻に続く謎解き編である。謎の鍵には10年前に起きた主人公精神科医の催眠療法に掛る出来事があり、催眠退行で患者の過去のトラウマを癒やす医療行為が長々叙述される。この実験的治療は患者側のふとした悪意によって失敗に終り、主人公は長くこの医療法に蓋をする事になる。催眠治療はグループで行う物で、素人目にかなり危うい。更に本巻では主人公やその他の登場人物の性格・行動に同情を持てない記述が多い。よって余り興趣が維持できなかった。
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ネタバレ本作発表時は覆面作家著であったが、ウィキを見ると後に有名作家の共作と知られた由。一家惨殺事件があり、家族のうち少年が一人生き残った。ひと頃催眠療法で有名だったが最近はそれからすっぱりと手を切った精神科医が、少年の潜在意識を探るよう担当警察官から懇望を受け、少年が犯人であったと判断される切掛となる。しかし医師は、精神に異常をきたす犯行少年から恨みを受ける結果に。別筋で医師の難病の子供が誘拐される。以上前巻だけで事件がてんこ盛り、標題の「催眠」は発端だけで、主人公は何故催眠から足を洗ったのかも知らされず後編へ
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作中で88歳となった元刑事の老人が主人公。ユダヤ系米人で戦争中ドイツ軍の捕虜となり親衛隊の男に虐待された過去を持つ。ある時親しくもない臨終の戦友から、死んだとされた当のゲシュタボの男が金塊を持って生存していると、懺悔と共に知らされる。この臨終男は、話を他にも漏らしていたと思しく、主人公老人の周りは、金塊絡みらしい殺人が続く。ナチスへの報復譚は好みでなく当初は逡巡したが、主人公の老人的話題等の諧謔、展開の速さからページを捲る手が止まらない。主人公の歳からシリーズ化は難しかろうが、著者には期待できると思った。
山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/05/25 09:41

戦争の惨事を経験した主人公の人生から、笑いと涙が生まれる諧謔も味わい深いですね。

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一度読了したのに気が付かず再読。おかげで言語学の各種用語を含めて、前回より理解できたと思うが、本書の掲げる「外国語を学ぶための」という目的には、内容面でなお達成に至っていないと思う。私はロシア語を第二外国語として始め、仕事の必要から朝鮮語(当時は韓国語と言う名称が、社会的政治的に引っかかりが残っていた)からインドネシア語を学習した。そうした経験からすると、私の言語能力としては、それぞれ全て未熟に終わったのだが、言語学習の興趣について、著者が本書で訴える意味が、私にも聊か乍ら理解できるようになったと思う。
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著者三冊目。稀覯本書店を営む父が死に生家に戻ったハリーは、父は山道で脚を踏み外し死んだのではなく、何者かに頭を殴られた後の転落と知る。老年の父の継母が、夫亡き後主人公を頼る妖しさ。葬儀で現れた若い女性。父の書店で働く老人。物語はその「現在」と、アリスの子供時代に遡る「過去」とが交互に叙述される。「過去」では、アリスとアル中の母、それを寛容に見守る継父との不思議な生活が述べられる。後半に至り出来する殺人で慌ただしくなるが、全体に緩慢な調子。「そしてミランダを殺す」と「ケイトが恐れるすべて」には劣ると感じた。
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戦国の梟雄北条早雲の誤伝に抗する本。室町幕府足利家の直臣として枢要な地位にあった名族伊勢氏の新九郎盛時が、嫁いだ姉の北川殿の懇請により、駿府今川家で後に氏親となる甥の後見として彼を守り立て、終生その立場を崩さなかった生涯を追う。彼は長くその身分的位置を京都から移さなかったが、応仁の乱後、分立する幕臣領地の経営困難から、中年に出家して本拠を東国に移す。宗瑞として伊豆・相模を攻略しつつ今川家御一家身分を貫く。戦国大名初の検地実施や印形形態での公文書発行など新たな統治を展開、加えて京都衰退後の文化継承者となる。
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2007年作品だが、時代は1960年頃。貧しい子沢山の家に生まれ、経理学校を出て賭場のある酒場の会計に勤める娘。そこに見事なスタイルにりゅうとした衣装を纏う中年の女が屡々やってくる。ギャングの幹部で集金に来る彼女は、その娘に声を掛け、自分の部下になるよう誘う冒頭。女幹部の薫陶により娘は次第に信頼を獲得するが、何となく彼女の思い入れを娘は重たく感じるようになる。彼女の代理で働く娘に、余り成果の上がらぬギャンブラーの虫が付くお決まりの展開の後、彼女を襲う暗黒街の試練。最後は果たしてハッピーエンドか判らぬ収まり
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無駄口は多いが女性にもてる探偵と、最後に彼を助ける強力な相棒が活躍する本シリーズには出来不出来がある。「モンキーズ・レインコート」では夫の支配を受ける妻「ララバイ・タウン」では傲慢な監督の別れた妻を採り上げ、何れもその自立を助ける嫌味のない筋立てが良かったが、他方で失望作も多い。このシリーズの半分が未訳であるのも、その為だろうか。その点本作は快作。気の強い女性警官が有名な大手弁護士事務所の手で窮地に陥るのを、又々主人公が助ける筋。これが主人公の本領なのだろう。本作では悪徳弁護士への最後の捨て身の攻撃が痛快
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主人公探偵は人気TV女優から、養子だった自分の実の親族を探すよう依頼を受ける。行先はルイジアナ。現地のフランス色濃厚な地方色が面白く語られる。すると主人公の行く先々にドジな探偵が出没する。彼の居宅を調べると、既に調査は半ば終わっており、女優の実の父は肌の色の薄い黒人である事等、報告は女優の関係者に伝えられていた。何故依頼者側は重複した調査を主人公に頼んだのか。この理由が判明した後、実の親族とは別の話題が浮かび上がる。以下後半は別筋の小説に思え、展開もダレる。パイクに加えて登場する謎の加勢の存在も唐突だった
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仕事にあぶれたカウボーイ兄弟は、酒場でアル中のピンカートン探偵社の伝説的老探偵に遭う。弟が持ち前の気の良さで老人を手なづけ、彼の紹介状を手に、探偵社が契約している大陸横断鉄道会社に赴く。鉄道は農民とカウボーイの怨嗟の的であり、彼らを襲う強盗団は大衆の喝采を浴びる。兄弟としても忸怩たる処だが、将来の探偵就職を夢見て強盗団の列車内通諜者を探す任務を引き受ける。しかしこの列車にも強盗団の襲撃が及び、66人の乗客を運ぶ列車は大混乱に至る。機関車の切り離し、トロッコでの追跡等の痛快劇だ。鉄道会社はやはり汚かったが。
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書題を見て当然愚かにもドバト(本来塔鳩→堂鳩)を連想したのだが、飼い鳥が野生化したそれではなく、我国在来鳥で、元々鳩一般を指していたキジバトアオバトから始めた記述は漸くドバトに移る。ハト類に共通する、オスも育雛に利用するピジョンミルクの仕組み(餌袋でもあるソ嚢の内壁を剥離させる)や他の鳥類と異なり水を吸って体内に入れる生態は興味深い。ドバトは古くからカワラバトを各国で飼鳥化した。その習性から塔等で飼育、胸筋が発達しており欧州中東で食用される。ドバトは駆除鳥だが、キジバトも森林害鳥として戦後駆除されたという
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探偵エルヴィスから離れた単独編。但し本作には続編もある由。ロス市警の刑事はある夜市内を警邏中、偶々起こった銃撃事件で相棒を殺され、本人も重症と共にトラウマを負ってしまう。他方アフガンで爆破物探索を任務とする米軍シェパードは目前でその担当者が自爆犯によって殺され、犬も受傷して送還される。彼らは帰国して警察犬の訓練所で出会い、共に肉体と精神のリハビリに励む。以下時に犬の側にも立った周辺描写を含め、このコンビの繋がりの深まりが感動を齎す。以下冒頭起こった銃撃事件解明に、お決まりの権限外捜査が展開する。十分面白い
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「ヨーク公階段の謎」に次ぐ1930年作品。英国の小さな町が舞台。資産家の準男爵が市長。彼の息子がWW1で戦死し、その繋がりで主人公である若い警察本部長と議会の衛視を雇う。左派の議員が、住宅建設用地が土地ころがしで高値掴みをしたという疑惑を取上げ、続いて有力議員が市長を個人的に貶める演説で議会は紛糾。直後休会となった議場で件の有力議員の惨殺死体が。警察本部長はロンドン警視庁の捜査を依頼するスタート。捜査の移譲を面白く思わぬ地元の警視が、トボけた悪役になる他、皆納得の行く性格設定ですんなり読ませた。好みの作風
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日本野鳥の会の本。野鳥に関する百科であり広すぎる気もするが、野鳥の会とすれば何れも粗略にはできない所だ。鳥の配偶関係に伴う極端な性的二型、つまり一般に雄が派手な色彩を示すのに対し。雌が派手なタマシギの例もある由。鳥の視覚範囲の広さから人間に理解できない「派手さ」もあるという。鴛鴦の契りとは言い乍ら、彼らは繁殖後には番いを替える。種を越えて警戒声が共通する四十雀等の鳴き声はTVでも見た。郭公の托卵やモズの早贄も、研究が進んだのは最近の由、種が多様な鳥類故だ。最後の鳥類保護の記事で、広くその理解を訴えている。
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ロンドンに住む若いケイトは、猛り狂う恋人に押し入られ、彼の無惨な自殺を目撃する。彼女の元々の脅迫神経症は更に昂じた。漸くリハビリを終えた時、米国の又従兄から半年の間居室を交換したいと提案があり、父母と相談してこれを承諾する。ボストンの豪華なアパート暮らしの為、住居に向かう最中、彼女にまたパニックが襲う。漸く到着するや隣のアパートの女性の惨殺死体が発見され、被害者を窃視する男から、又従兄と隣人の交際が明かされる。次々生ずる不可思議に彼女の恐怖は募る。「そしてミランダを殺す」の次に読んだ本作の方が気に入った。
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面白く読める巻。時代の精神、雰囲気をテーマとした点がその功の一。更に歴史事象に学問的評価を越えた、著者の生の文辞を大胆に混ぜているのも良い。舞台をほぼ先進地京都に絞り込めるのが、この巻企画の利点だ。残念乍ら関東公方や蝦夷地の動向は、脇役の扱いとなった。室町時代が律令制の尾を残した中世前期から大きな画期として、現代日本の政治経済社会の根幹を形作った事は了解したし、戦国大名成立の経緯の一端も理解できた。室町幕府が独自の大きな武力を持たなかったのは、観応の擾乱等による消耗と、公武合体政権としての特質に拠る故か。
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20世紀末のモンタナ州。家族を失い2人だけになった兄弟はカウボーイを生業として過ごす。兄は無学乍ら知力高く、働いては、一人残った弟に学問を与えていた。弟はホームズ物を探し出しては文盲の兄に読んで聞かす日常。兄はホームズを理想化し洞察力を鍛えつつ過ごす。畜産業不振にも拘らずカウボーイ募集に来た牧場の親方一行の怪しさに、兄弟は率先これに応じて働き出す。酷い労働条件。その中で続いて出来する不審な死亡事件。西部のホームズは動き出す。折から牧場にはオーナーである英国貴族一行がやってきて..。面白いシリーズのようだ。
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著者の死の直前に書かれた作品「スウェディッシュ・ブーツ」の発端編である本作。最初に読んでいたら上記作は逡巡したろう。そこでは連続放火事件が扱われ、意外な犯人が明らかになる起伏があった。本作を読む以上、著者の人生転換の起点となる、手術失敗について読まされる事は覚悟したが、本作はそれに遡り、主人公が医学留学で渡米するに際して無情にも切り捨てた妻が、末期癌乍ら力を振り絞り彼の隠棲する島を訪ねてくる所から始まる。しかも彼女との間には娘がいた。老境に至って人生を振り返る重み。良い小説なのだが、軽薄な私には重過ぎる。
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87分署シリーズ最後の在庫として大事にしていた本。Wikiに56ある全作中47番目で、初期の作品にあった緊張感がやや薄れ文章には流した処が多い。著者の作家生活における原作者と台本、監督との間の行き違い等がかなり反映しているのも一種の遊び。キャレラ刑事が捜査の中心だがNYに仮託した多くの地名にまごつきつつも、88分署デブのオリーや市警殺人課のモノハンとモンローの凸凹コンビも登場して、久々の読書が懐かしい。クリング刑事が黒人の上級医官と恋に落ちる発端編で、事件の背景の劇中劇「ロマンス」配役の取合いを掛けている
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枢密院の歴史を通じ日本近代史を顧みる良書。明治憲法草創期、議会と天皇制との対立を危惧する伊藤博文により憲法に盛り込まれた同院。当初は欽定憲法の意識を有する明治帝の臨席は屡々あったが、伊藤自身の関心は薄れる。だが形骸化した貴族院と比べ、憲法上の権限を盾とする同院は内閣には煩い存在となる。興味深いのは憲法学者として枢密院に批判的だった美濃部達吉の、敗戦直後の枢密院顧問官としての発言。抑々明治憲法改正の要はなく、民主憲法と銘打ちながら勅令によって同院に諮詢される不当。一人占領憲法に反対する学者の良心は痛快である
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ブレイディング氏は宝石コレクターだが、その収集品は、犯罪絡みや発掘遺体と共に発見されたような曰く付きの物ばかり。本人も周囲から嫌われる性格である。収集物に脅威が迫っていると感じた彼は、主人公であるミス・マープルに似た、高名な探偵である老女を訪れ調査を依頼する。探偵は応対するうち収集家の言動に嫌悪を覚え、依頼を断るが、その後収集家は殺される。改めて招かれた探偵が地元警察と共に捜査を開始。探偵が地元の州警本部長の家庭教師を昔勤めた縁による。この設定の無理は兎も角、本編は手堅い人物描写と無理のない筋で楽しめた。
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エルヴィスとパイクの2作目。LAが舞台のハードボイルドとなれば日系人の登場が定番か。日系人ヤクザも実業家もバイリンガルで、道場には汎ゆる「日本的」装飾品がゴテゴテと飾られる中、派手な闘争が繰り広げられる類の作品。投資顧問会社の社長が日系人社会での尊敬を勝ち取ろうと、京都から借入れた「葉隠」を盗まれてしまう。警察には届けられぬとて主人公に依頼がかかる。以降これに掛る争奪戦が開始。主人公コンビのキャラクターに慣れた為スイスイとは読めるが、外国で日本人のでてくるカンフー映画を看るような居た堪れなさを終始感じた。
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4以上の数がない文化を下級だと認識するのは誤解に過ぎない。6千と6万の差が意味のない社会にとっては、4という数は「マリの首都はバマコ」と等しい些細な意味記憶に過ぎない。豪州原住民の子供は、知能検査次第では都市の子供を上回ったという話題から本書は始まり、数を数えるという算数能力の色々を、ヒトから進化を遡り昆虫迄、多彩な実験結果を以て説明する。数えは、進化の初期から脳内ニューロンに存在する累算システムによる。昆虫や鳥類等は、類人猿に近い能力を示す。鳥類が3次元座標を用い帰巣するシステム等も紹介され頗る興味深い
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犯人当て目的で只管読者を騙すだけの推理小説ではない。初手に犯意が提示された後、その後当然生ずるだろう齟齬によって先行きの判らぬ展開となる。こういうのが最近の犯罪小説のスタイルとすれば歓迎である。妻の浮気に混乱している男性。空港で話しかけてきた女にそれを打ち明けるや、女は浮気妻の殺害を唆し、剰え犯行を手伝おうとする。小説は次に女のサイコパスなこれ迄の人生を辿り、次いでその後の犯行に移る。そこに生ずる逆転。これを齎した浮気妻の気持ちは納得できない。その儘離婚を要求して莫大な財産を受ければ済む話。しかし佳作だ。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/12/14(1647日経過)
記録初日
2019/10/02(1720日経過)
読んだ本
1770冊(1日平均1.03冊)
読んだページ
581537ページ(1日平均338ページ)
感想・レビュー
1766件(投稿率99.8%)
本棚
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性別
年齢
75歳
自己紹介

少年期の乱読を経て、青年期読書は言語(国語)学、荷風、江戸随筆などを主食とし、日本の推理小説(清張、佐野洋など)を副食として過ごしました。老境になって思想史(M.ヴェーバーや井筒俊彦など歴史思想、宗教思想)や科学史、我が国中世史、古代史、歴史民俗学などを手当たりしだい読んで、やや根を詰めて疲れた時期があります。現在は海外推理小説を中心として柔らかな読書に入っています。なんであれ全部読もうとする性癖は心身に毒ですが、ともかくも読書生活に浸ることに喜びを感じる次第です。
本サイトの読了コメントを参考としながら、今後新たな作品と出会い更に世界を広げていくことにいたしております。

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